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取材のやり方、教えられま……せん!

この間、ビールのイベントでnote友達のまつぼっくりさんにお会いした。クラファンで支援していただいたリターンでのイベント参加だった。
イベントはビールや料理の説明を聞きながら飲み食いするため、3時間という長時間にも関わらずあまり会話はできなかった。

それでも、合間を縫ってちょこちょことしゃべる。仕事のこと、薬剤師さんへの疑問、noteのことなど。
その際にnoteのメンバーシップの話が出た。
「かおりさんはやらないんですか」と聞かれたが、「興味はあるけど、何を書いたらいいのかわからなくて」と相談に乗ってもらった。

わずかではあっても金銭のやりとりが発生するので、仕事と同レベルでの「何か」を提供しなければならない。自分にはその「何か」がない。
メンバーシップをやっている人は、一体「何」を買ってもらっているのだろう。有料記事も然り。

「たとえば、取材をどうやってるのかとか、人から話を聞き出すコツとか、私は知りたいです」
とまつぼっくりさん。
阿川佐和子さんの『聞く力』じゃないけど、そのスキルは実際に取材をやる人以外にも、人と交流するときに役立つのでは?というのがまつぼっくりさんの見解だった。

なるほど。
でもそこで思い返したことがあった。6年ほど前に、京都祇園の日本酒バーで週1、2回、9ヶ月間だけスタッフとして店に立つアルバイト(?)を興味本位からやっていたことがある。
私はそれまで多くの人を取材してきたし、それがとても楽しかったから「私は見知らぬ人の話を聞くのが好きなんだ」と思っていた。だから、お店に来るお客さんと日本酒のことを話すのも楽しいだろうなぁとワクワクしていたのだ。

でも、実際にやってみてわかった。
私は「書く(記事にする)」というゴールがあるから、「そのための材料としての話を聞かせてもらう」のが好きなだけだったようだ。いくら面白い話を聞いても「書く必要がない」話にはまったくと言っていいほど食指が動いていない自分に気づいたのだ。
もちろん中には興味のある話もあったし、好きになった常連さんとの会話は楽しかったが、
「知らん人の話聞くの、めんどくさっ!」
と思うことのほうが多かった。
興味が持てないと何も頭に入らないし、ぼんやりしてしまう。
そんな人間は、きっとカウンター越しのべったりした接客業なんて向かないのだろう。
当時、「お店やってみてどう?」と聞かれるたびにこう答えていた。
「酒は注ぐより注がれる方がいい」
たどり着いた真実である。

一方、ゴールに「書く」がある時は、話を聞いている間も脳と五感はフル回転しているから、楽しくて仕方がない。
相手の話を理解しながらも次の質問を考え、適度に余談も挟みつつ、絶対引き出さないといけない内容が出るように誘導し、頭の中で構成を立てながら、ピースを埋めていくように「足りないもの」はないかを考える。
しかし、そんなことを相手に悟られてはいけない。あくまでも相手には「おしゃべり」だけに集中してほしいのだ。だから、ひたすらメモはとるが、下を向くことはほとんどない。(取材相手に「速記ですか?」と聞かれたことが10回はある)
相手の顔を見ながら、わずかな表情も声のトーンの変化も逃さないように五感をビンビンに張り巡らせている。(それが鈍るからオンライン取材は嫌いだ)
脳内は混沌としているが、表面は常にニコニコ。「なるほど」「えー、そうなんですかー」「わかりますー」「すごいですねぇ」など、気持ちの良い相槌も欠かさない。

いつも思うのだが、結局、いいネタをとってこないと、困るのは自分なのだ。書くのは自分だけであり、誰も助けちゃくれない。
だから、「なんとなく聞いて終わり」みたいなこともないし、あとで「あれ聞けばよかった」みたいなことも基本的にはない。(何度かはある)
どんなに場が盛り上がろうが、「楽しそうにしゃべってくれたからよかった」と思うような取材だろうが、ネタを拾えてなかったら、後で地獄を味わうことになる。
とはいえ、取材時間に限りはあるので、ダラダラと相手に気持ちよくしゃべらせ続けるわけにもいかない。できるだけ早く終わらせるようにも心がける。

取材中に「よし、これなら書ける!」と思えたら終了。だから、その瞬間にはだいたいの構成ができている。逆に言えば、構成ができていない状態で取材を終えることはできない。帰ってパソコンの前に座って「さて、何書こう」なんて悠長なことは言ってられない。そこからやるのは、すでに頭の中で構成されたものを「どう物語にするか」だ。

そういう「脳内フル回転」状態が好きで、私は取材が好きなのだとわかった。だから、残念ながら、「聞く力」や「コミュニケーション」については、何も人に教えてあげることができないんだよなぁ……。
取材のやり方も人それぞれだし、「これが正解」と言うことが難しい。「書くためのネタをきちんと時間内にとってきて、相手には楽しくおしゃべりしたなと思ってもらえればいいんじゃないの?」としか言うことがないのだ。そして、書いたものを取材相手が喜んでくれることが一番。
クライアントや読者の要望に沿うことは大前提として。

こう書くと、「いや、だから、その相手に楽しくしゃべってもらいつつ、ネタも拾えるコツを教えてよ」とか、「取材相手が喜んでくれる記事をどうやって書くの?」と聞かれそうだが、すみません、本当にどう説明していいかわからなくて。
そこで気づいた。
「自分が普段何も考えずにやっていることを、分析して論理的に説明できる人」が、有料記事を書いたりメンバーシップを作ったりできるのだろう。そう考えると自分には無理のようだ。
逆に、本当に聞きたい。
取材やライティングのノウハウを売っている人って、どんなことを教えているんだろう。
それが知りたくて「講座を受けてみました!」のような記事を探して読ませてもらったが、やっぱりよくわからなかった。

私もこの道30年近いわけで、何かしら人の役に立つことを発信できたらいいなと思い、こんなことを考えてみたわけだが、やっぱり無理そうだ。
正直に言うと、「私がどうやってライターになったか教えます!」「noteの続け方教えます!」的な記事を売っている人が羨ましかった。私もいっぱい経験があるから、何か切り売りできるものがあるのではないかと思った。でも、経験があるだけでも、文章を書けるだけでもダメで、何か「人に自分のスキルを伝授する力」のようなものが必要なんだろうなとわかった。

ちなみに、私はいわゆる「文章上達本」が嫌いで、自慢にはならないが、人生で3冊くらいしかその類の本を読んだことがない。(そして、たくさん読む必要はないと思っている)
私がもし、「取材ライターとして読むべき本は?」と尋ねられたら、間違いなくこれを挙げる。

読むのはこれ1冊で十分だ。取材ライターに必要なことはすべて書いてある。
とにかく良い取材原稿を書くには、「準備」と「構成」と「推敲」に尽きる。
そして、何よりも現場に立つことだ。経験の中でしか学べないことが世の中にはたくさんあると思うから。

※トップ写真のペンケースはいつも取材で使っているもの。何年も前ですが、私が「こぎん刺し」の刺繍をして作りました。

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