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伝えたい

深夜二時。
スマホの画面だけが部屋の片隅で静かに光っていた。
書きかけのメッセージには、たった一行だけ。


『ごめんね、話したいことが』


そこから先がどうしても続かない。
頭の中には溢れるほどの感情があるのに、言葉にしようとした瞬間、しかもテキストなのにすべてが霧みたいに散っていく。
ただ胸の奥に確かな何かがある。
それを伝えたいのに形にしようとすると途端にこぼれ落ちる。


まるで手のひらで水を掴もうとしているみたいだ。


送信ボタンのすぐ近くまで指を動かしては止まり、溜息をひとつ落とす。その繰り返しに疲れてふと画面を伏せた。


アパートの部屋の外には街灯がひとつだけ灯っている。
オレンジの光がぼんやりと瞬き、心の奥まで届いてくるようだった。


「……どうしたいんだろう、私は」


ぽつりと呟く。
声に出した瞬間、なんとなく気づく。


本当に言いたかったのは理由なんかじゃないのかも。
きれいな言い回しも、気の利いた言葉でもない。


「聞いてほしい」

「そこにいてほしい」

「私はまだ、ちゃんとあなたを大事にしたい」


そんな、ごく単純でまっすぐな気持ちだった。

もう一度スマホを手に取る。
新しく文章を打ち込む。


「ごめん。うまく言えないんだけど、話したい。ちゃんと自分の気持ちで向き合いたい」


たったこれだけ。
でも今夜の自分にはそれで良い。


送信ボタンを押すと、世界が少しだけ静かになった。
胸の奥の霧がゆっくりと引いていく。


伝えたいことにぴったりの言葉なんてきっと一生見つからない。
でも、伝えたいと思う気持ちは確かにここにある。


それだけで、今日は十分だった。



終わり



不倫・浮気、独身偽装についての真面目なコラム


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