高校受験 第3章:やってはいけないこと 〜親が無意識にやりがちなNG行動〜
第2章では、親がやるべきことを「3つの役割」に整理しました。改めて示します。
1.情報を整理すること
2.環境を整えること
3.意思決定を支えること
中学生の思考は、大人と比べるとどうしても近視眼的になりがちです。人生経験がまだ十分ではないため、これは自然なことです。だからこそ、親が適切にサポートすることが大切です。
しかし実際には、それと同じくらい重要なのが、「やってはいけないことを避ける」ことです。親にはやるべきことがある一方で、避けるべき行動も存在します。
受験には、次のような特徴があります。
・良い行動は少しずつプラスになる
・悪い行動は一気にマイナスになる
これは受験に限らず、ビジネスにも共通する考え方で、イメージしやすいのではないでしょうか。
信頼は時間をかけて積み上がる一方で、失うのは一瞬です。近年では、SNSをきっかけに企業が炎上し、信頼を一気に失うケースも少なくありません。
こうした点は、長年ともに生活している家族においても大きくは変わりません。とりわけ思春期にある中学生であれば、親を疎ましく感じることも自然なことです。
「自分の子どもは分かってくれる」と過信するのではなく、慎重に関わる姿勢が求められます。
さて、ここでは、多くの家庭で見られる「典型的な失敗」を整理します。
1.過干渉になりすぎる
親が陥りやすい代表的な失敗の一つです。
第2章の「環境を整える」の項目でも、「親が教えようとしすぎること」について触れました。頭ではよくないと分かっていても、つい口を出してしまうなんてことをやりがちです。典型的な例としては、次のようなものがあります。
・勉強内容に細かく口を出す
・スケジュールをすべて管理する
・テスト結果に一喜一憂する
読者の中にも、思い当たる方がいらっしゃるかもしれません。これらは一見、熱心なサポートに見えますが、子どもの主体性を奪ってしまうという大きな問題があります。子どものためを思っての行動であっても、その気持ちは中学生の子どもにはなかなか伝わりません。
ご自身が中学生だった頃を思い出してみてください。「あれをやれ」「これをやれ」と指示されれば、反発した経験があるのではないでしょうか。
例えば、
・「今日は英語やったの?」と毎日確認する
・「そのやり方ではダメ」と解き方を指示する
・模試の結果を見てすぐに叱る
こうした行動が積み重なると、子どもは、
「どうせ言われるからやる」
「自分で考えなくていい」
という状態になってしまいます。
たとえ親に言われて机に向かったとしても、そのときの学習効果は高くはありません。
受験は最終的に「本人がやるもの」です。親が主導しすぎると、子どもは自分で考えることをやめてしまい、やがて、
・指示がないと動けない
・自分で判断できない
といった状態に陥りやすくなります。
これは高校受験に限らず、その後の人生にも影響します。
親としての理想は、「見守りつつ、必要なときだけ関わる」ことです。
・普段は任せる(放任ではなく、温かく見守る)
・相談されたら一緒に考える
このスタンスが、結果的に最も良い成果につながります。口を出したくなる気持ちは自然なものです。何を隠そう、私自身もそうでした。しかし、子どもの将来を考え、ぐっとこらえることが大切です。
2. 放置しすぎる
次の悪い例は、過干渉とは逆の「放置」です。
子どもを温かく見守ることと、放置することはまったく異なります。
温かく見守るとは、子どものやることに過度に口出しはせず、「今日も頑張っているね」といった適度な声かけをしながら、日常生活に変化はないか、学習が継続できているかなどを把握することです。
一方、放置とは、次のような状態を指します。
・「本人に任せる」と言って何も見ない
・成績や状況を把握していない
・問題が起きても気づかない
これらは一見「自主性を尊重している」ように見えますが、実際には放置に近い状態です。
初めて受験を迎える家庭では、親もプレッシャーを感じます。そして、中学生の子どもはそれ以上のプレッシャーを抱えています。順調に見えても、不安を内に抱え、何らかのサインを出すこともあります。
放置の具体例としては、次のようなものがあります。
・定期テストの結果を確認していない
・子どもが決めた志望校について話し合いをしていない
・学習が滞っていても気づかない
こうした状態では、プラスの効果は期待できません。
たとえこれまで優秀な成績を収めていたとしても、子どもはまだ中学生です。常に最適な判断ができるとは限りません。目先の楽な選択に流れ、
・苦手を避ける
・楽な方に流れる
といった行動をとることもあります。これは大人でも同じです。
大切なのは、放置ではなく「状況を把握する」ことです。
・定期的に成績を見る
・大まかに学習状況を確認する
ただし、細かく口出しはしない。
「見ているが、支配はしない」
このバランスが重要です。
そして、子どもが道を踏み外しそうになったときに、適切に軌道修正することが親の役割です。
3. 情報に振り回される
親自身がかつて高校受験を経験したときは、現代のようにネット環境は発達していませんでした。
その頃の情報源と言えば、学校の先生や塾の先生による助言、先輩からの経験談といった類のものでしょう。限られた情報しか入手できなかったので、情報に振り回されるといったことは皆無でした。
しかし、今はインターネットで簡単に膨大な量の情報が入手できる時代です。「勉強方法」と検索するだけで、すさまじい数のサイトがヒットします。SNSにも情報があふれており、生成AIにアドバイスを求めることもできます。例えば、それらを活用して、
・SNSの合格体験談
・「この勉強法が最強」
・他の家庭の成功例
といった情報を簡単に得ることができます。
しかし、インターネットやSNSなどの情報は、玉石混交です。これら膨大な量の情報は、何が自分の子どもに適しているのか、一つずつ検証する時間的な余裕はありません。
また、サイトによっては真逆の内容が書かれている場合もあり、どれを信じればよいのか、判断が簡単にはつきません。そのため、これらの情報に影響されすぎると、判断がブレ続けます。
情報に振り回されると、
・塾を短期間で変える
・教材を次々に買う
・勉強法をコロコロ変える
といったことになりかねません。結果として、どれも中途半端になり、学力の上昇は見込めません。
ここで必要な対策はシンプルです。
「判断の軸を持つこと」です。
・その方法(または教材)は子どもに合っているか
・継続できるか
この2つで判断すれば、迷いは大きく減ります。
子どもと最も長く一緒に生活しているのは、多くの場合、親です。子どもの性格を最もよく理解しているのも親でしょう。何が自分の子どもに合っているのか、何が合わないのかを、子どもと話し合いながら決めていくことが理想です。
4. 塾に任せきりにする
子どもが塾に通うようになると、多くの親はほっと胸をなでおろします。多くのご家庭で、「勉強しなさい」と口に出すのをぐっとこらえ、心の中で繰り返していたのではないでしょうか。塾に通うことで半ば強制的に学習習慣が生まれ、そのようなやきもきした気持ちから解放され、学力向上への期待を抱きます。
私もそうでした。ただ、注意していただきたい点があります。
・塾に行っているから安心
・あとは全部任せる
塾に通い始めることで、不安がいくらか和らぐことはあるでしょう。しかし、塾は万能ではありません。「塾に入れた=安心」と考え、子どもの学習状況をまったく見なくなってしまうのは危険です。
塾の役割はあくまで、
・学習のサポート
・ペースメーカー
にすぎません。
例えば、塾に通い始めた後に起こりがちな例として、
・塾の宿題をこなすだけで復習しない
・志望校の方針が家庭の考えとずれていることに気づかない
といったことがあります。
こうした状態では、せっかく塾に通っていても効果は限定的です。子どもが塾に通っているからといって、受験のすべてから解放されるわけではありません。
・志望校の最終判断を支えること
・家庭での学習環境を整えること
これらは親の重要な役割です。
「丸投げはできない」という前提を持つことが大切です。
5. 感情的に接してしまう
受験生になると、子どもは漠然とした不安を抱え、精神的に落ち着かない時期に入ります。それは子どもだけでなく、親も同様です。
私の場合、会社から帰宅したとき、子どもが勉強していれば安心できますが、タブレット端末を触っている姿を見ると、「大丈夫だろうか」と不安になったものです。
しかし、子どもは日々、受験というプレッシャーと向き合いながら学習を続けています。たまたま目にしたときに休憩していただけで不安になるのは、やや過剰な反応とも言えるでしょう。ただ、それだけ親も不安を抱えているということでもあります。
不安が募ると、
・日常的にイライラする
・何気ない場面で強い言葉を使ってしまう
・テストや模試の結果に過剰に反応する
といった行動につながりがちです。
すべては子どもの受験、そしてその先の将来を思うがゆえですが、例えばテストの点数を見て思わず「なんでこんな問題もできないの?」と言ってしまうと、子どもには「否定された」という印象だけが強く残ります。
子どもは親の感情に強く影響されます。その結果、
・プレッシャーが強くなる
・自信を失う
といった状態になり、本来の力を発揮できなくなる恐れがあります。どれだけ心配であっても、親には「冷静さ」を保つことが求められます。
・感情で反応しない
・事実ベースで見る
これに加えて、親自身の不安に対しては、次のような対処が有効です。
・不安を書き出す
頭の中で考え続けるのではなく、紙に書き出すことで整理され、必要以上に膨らむのを防げます。
・確認する時間を決める
「毎日気にする」のではなく、「週に1回だけ学習状況を見る」など、ルールを決めることで過剰な干渉を防げます。
・事実と想像を分ける
「今日は勉強していなかった(事実)」と「このまま落ちるのではないか(想像)」を切り分けて考えることが重要です。
・第三者に話す
配偶者や学校、塾の先生に相談することで、客観的な視点を得られ、不安が和らぎます。
こうした工夫によって、親自身が落ち着きを保つことができます。親が冷静でいることが、結果的に子どもの安心感につながります。
6.「正解」を求めすぎる
最後に、非常に重要なポイントをお伝えします。
受験では、「志望校を決める」「塾に行くか決める」「学習の仕方を決める」など、多くの判断が求められます。子どもだけで完結するものもありますが、多くは親からのサポートを必要とします。このとき、親は「できるだけ正しい選択をしたい」と考えすぎる傾向があります。
しかし、受験に絶対的な正解はありません。
・子どもの性格
・学力
・環境
などによって、最適な選択は変わります。
例えば、志望校を決める場面で、A高校とB高校の2つが第一志望の候補として挙がったとします。どちらを選ぶべきか、多くのご家庭が悩むところです。
学校の難易度、校風、部活動、通学時間など、さまざまな要素を比較しながら絞り込んでいくことになります。
ここで、「少しでも偏差値の高いA高校のほうが将来に有利ではないか」「通学時間は長くても、その分得られるものが大きいのではないか」と、より正しそうな選択を探し続けてしまうことがあります。
その結果、何度も結論を出し直したり、子どもの気持ちよりも条件面を優先してしまったりするケースも少なくありません。
しかし、どの選択にもメリットとデメリットがあります。仮にA高校を選んだとしても、「B高校のほうが合っていたのではないか」と感じる瞬間は出てくるでしょう。逆も同じです。つまり、「後悔しない完璧な選択」を最初から見つけることは、ほぼ不可能なのです。
だからこそ大切なのは、
子どもが納得できる選択をすることです。
たとえ結果的に遠回りに見えたとしても、自分で考えて決めた経験は、その後の成長に大きくつながります。
受験は子ども自身が向き合うものです。しかし、中学生の段階で将来を見通した判断をするのは簡単ではありません。だからこそ、親のサポートが不可欠です。
その際に重要なのは、「何をするか」だけでなく、「何をしないか」を意識することです。
この章で挙げたポイントを避けるだけでも、大きな失敗は防ぐことができます。
もちろん、失敗を恐れすぎる必要はありません。小さな失敗であれば、いくらでも経験してよいのです。
私自身も、教材制作に関わる立場でありながら、子どもの勉強に口出ししすぎてしまったことがあります。しかし、その都度振り返り、同じ失敗を繰り返さないようにしてきました。
最も大切なのは、親が子どもとの適切な距離感を保ち続けることです。
近すぎても、遠すぎてもいけない。
そのバランスこそが、子どもの力を最大限に引き出します。
まとめ
やってはいけないことを整理します。
・過干渉になりすぎる
・放置しすぎる
・情報に振り回される
・塾に任せきりにする
・感情的に接する
・正解を求めすぎる
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次の章では、塾・教材の選び方を紹介します。
