高校受験 第2章:親がやるべきこと 〜迷わないための3つの役割〜
第1章では、高校受験の全体像を整理しました。
ここからは、いよいよ本題です。
「親は具体的に何をすべきか?」
受験をする当人は、子どもです。
しかし、子どもはまだ経験の少ない存在でもあります。
子どもが属する社会といえば、学校、塾、部活動などに限られます。世間についての知識や判断力が十分でないのは、当然のことです。
そのため、受験をする当人であっても、すべての決断を子どもだけで行うのは難しいでしょう。
一方で、親が進学先をすべて決めてしまうのも適切とは言えません。
親がやるべきことは、子どものサポートに徹すること。
これに尽きます。
子どもの目の前にはいくつかの選択肢があります。その中で、誤った方向に進みそうなときに、的確にアドバイスをすることが求められます。
すなわち、親の役割は次の3つに集約されます。
1.情報を整理すること
2.環境を整えること
3.意思決定を支えること
この3つに絞って考えると、親の迷いは大きく減ります。
1. 情報を整理する
いまは、とにかく情報が多すぎる時代です。
自宅の郵便受けには塾の広告が入り、SNSには合格体験談があふれています。親切な友人からアドバイスを受けることもあるでしょう。
それぞれ有益である可能性はありますが、すべてをそのまま受け取ると判断がブレます。
だからこそ大事なのは、「何を見るかを決めること」です。
親が見るべき情報
・学校の成績(内申)
・模試の結果
・志望校の基準(偏差値・内申目安)
まずはこの3つで十分です。
この3つを押さえることで、
「いまどの位置にいるのか」
「どこを目指すのか」
が明確になります。
一方で
・SNSの成功体験
・「この勉強法が最強」といった情報
には、一度距離を置きましょう。
理由はシンプルです。
どれほど懇切丁寧に書かれた情報であっても、その家庭に合うとは限らないからです。
SNSの成功体験や最強の勉強法は、見る側の家庭環境や子どもの性格を踏まえて書かれたものではありません。
つまり、ある家庭で成功した方法が、別の家庭でも最適とは限りません。
同じ家庭は一つとして存在せず、子どもの性格もそれぞれ異なります。そのため、他の家庭の成功事例に再現性があるとは言い切れません。
「試してみればよいのでは」と思うかもしれませんが、あふれる情報を一つひとつ試す時間的余裕はないでしょう。
したがって、真偽不明のSNS情報には距離を置くことが賢明です。
【学校の先生との向き合い方】
これまで一切触れてきませんでしたが、最も重要な情報源を紹介します。
それは、学校の先生のアドバイスです。
先生は日々子どもと接し、学習面だけでなく生活面も含めて見てくださっています。進路指導の経験も豊富であり、非常にありがたい存在です。
一方で、先生にも「立場」があることは理解しておく必要があります。
例えば、
・多くの生徒を同時に見ている
・学校としての進路指導方針がある
・確実に合格できる進路を重視する傾向がある
これは決して悪いことではありません。生徒を守るための責任ある判断です。
ただし、その分、各家庭の価値観やリスクの取り方まで、完全には反映できない側面もあることは事実です
だからこそ大切なのは、先生のアドバイスを尊重しつつ、すべてを言われるがままにしないことです。
そのためには、先ほどの3つの基準
・学校の成績(内申)
・模試の結果
・志望校の基準(偏差値・内申目安)
をもとに、「自分たち(親と子ども)はどう判断するか」を考えることが重要です。
先生は「正解を与えてくれる存在」ではなく、「判断を助けてくれるパートナー」と捉えると、関係はとても良くなります。
2. 環境を整える
「情報を整理する」の次に重要なのが、子どもの学習環境です。
ここでいう環境とは、単に勉強部屋を用意することではありません。「勉強を続けられる仕組み」をつくることです。
学習を習慣化するには、
・決まった時間に
・決まった場所で
取り組むことが重要です。
勉強する時間が日によってバラバラでは、なかなか習慣は定着しません。
子どもはその日の気分で、「今日は英語をやろう」といったように学習する教科を決めることがあります。これが必ずしも悪いわけではありませんが、曜日や時間、場所を固定することでルーティーンが生まれ、机に向かうことへの抵抗は小さくなっていきます。
例えば、学校の時間割は曜日と時間で決まっています。火曜日の2時間目が英語であれば、週を重ねるうちにそれが自然と身につきます。やがて、月曜日の夜に翌日の準備をするときには、無意識のうちに「2時間目は英語だ」と把握し、学習モードに入れるようになります。
また、人間の脳は、場所と行動をセットで記憶します(これは文脈依存記憶とよばれます)。子どもが勉強する場所を、自分の部屋の机と決めたとします。
それを繰り返していくうちに、「机の椅子に座る=勉強する」という結びつきができ、座った瞬間に自然と集中状態に入りやすくなります。
これは、子どもの「やる気」に頼らない仕組みづくりの一つです。
このように、子どもの学習環境を整えるポイントは、以下の3つです。
・勉強する時間を固定する
・勉強する場所を決める
・スマホやゲームとの距離を管理する
この3つだけで、勉強の質は大きく変わります。
勉強場所に「正解」はありません。自分の部屋が合う子もいれば、リビングの方が集中できる子もいます。塾の自習室が合う場合もあるでしょう。
実際、私の子どもが受験生だったときは、リビングで勉強していました。最初は「大丈夫だろうか」と心配しましたが、意外にも集中して取り組むことができており、親としては気を使いますが、静かに見守ることを意識しました。
なお、受験生にとってスマホは大きな障害になり得ます。少し強い表現に聞こえるかもしれませんが、その影響は想像しやすいのではないでしょうか。
スマホでSNSを眺めているだけで、時間はあっという間に過ぎていきます。限られた勉強時間が削られるだけでなく、集中力の低下も招きます。
スマホの使用ルールを定めているご家庭も多いと思いますが、特に受験生になってからは、より注意が必要です。使用時間をゼロにすることは現実的ではありませんが、勉強の妨げにならない範囲で制限することが望ましいでしょう。
また、ルールは一方的に押し付けるのではなく、子どもと話し合い、本人が納得した形で決めることが重要です。
参考までに、我が家ではスマホを自分の部屋に持ち込むことを禁止していました。子ども自身が納得していたため、不満が出ることはありませんでした。
さて、子どもの勉強習慣の仕組みづくりにおいて、もう一つ注意していただきたい点があります。
それは、「親が教えようとしすぎること」です。
子どもが勉強していると、つい気になってしまうものです。
しかし、頼まれてもいないのに口出しをすると、自立を妨げることがあります。そうならないために、親としての心構えは、以下の2つがポイントです。
・子どもが助けを求めてきたときだけサポートする
・それ以外は見守る
このバランスが大切です。
自分の子どもが勉強で悩んでいる様子を見ると、ついつい助けたくなってしまうものです。ただ、そこはグッとこらえて、成長を静かに見守りましょう。
塾との向き合い方
子どもの受験勉強における「環境を整える」ために、塾は一つの手段として考えられます。塾については第4章で詳しく扱う予定ですが、ここで簡単に触れておきます。
塾に行かせるべきかどうかで悩むご家庭は多いでしょう。
文部科学省・国立教育政策研究所が令和7年度に実施した「全国学力・学習状況調査」をもとに調べたところ、全国の公立中学校3年生が学習塾に通っている割合は、およそ60%となっています(ただし、都道府県により約30~70%と開きがあります)。
さて、大半の中3が塾に通っている中で、どのように判断すればよいでしょうか。
結論はシンプルです。
「必要なら使う」
これに尽きます。
塾に通うかどうかを判断するには、
・何を補うためか
・本当に必要か
を明確にすることです。
参考までに、塾が効果的になるケース、そうでないケースを簡単に取り上げてみます。
塾が効果的なケース
・自分で勉強できない
・分からないところを放置する
・ペースメーカーが必要
不要なケース
・自分で計画的に勉強できる
・学校+市販教材で回せる
「周りが行っているから」という理由だけで判断してしまうと、塾へ行く目的があいまいになり、効果的に活用できないこともあります。
塾は「安心を買う場所」ではなく、目的を達成するための手段です。
3. 意思決定を支える
最後に、親が果たすべき最も重要な役割です。
それは、「子どもが決めることを支えること」です。
受験は意思決定の連続です。
子どもは多くの場合、「どう決めればいいか分からない」状態にあります。
だからこそ親の役割は、答えを与えることではなく、判断を支えることです。
例えば、志望校の決め方についてです。
子どもは、その時点の学力で行ける学校や、仲の良い友達が志望している学校を基準に考えることがあります。
こうした考え方がすべて悪いわけではありませんが、早い段階で妥協したり、周囲に流されたりすることが習慣化してしまう恐れがあります。
自分が本当に行きたい学校を見つけるには、次の3つの観点で考えると整理しやすくなります。
・将来の学力
・本人の希望
・通学・環境
どれか一つだけで決めるのではなく、バランスが重要です。
親と子で意見がぶつかることもあるでしょう。そのようなときは、
・なぜそう思うのかを子どもに聞く
・メリット・デメリットを整理する
・最終的に本人(子ども)が納得する
というプロセスを大切にしてください。
受験をするのは子どもであり、子どもの人生です。
「自分で決めた」という感覚が、その後の努力を支えます。親の一方的な希望を押し付けることは、できるだけ避けましょう。
まとめ
この章のポイントを整理します。
・情報は「集める」のではなく「選ぶ」
・親の役割は「教えること」ではなく「環境を整えること」
・最も重要なのは「意思決定を支えること」
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
次の章では、親がやってはいけないNG行動を扱います。
