LIFE LINE 展
展覧会のご案内と言い訳
九月になりました。夕暮れが早くなってきましたが、まだまだ暑さが続いております。
今月の十二日(金)より十月五日(日)まで、「ライフライン」という展覧会に参加いたします。企画は、福元崇志さんによるものです。
https://www.ibabun.jp/event/20250912/
六月から七月にかけて、茨木市福祉文化センター(オークビル)にて、「野原の上で」展 に参加し、旧作の油彩と映像を展示しました。下見の際に、コンクリートの広い地下室に足を踏み入れました。その時、子供の頃、家のモルタル壁にクレパスやチョークで落書きをしていたことを、鮮明に思い出したのです。そのワクワクした「そこに壁があると、描きたくなる」感覚を、「ライフライン」の打ち合わせに来られた福元崇志さんに、話すと「描いてみませんか」と、いう言葉が返ってきました。そして、その日のうちに次の展覧会にも参加することが決まりました。
このように後から作家が参入することは、大きなプロジェクトでは、起こり得ないですし、始まりまで二ヶ月もないことなど、私の頭から全く消えていました。この建物は、もはや名前をつけて呼ぶことが失せつつあること、「野原の上で」の展覧会の時に、何にも属さなくなった建物の空間に、最後寄り添うのは、もしかしたら、美術家の仕事かもしれないという気持ちが、心のどこかで起こっていました。稲垣元則さん、藤本聖美さんによる「One Art Project」をはじめ、茨木在住作家の長年の熱意という下地が、目に見えぬ建物の構造体になっているようにも思えました。
今回は、懐かしくも初めての作業をしています。建物の素地であるコンクリートの壁に、直接「線を引く」作業から始めました。スプレーと木炭による素描のインスタレーションです。この作品は、再現不可能なものとして、展覧会後は建物の解体の時を待つことになります。画家のO JUN氏にこの話を持ちかけたところ、快く引き受けていただきました。
遠方ゆえに、O JUN氏の短時間での空間の掴みと、私が時間をかけていじいじと描いた素描がどのようなものになるか、二人の作家のエゴの線引きは、企画書で福元氏が書いておられるように、作家というエゴの輪郭が薄まったり、さらに濃くなったりと、一見すると、退行現象とも見えるような、素描という行為がただそこに現れるのではないかと、想像しています。
建物の内側で蛍光灯の下、内向きな、ひたすら内向きなグラフティ。
オークビルは、建物の傷みによって、使用されなくなり、建築の役目を終えて解体を待っています。遠方の皆様には、馴染みの薄い場所と存じますが、ぜひオークビルがその時までに展覧会によって変容するある日、数時間に、お立ち会いくだされば幸いです。
©️松井智惠 2025年9月1日筆
