走者の思考と緊張感を同時体験させる - RTA in Japan Summer 2021での解説初挑戦レポート
RTA、盛り上がってますね。
イベントも多くあり、見ても走っても楽しいものです。
そんなRTAのイベントでも特に大きいのが「RTA in Japan」。
毎年夏と冬に1回ずつ開催され、数日間オールナイトで様々なゲームのRTAが披露されます。
配信の同時接続数は1万人を大きく超えておりRTAをプレーする走者は世界ランカーばかり。協賛企業も付くなど名実ともにビックイベントです。
そんな大舞台である「RTA in Japan Summer 2021」にて私ぼぶそん、Super Cable Boyというゲームにてany%世界1位と2位の方のレースで解説を担当させて頂きました。ありがたいことに好評をいただき嬉しい限りです。
当日ご視聴いただいた方々、RTA in Japan Summer 2021の運営に関わっているみなさま、本当にありがとうございました。
ちなみに解説だけを担当するのは初めてでした。
せっかくなのでどんな準備をして本番へ臨んだのか、参加記録もかねて記事にまとめることにしてみました。
事前情報として私のRTA周りの経歴を紹介するとこんな感じ。
・RTA歴と配信歴は1年半
・RTAイベントへの出演歴はあるが走者が中心。1時間規模の走者兼解説は経験済み
・RTAイベントの運営にも関わろうと奮闘中
解説を請け負った経緯
RTA in Japanの採用ゲーム発表後、Super Cable Boyのレースを走られるろっぷらいとさんがTwitterで解説の方を募集されているのを見かけ、立候補をしました。ろっぷらいとさんとは別のRTAイベントにて知り合っていた事、RTAイベントを運営するうえで解説を理解したいと思っていた事もあり、こちらから声をかけた次第です。
私が解説未経験であることも踏まえたうえで了承を頂けて非常にありがたかったです。
課題設定
解説を請け負ったもののやったことは無いので、まずは何をすべきかジャンルごとに整理して課題を設定しました。
・解説技術
考え方もコツも不明なので、とりあえず実況や解説の基礎についてまとまった知識を入れる必要がありました。
これは自分の中の教訓として、新しい物事を習得する際にはまず体系だった基礎知識を入れて学習効率を上げる。過去の経験から表面だけを真似しても要点を欠いた軽薄なモノマネにしかならない、というのがあるためです。
・話術
対面占いを長くやっているので、丁寧な言葉選びと話し方はある程度できると自負していました。とはいえ折角なので活舌よく話せるように練習することにしました。
・ゲーム知識
Super Cable Boyはプレー済み未クリアだったので、クリアして基礎仕様を理解することにしました。
最終的に走者へインタビューしてより深い知識やRTAの流れを把握する必要があるので、最低限の知識を備える必要がありました。
課題解決でやったこと
手始めに解説技術の理解として、Twitterでeスポーツアナウンサーの方が絶賛していた本を読むことにしました。
プロスポーツで野球やサッカーを中心にアナウンサーをされていた方の本で非常に参考になりました。
特に重要と感じたのが即時描写とリズムという概念です。
” 即時描写がなぜそれほどまでに大切にされるのか。それは、スポーツ実況を楽しむ人たちの、いま行われている試合やレースを同時に楽しみたいという根本的な要求に応えるために他ならない。 即時性を大切にすることで、伝えられるスポーツのリズムを感じ取ることができる。それを耳にしながら、同時体験を実感する。スポーツの現場から離れていても、それを間近に感じ、感動を共有することで至福の(時には悲嘆に暮れることもあるが)時間を過ごせるからだ。" (20ページ 8行目)
" スポーツの違いは、リズムの違い。それが動きの描写を基本として仕事をするアナウンサーの実感ではないか。" (72ページ 1行目)
山本 浩『スポーツアナウンサー――実況の真髄』(岩波新書、2015)
即時描写とは視聴者に選手に近い立場と同じ体験をさせてあげる事を指し、プレーが緩む場合には別の情報提供で惹きつけることが重要といったことが書かれておりました。
また、リズムは解説対象によって異なるので見定める必要があります。
これらを踏まえてRTAイベント配信の解説を考えた結果、即時描写は視聴者へ走者の思考と緊張感を同時体験させる事、リズムはRTAとゲームの盛り上がりに合わせる事、と定義してみました。
自分が解説するろっぷらいとさんとDoublevilさん(以下、ヴィルヴィルさんと表記)のプレーを確認しても両者ともにハイレベルなプレーを間断なく続けておりましたので、解説の仕事は視聴者へ走者視点を同時体験させること、ミス等でゆるみそうなら補足情報を入れる。これで充分いい内容になると判断しました。
ここで解説の定義ができたことにより、課題への取り組み方も具体的に変化します。
話術については、活舌と同様に音域と抑揚を意識して練習することにしました。通常は少し高い声で抑揚少なく発声し、リズムや提供する情報の変化点で抑揚をつけたり声の高さを変化させる必要が出たためです。
ゲーム知識については見せ場と同様に緩むポイントについても把握し、さらに走者の思考や緊張感についても流れがつかめるようにしました。結果として、細かい操作やステージの小ネタを減らして基礎技術や走者が辛く思うところの説明を増やしています。
これらを整理する際、ヴィルヴィルさんが作成されたgithub資料が大きな助けになりました。本人から許可を頂いておりますので掲載させて頂きます。
Super Cable Boyの基礎知識に始まり、any%の全ルートが動画付きで説明されております。全編英語ですが、分かりやすい文章で書かれておりますので気軽に読んで欲しいです。
実践練習
技術や知識がそろったらいよいよ実践練習です。
具体的な方針としては、イレギュラーの少ない世界記録動画で練習しつつ台本の作成から始めました。
台本は文章形式でなく時系列で箇条書きにし、話のトリガーとなる部分を記すようにしました。
頭の中に十分な知識があれば、文章を読むより適宜言葉を組み立てて話すほうが自然な文章になる上に臨機応変に内容を変えられます。この資料も頭の中へ情報を書き込むために作成し、本番では傍らに置きつつ一切見ずに終えることができました。
今回の解説は30分で終わる2Dアクションのレースなのでこのスタイルが最適と思います。
また、盛り上がるリズムの解説は話始めるトリガーをかなり前に置き、必要な説明を済ませた状態で走者と視聴者が同じ緊張感を味わえるように意識しました。
解説資料も公開しますので興味あればご覧ください。
ある程度資料を見ずとも解説できるようになったら配信アーカイブに合わせて練習、最終的に2人の配信アーカイブを同時再生して練習しました。
話し方の気づきとして、フィラーを辞めなくても違和感があまりなかった事が意外でした。
フィラーとは「あー」「えーっと」などの意味のない言葉を指し、一般的に無いほうが良いとされています。意識して無くすように練習しましたが、その代わりに黙ったりリズムが崩れる方が気持ち悪く、今回は諦めることにしました。将来的には改善すべき課題と思います。
改めてフィラーがダメとされる理由を考えると、何も言っていない時にフィラーが出ると沈黙による緊張感の薄れが強調される、同じ単語が繰り返されることによる違和感、などが原因なのかもと思いました。
本番を振り返って
想像以上に好評をいただけたので解説の方針は問題なかったと思います。
走者お二人の走りも冴えわたっており、思考と緊張感を視聴者へ同時体験させるだけで充分だったのは助かりました。
話術としては言い間違いとフィラーが多かったことが反省点です。
単語の定義揺れ、ワールド名の言い間違い、技術説明での単語誤りなど、改めて聞くと中々に酷く、定型句についてはもっと口に覚えさせられたのではと思います。フィラーについては前述のとおりです。
資料や練習の手順はこれで正解だったと思っています。
特に資料については文章形式にしなかったおかげで、直前でルート更新があっても楽に対応できました。
改めて気づいた事としては、事前の打ち合わせで走者へ解説の意図を十分に伝えてコミュニケーションを取っていたおかげで、準備期間も本番当日も走者とスムーズにやり取りができて多くの事が良い方向へと進みました。
おわりに
まずは改めて走者である、ろっぷらいとさんとヴィルヴィルさんに感謝を述べさせていただきます。
ろっぷらいとさんの素早い初動対応、ヴィルヴィルさんの資料の密度、30分という短さ、走者2人の練度と精度の高さなど、ありがたい環境に恵まれておりました。
このような機会をくださり本当にありがとうございました。
感想としては、もっと解説をやってみたいです。
事前準備も本番も楽しかったですし、走者やボランティア以外の選択肢でイベントへ協力できるのは自分の長所にもなります。
あとは走者兼解説でのRTAプレーに憧れがあるのでその礎にもなります。
今後は他の環境での解説を経験して自分の練度を高められればと思います。
と、いうわけで解説が必要な方!お声がけください!
