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高校受験 第4章:塾・教材の選び方 〜なんとなく選ぶをやめる〜

ここまで、
第1章:受験の全体像
第2章:親の役割
第3章:やってはいけないこと
を整理してきました。
本章では、多くの受験生が利用する塾、そして受験対策に欠かせない教材について取り上げます。
 
第2章で触れたように、文部科学省・国立教育政策研究所の「全国学力・学習状況調査」(令和7年度に実施)によると、全国の公立中学校3年生が学習塾に通っている割合は、およそ60%です。
低学年から通っている子どももいますが、中3から通い始める子どももいます。塾選びも一苦労かと思います。


1. なぜ塾選びで迷うのか

今の親世代が中学生だった頃、塾といえば「集団指導」と「個別指導」の2つのタイプが中心だったのではないでしょうか。選択肢が限られていたため、あまり悩むことはなかったと思います。
一方で、現在は多様な選択肢があります。
まずは、管理形態による塾の分類を以下に示します。

【管理形態による分類】
自立型:生徒が自分で学習を進めることを重視し、塾は質問対応や学習環境の提供を行う形式
管理型:学習計画の作成や進捗確認、日々の学習内容まで塾が細かく管理する形式
伴走型:生徒の目標に寄り添いながら、定期的な面談や声かけを通じて学習を支援する形式
放任型:基本的な教材や環境のみ提供し、学習の進め方は生徒本人に委ねる形式
ハイブリッド型:自立型と管理型を組み合わせ、生徒の状況に応じて管理の強度を調整する形式

次に、指導形式による分類です。中学生の子どもを持つ親世代の方にとっては、こちらのほうがなじみがあるかと思います。

【指導形式による分類】
集団指導:学校の授業のように、複数の生徒に対して一斉に指導する形式。放任型〜管理型まで幅があるが、全体としては放任型寄りが多い。授業進度は固定されており、個別の学習管理は比較的弱い傾向
個別指導:講師1名が生徒1名(または2名)に対して指導を行う形式。管理型・伴走型が多い。生徒ごとにカリキュラムを調整しやすく、進捗管理や声かけが行われやすい形式
オンライン指導:オンラインで講師が指導を行う形式。自宅で受講が可能。自立型〜管理型まで幅広い。リアルタイム指導は管理型、録画中心は自立型になりやすい
映像授業:講師の授業動画を視聴する形式。塾または自宅で学習できる。自立型が中心だが、塾によっては管理型(進捗チェック・面談あり)も存在する
学習管理型:授業を行わない代わりに、学習計画の作成や進捗管理を行う形式。管理型・伴走型が中心 

このように、現代では塾の指導方式、管理形態に様々なスタイルが存在します。その一方で、中学生の子どもを持つ親世代には、「塾=集団指導」という印象が今も強く残っているのではないでしょうか。
ご自身が集団指導の中で鍛えられ、受験を乗り越えてきた経験をお持ちであれば、その成功体験から、子どもにも同じタイプを勧めてしまうことがあるかもしれません。
しかし、親と子どもは別の人間です。
親に合っていた方法が、必ずしも子どもに合うとは限りません。この点には十分な注意が必要です。

さて、少子化が進む中で、塾側も生徒を獲得するために激しい競争を繰り広げています。「合格実績」や「成績アップ」といった実績を前面に打ち出し、それぞれが魅力的に見えるよう工夫されています。
その結果、
 
・どこを選べばよいのか分からない
・とりあえず有名な塾を選んでしまう

 
といった判断になりがちです。
また、塾選びでは次のような悩みもよく見られます。
 
・友達が通っているから同じ塾にするべきか
・「成績が上がった」という口コミをどこまで信じてよいのか
・個別指導と集団指導、どちらが自分の子どもに合っているのか分からない
 
これらはいずれも自然な悩みです。
ただし、このような「なんとなく」の判断で決めてしまうと、後からズレが生じる可能性があります。
例えば、
 
・通塾時間が長くて負担になる
・集団授業が合わず理解が進まない
・塾に通い始めてから、逆に成績が下がってしまった

 
といったケースも少なくありません。
結果として、当初思い描いていたものとは異なる方向に進んでしまうこともあります。 

2. まず前提:「正解」はない

ここで大切な前提を確認します。
「塾をどこにするのか」に絶対的な正解はありません。
なぜなら、
 
・子どもの性格
・学力
・学習習慣
 
などによって最適解が変わるからです。
例えば、同じ偏差値50の子どもでも、マイペースでのんびりとした性格の子であれば、おそらく集団指導型の塾よりも、個別指導型のほうが向いているかもしれません。
一方、負けん気があり、競争心の強い子であれば、集団指導のほうが適しているでしょう。
 
どれだけ有名な塾で、どんなに有名な講師の塾であっても、子どもに合わなければ意味がありません。どれだけスゴイ合格実績があったとしても、子どもが行きたくないと思ってしまっては意味がないのです。
今では、ほとんどの塾が体験授業を受け付けています。塾に行くことを検討するときには、
 
・子どもに合うか
・子どもが行こうと前向きに考えられるか

 
で決めることが重要です。

3. 塾を選ぶときの判断軸

これまで、塾の種類、塾を決めるときの心構えを簡潔に説明してきました。ここでは、子どもに適した塾それぞれの塾選びは、次の3つで考えるとシンプルになります。
 
①自立型か、管理型か
まずは、子どもの性格や学習状況を踏まえ、「自立型」「管理型」のどちらが適しているかを考えてみてください。
判断基準として、次のようなものが挙げられます。
 
・言われなくても机に向かう → 自立型
・何をやっていいか分からない → 管理型

 
例えば、自宅で言われなくても机に向かうことができる子どもであれば自立型、そうでない場合は管理型が有効です。どちらとも言えない場合には、ハイブリッド型という選択肢もあります。
子どもに合っていないと、どんな塾でも効果は出ません。
 
②集団指導か、個別指導か
昔ながらのスタイルである「集団指導」は、イメージしやすいかと思います。その主な特徴は次の通りです。
 
・競争環境がある
・授業ペースが一定

 
集団指導に向いている子は、「周りと競うとやる気が出る」「授業にある程度ついていける」といったタイプです。
例えば、運動部に所属していて負けん気が強い子や、基礎学力が一定程度身についており、さらなる学力向上を目指したい子などが適しています。
 
一方、個別指導の特徴は次の通りです。
 
・子どもの理解度に合わせられる
・苦手対策に強い

 
これに向いている子は、「マイペースで学習したい」「集団授業についていけない」「特定の苦手分野を克服したい」といったタイプです。
例えば、数学だけ理解が浅いため集中的に対策したい場合や、周囲に合わせるのが苦手な子などが考えられます。
「集団指導」「個別指導」のどちらが子どもに適しているかで判断することが重要です。
 
③目的が明確か
塾選びでは、親が一方的に決めるのではなく、子どもの意思を尊重することが大切なのは言うまでもありません。そして、判断にあたって最も重要なのは、
 
「何のために塾に行くのか?」
 
を明確にすることです。
受験対策のために通うと考えている方も多いと思います。しかし、一口に受験対策といっても、「中程度の学力をさらに伸ばしたいのか」「基礎学力を身につけたいのか」「特定の苦手分野を克服したいのか」など、子どもの状態や志望校のレベルによって、有効な学習方法は異なります。
ここで、一般的な塾通いの目的を挙げてみます。
 
・苦手克服
・ペースメーカー
・志望校対策

 
目的が単に「受験対策」といった漠然としたものでは、何をすべきかが見えにくくなります。
例えば、次のようにできるだけ具体化しておくことをおすすめします。
 
・英語の文法が弱いので補強したい
・家で勉強しないので強制力がほしい
 
このように目的が具体的であれば、塾の使い方も明確になります。子ども自身が目的を理解していれば、塾でも集中して取り組むことができ、気が向かないときでも乗り越える力につながります。
一方で、避けたいNG例は次の通りです。
 
・なんとなく不安だから
・周りが行っているから

 
このような状態で通い始めても、効果は出にくいものです。何のために通うのかを子ども自身が理解していないと、塾での集中力が散漫になったり、途中で通うのが負担になったりしてしまう可能性があります。 

4. よくある失敗パターン

ここでは、塾選びにおいてよくある失敗パターンを紹介します。できるだけ避けるようにしましょう。
 
失敗①:有名だから選ぶ
「有名=子どもに合う」とは限りません。
難関校向けの有名塾に入ったものの、集団授業についていけず、自信を失ってしまうケースもあります。
 
失敗②:周りに合わせる
家庭ごとに環境や条件は異なります。
友達と同じ塾に通うことが正解とは限りません。レベルが合わず、負担になることもあります。
 
失敗③:途中でコロコロ変える
学習が積み上がらなくなるため、避けたい行動です。
例えば、個別指導に通い始めたものの、「大手の集団指導のほうが安心」と親の判断で短期間で塾を変えてしまうケースです。
もちろん、実際に子どもが「合わない」と感じているのであれば、見直す余地はあります。しかし、親の漠然とした不安だけで判断してしまうと、学習が中途半端になり、結果として効果が出にくくなります。
繰り返しますが、最も重要な判断軸は「子どもに合っているか」です。 

5. 教材の選び方

本章の最後に、「教材の選び方」について触れておきます。
ただし、ここでは「英語は○○の参考書がよい」「数学は△△の問題集がよい」といった具体的な教材名は挙げません。
なぜなら、教材の良し悪しに絶対的な基準はなく、子どもの学力レベルや使い方に大きく左右されるからです。
私は教育系出版社で教材制作にも関わっていますが、その立場からはっきり言えることがあります。
それは、教材は「質」よりも「使い方」が重要であるということです。
 
もちろん、どんな教材でもよいという意味ではありません。
多くの方が、インターネットで評判の良い教材を調べた経験があると思います。私自身もあります(笑)。
しかし、どれだけ質の高い教材でも、子どもに合っていなければ意味がありません。また、継続して使われなければ効果は出ません。
例えば、
 
・この参考書が一番いいらしい
・有名だから間違いない
 
といった理由で購入しても、買っただけで満足してしまったり、分量の多さに圧倒されて手をつけなくなったりすることはよくあります。
子どもに合うかどうかは、子ども自身が実際に見て判断することが重要です。合っている教材であれば継続しやすく、合っていない教材であれば自然と使われなくなります。
繰り返しますが、どんなに良い教材でも、子どもに合わなければ意味がありません。
購入の際は、書店で実際に中身を確認し、子ども自身が納得して選ぶことが大切です。

6. 良い教材の基本的な条件

ここまで「子どもに合うこと」の重要性を述べてきました。本節では、その具体的な中身を説明します。
 
①レベルが合っている
参考書や問題集を選ぶ際、難しすぎる・簡単すぎるというミスは非常に多く見られます。
難しすぎると手が止まり、自信を失ってしまいます。
一方、簡単すぎると学力は伸びず、飽きてしまいます。
これはゲームに例えると分かりやすいでしょう。難しすぎるゲームはやる気が起こらず、簡単すぎるゲームはすぐに飽きてしまいます。それと同じです。
適切なのは、「少し背伸びすれば届くレベル」です。目安としては次の通りです。
 
・正答率が5割前後 → ちょうど良い
・ほとんど解けない → レベルを下げる必要あり

 
実際に問題をいくつか見て、分かる問題と分からない問題が混在している状態が理想です。
 
②解説が理解できる
分からない問題は、解説を読んで理解することになります。
しかし、中学生にとっては、読んでも理解できない解説も少なくありません。
このような教材では、学習効率が下がり、モチベーション低下にもつながります。
「分かる」体験を積み重ねることが、次の学習につながります。
教材の質を大きく左右するのは、「解説の分かりやすさ」です。
 
③繰り返せる量である
参考書や問題集は、繰り返し取り組むことが重要です。そのためには、まず一冊をやり切れることが前提になります。
問題数が多すぎると終わらず、途中で挫折しやすくなります。子どもが「これならやり切れそう」と感じる分量を選びましょう。
また、よくあるミスとして、複数の問題集に手を出してしまうことが挙げられます。結果的にどれも中途半端になり、効果が薄くなります。
重要なのは、教材の数を増やすことではなく、同じ教材を繰り返すことです。
 
さらに、問題演習の進め方にも注意が必要です。
問題演習は、「問題に取り組む → わからない → 解説を読む → わかった(終わり)」
で終わりがちですが、これでは不十分です。
学習の理解段階は次の3つに分かれます。
 
1.わからない(解説を読んでも分からない)
2.わかった(解説を読めば理解できる)
3.解けた(自力で解ける)

 
学力向上のためには、3番の「解けた」レベルまで引き上げることが重要です。
 
まとめ
本章の内容を整理します。
・どの塾がよいかに絶対的な基準はない
・子どもに合うかどうかが最も重要
・塾に通う目的を明確にする
・教材はレベル・解説・量が子どもに合っているものを選ぶ
 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次の章では、子どもとの関わり方を扱います。

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