気づけば、ここに戻ってくる
私は本が好きだ。
年間100冊は読む。
だから、「私を定義した3冊は?」と聞かれると、すぐには答えられない。
影響を受けた本は、3冊だけではない。
悩んだとき、つい手に取ってしまう、そんな3冊を選んでみた。
①なぞの転校生(眉村卓)
中学2年の教室に、ある日、異世界から来た転校生が現れる。
その存在をきっかけに、同級生たちは「自分たちのいる世界がすべてではない」と知っていく。
中学生だった私は、その設定に強く惹きつけられた。
もし、自分のすぐそばに、別の世界があったとしたら。
もし、当たり前だと思っているものが、当たり前ではなかったとしたら。
読み終えたあと、世界の見え方が少し変わった気がした。
それまでの私は、目に見えるもの、自分が理解できるものだけを信じていた。
けれど、この本を読んでから、「そうじゃないかもしれない」と思えるようになった。
世界は一つじゃない。
考え方も一つじゃない。
その感覚は、今も私の中に残っている。
② アンネの日記(アンネ・フランク)
戦争を知らない私にとって、この本は、想像の外にある現実だった。
ユダヤ系であるという理由だけで追われ、隠れ家での生活を余儀なくされる日々。
そして、収容所で命を落とした16歳の少女。
過酷な状況の中で、それでもアンネは書き続けていた。
自分の思いを、未来への希望を、言葉として残そうとしていた。
「人間の本質は善である」と信じて。
その言葉を読んだとき、とめどなく涙が流れた。
自分の悩みがちっぽけに思え、それでも前を向こうとする強さに、ただ圧倒された。
いつかいつかと、物事を先のばしにしてきた自分がいる。
そんなとき、この本を思い出す。
どんな状況にあっても、どう生きるかは自分で選ぶしかない。
その問いを、私は何度もここで突きつけられる。
③ 道を拓く(松下幸之助)
社会人になり、その企業の創始者の言葉として出会った一冊。
労働組合が創業者の銅像を建てたと聞き、正直、少し驚いた。
経営側と対立するものだと思っていたからだ。
なぜ、そこまで慕われていたのだろう。
その理由を知りたくて、この本を手に取った。
短い言葉の中に、創始者の考え方やものの見方が、そのまま流れている。
人にはそれぞれの道がある。
遠く感じても、歩き続けていれば、いつか新しい道がひらけてくる。
静かに背中を押される感じがする。
迷ったとき。
立ち止まったとき。
うまくいかないと感じたとき。
そんなとき、私は何度もこの本に戻る。
いつでも立ち返れる場所のように感じている。
この3冊を並べてみると、
私は、
世界の広さを知り、
どう生きるかを考え、
迷うたびに立ち返る場所を持ちながら、
ここまで来たのだと思う。
楽したい、怠けたい、とつい逃げてしまう。
……まぁ、しゃーないよね。それが私なんだから。
そんなとき、私はまた本棚からこの3冊を取り出す。
本を開き、立ち止まって、また前を向く。
