パブロ・マチンのサッカーについて考える

秋春制移行による準備期間として行われたJ1百年構想リーグにおいて、総合3位という素晴らしい結果を残したセレッソ大阪。勢いそのままに秋春制移行後の26/27シーズンに臨む…かと思いきや、そこで待ち受けていたのは過去に類を見ない大波乱のシーズンオフでした。複数人の主力流出に加え、監督の電撃退任。「1.5年」というキーワードを胸に半年間戦ったのにも関わらず、道半ばでの再出発を余儀なくされたのです。

急遽その穴を埋めるべく新監督に就任したのは、クラブとしてはミゲル・アンヘル・ロティーナ以来のスペイン人監督となるパブロ・マチン。かつてロティーナの元で選手としてプレーをし、監督への道を歩むことを後押しされたという実績豊富の知将は、一体どのようなサッカーを志向するのでしょうか。今回は、過去の試合を複数チェックした上で、彼のサッカー観について考えていきます。

百年構想リーグ

本題に入る前に、まずは少しだけ百年構想リーグとオフシーズンの話をしましょう。アーサー・パパス前監督の元で前半戦こそ苦しんだセレッソでしたが、後半戦初戦の大阪ダービーで開幕戦のリベンジを果たすと、その勝利を皮切りに公式戦11戦8勝1分2敗(PK含む)という怒涛の勢いでシーズンを最後まで駆け抜けました。

この流れを引き寄せたのは、間違いなく監督であるパパスの手腕だったと言えるでしょう。ポステコグルー流派らしく明確な自分の哲学を持つ監督ですが、それに加えて選手の特徴に合わせて全体をオーガナイズできる柔軟性と選手を伸ばす指導力も持ち合わせており、試合を重ねるたびにチームも個も大きく成長していきました。

選手もボールも流動的によく動き、それでいてシームレス。隙あらば繰り出される速攻も終盤にかけて2025シーズンの鋭さを取り戻したムービングでアタッキングなフットボールは、ラスト5試合で17得点を記録。ここに怪我から復帰のルーカスや新加入の選手をどう組み込み、どのように発展していくのか。このサッカーの続きが見れないというのは、非常に残念でなりません。

ただ、別れあれば出会いありとも言います。少なくとも今回の件がなければ、現在のフロント新体制としての監督選びの機会、つまり本当の意味での現フロント主導のプロジェクトの始まりは訪れなかったわけです。同じくサウジの標的とされたガンバ大阪のキャンプ前日退任騒動を鑑みてもパパスが早めの決断を下してくれたことは非常に助かることで、少なくとも彼らよりは間違いなく円満な別れとなりました。日頃から後任候補をリストアップして追い続けていたフロントの対応も素晴らしく、前体制からの成長も伺えます。秋春制移行やW杯の影響で、夏の市場もむしろここからが本番。監督不在につき遅らせるしかなかった補強も外国籍選手を中心にこれから模索していくでしょうし、Luan Freitasへオファーを出したことも先日ブラジル方面で報道されていました。マチンのフットボールと併せて、そういったところも楽しみに待ちたいと思います。


欧化政策

新監督を選定するにあたって、雨野SDが基準を設けた項目は「実績・経験」「育成力」「戦術的柔軟性」「攻撃的なフットボール」「将来性」の五つでした。

ここで一つ触れておきたいのは「実績・経験」の条件のところに「欧州トップリーグでの指導経験」という記載があったことです。オーストラリア人記者から名前の出ていたジョン・ハッチンソンやマーク・ミリガンは全て憶測に過ぎず、最初からポステコグルー流派で継続するつもりも、日本人でお茶を濁すつもりもなかったことが伺えます。

なぜ欧州に縛ったのかと言えば、やはり市場の中心である欧州の考え方をどんどん取り入れてクラブとしてのベースとしていきたいからでしょう。今オフにも石渡ネルソンがシント=トロイデンに移籍したように、今は少しでもブレイクするとすぐに欧州から狙われる時代です。他クラブでも水戸ホーリーホックの安藤晃希がデビュー戦から2試合連続でゴールを決めると、そこから1ヶ月にも満たない間にアントワープからオファーが来ていたといいます。秋春制への移行はこの流れをさらに加速させるものであり、Jクラブは選手を如何に高く売るか、つまり市場価値を如何に高めるかを突き詰めて行かなければなりません。

アルスヴェンスカンはここ数年で移籍金を大幅に上昇させることに成功している

その際に必要となるのは、欧州側が「この選手は活躍できる」という確信を持てるかどうかです。現時点でJリーグとほぼ同等もしくはそれ以下のリーグレベル且つ給与はJリーグよりも低いと言われるスウェーデンリーグのアルスヴェンスカンでは、ここ2年間で5人もの選手が1000万ユーロ以上の金額で5大リーグに引き抜かれています。一方、JリーグではA代表歴のある佐藤龍之介クラスでも400万ユーロ止まり。この違いを生んでいる要因の一つに、欧州スタンダードの個人戦術を身につけており、欧州の環境で戦っていけるという確信の有無があることは間違い無いでしょう。フロントが新監督に、そしてドルトムントやアルメレ・シティに求めているのはこうしたところを伝えてもらい、クラブに根付かせてもらうことなのだと思いますし、「日本の指導者にも影響を与えて頂きたい」という雨野SDの言葉からもそういった意図が垣間見えます。

他の項目に目を向けると「育成力」「戦術的柔軟性」「攻撃的なフットボール」の三つはパパスを連想させますし、ここはスムーズに仕事を引き継いでもらうためにも外せなかった部分になるのでしょう。育成に関しても間違いない手腕を持っており、獲得当時は市場価値70万ユーロだったところを自身が指導した2年間で市場価値1000万ユーロにまで引き上げたポルトゥを筆頭に、マチンの指導で市場価値が高騰した選手というのは数多くいます。

「戦術的柔軟性」に関しては後述しますが、選手の特徴に合わせたチームビルディングを行う監督であることは色々な試合を見ていても感じましたし、そうした柔軟性の中でも「攻撃的なフットボール」というフィロソフィーは常に一貫していました。最後の「将来性」の項の「クラブとともに発展できる」というのは…どこか含みを感じてしまう文言ですが(笑)、就任当時セグンダ・ディビシオンの最下位に沈んでいたジローナで長期政権を築き、クラブをラ・リーガへ導いたマチンはこれらの条件に完全にマッチする人材であると言えそうです。


保持

それでは本題に入りましょう。先ほども「攻撃的なフットボール」という触れ込みがありましたが、本人も言うように常に敵陣でプレーすることを目指し、常にゴールに迫ろうとするところこそがマチンのサッカーが攻撃的たる所以。そのためにハードワークを求めるという部分も含めて、ここは前任者が掲げていていたことと似ていますね。体制が変わる中でも「ホルダーはできる限り中央に向かって運ぶ」「大外の選手が幅と深さを取るべくスプリントする」「前線が斜めの位置どりでボールを引き出す」という速攻のセオリーを1年半で積み重ねてきたことは大きなアドバンテージになるでしょう。中央で運び出す役割をこなしていた中島元彦が移籍したことは懸念材料にはなりますが、そこをカバーできる選手が現れれば、カウンターの破壊力は来季もセレッソの強みになりそうです。

しかし、パパスとマチンが似ているのは大枠のフィロソフィーと速攻のセオリーくらい。それ以外は攻守ともにかなり考え方や手段が異なっています。例えばビルドアップの局面。パパスは後方からショートパスで繋ぐことを好みますが、マチンはある程度相手をプレスに引き出すと、すぐに前線のターゲットに向かってロングボールを蹴る傾向が強いです。どのクラブでも長身のCFを好んで起用し、必ず背後に流れたボールに走り込む選手が1人、こぼれ球を回収する選手が複数人いるなど、ロングボールを前提とした配置しているのが印象的でした。CFが比較的小柄な場合は、WBに高身長の選手を置いてターゲットにしていた試合もありましたね。

ただし、これは相手がプレスに来ることが前提。もし相手がプレッシャーを掛けに来ず前方が空いているのであれば、ホルダーは積極的にキャリーすることが求められます。ここは自陣でも敵陣でも一貫しており、短いパスをテンポよく繋いで…というシーンはあまり多くありません。よってマチンのチームは共通して保持率に対してパス数が少ないという特徴があり、これはpace of passing during possession(ボール保持中のパスの頻度)が世界で21番目に高かったパパスのチームとは正反対の傾向です。

パスの頻度が低いということは、レシーバーがホルダーに近づいてきてショートパスを貰うということも少ない、ということです。そもそもホルダーがキャリーしたいのに、他の選手が近づきすぎると相手も引き連れてしまってホルダーが運ぶためのスペースを潰してしまいますし、低い位置にいると前線がボールを受けた際に素早くヘルプに入ることができません。そのため、基本的にレシーバーはライン間に留まりつつポジショニングを調整してボールを引き出すか背後に抜け、ホルダーにスペースと縦or斜めの選択肢を与えてあげることが求められます。ホルダーもまずは縦or斜めの選択肢から模索し、隙があればどんどんスルーパスや楔のパスを狙っていました。

もし縦に行けないのであれば、次なる選択肢は逆サイドへの展開。中を締められているのであれば当然サイドは空いてきますし、大外役の選手がしっかり幅をとることはチームとして共有されているので、充分に相手を同サイドに引きつけたと判断すればサイドチェンジは頻繁に行われます。前監督のパパスはフェルナンド・ディニスをはじめとしたリレーショナルプレーの考えにも影響を受けていたため同サイドのみで攻撃を完結させる傾向が強く、積極的にワイドに長いボールを蹴ることは香川真司にのみ許されていました。石渡もサイドチェンジを蹴るようなサッカーではないという話をしていましたが、今季からはサイドチェンジの頻度は多くなるでしょう。

逆サイドまで持っていくことができれば、大外役の選手はとにかくクロスを第一に考えます。ここも常にゴールを狙うという強い意志を感じますし、深く抉ってからのクロスもそうですが、アーリークロスも積極的に狙っていたのが印象的です。中に入ってくる人数は基本的に2~3枚で、中盤の選手の誰かは必ずマイナスのクロスに合わせる役割とこぼれ球回収のために中央レーンに留まること(レストディフェンスというやつですね)がルールとして定められていそうな雰囲気でした。とても再現性のある攻撃になっており、マチンのチームの得点源は大抵このクロスとセットプレー、そしてカウンターに集約されています。

ですので、大外役の選手が高い位置で攻撃に関与できているかどうかはマチンのサッカーがうまくいっているかを測る上でのバロメーターの一つ。マチンは3バックの信奉者ですが、WBに本職WGの選手を配置することもあるのはこれが理由です。金明輝がサガン鳥栖時代にWBのことをウイングハーフと呼んでいたことがありましたが、まさにそんなイメージでしょうか。

とはいえ、当然試合の中では低めの位置でボールを持つこともあります。その場合、必ずインサイドの選手が1人サイドに流れることで大外役を補完する動きが仕込まれていました。WBには、中を切られているようならそのまま流れてくる選手を走らせるスルーパスを出し、縦を切られているようなら中に持ち込むという選択肢が用意されており、中に持ち運ぶ場合はCFが必ずヘルプに入ってワンタッチでサイドへ流すというのがテンプレート。HVが引きつけてリリースをしっかり行なっている場合WBに寄せてくる選手は大抵SBかWBになりますから、CBがよほどスライドしない限りSB裏には確実にスペースがあるのです。他にも、ヘルプに入る選手がいる場合は必ず他の選手がその背後へ抜ける釣瓶の動きや、縦のレーンと横のラインがお互い被らない三角形の構築など、かなり決まり事は多い印象です。

と、ここまで大雑把に保持の特徴を見てきましたが、一言で表せば「バーティカルでポジショナルなサッカー」といったところでしょうか。W杯で再び注目度が上がっているスペイン代表のようにゆったりボールを保持し続けるのではなくて縦に早く攻めようとしますが、そんな中でもしっかりポジショナルプレーの原則に則ってプレーする。考える時間が多くないので反射的に身体が動くようになるまで練度を上げなければなりませんし、セビージャの監督就任時に本人が「時間がかかる」と述べていのも納得がいきます。選手がどれだけアジャストできるかもそうですし、コーチ陣がどれだけ監督と選手の橋渡しをこなせるかもシーズンを戦う上で重要になってくるでしょう。

“Mi filosofía es Pablo Machín y quiero sacar el mayor rendimiento al equipo que tengo. Mi modelo de juego será el mismo que tuve en Girona. Según la exigencia de los rivales tendremos que ser quizás más dominadores. Pero quiero ser competitivo, difícil de ganar, ser versátil. Son palabras, quiero que cuanto antes se vea en el terreno de juego. Pero paciencia, hace falta tiempo”.
「私の哲学はパブロ・マチン流のスタイルであり、手元にある戦力を最大限に活かしたいと考えています。プレーの基本モデルは、ジローナ時代と同じものにするつもりです。対戦相手の出方次第では、より主導権を握る必要が出てくる場面もあるでしょう。しかし、何よりも競争力があり、簡単には負けない、そして柔軟性のあるチームにしたいのです。これらはあくまで言葉に過ぎませんから、できるだけ早くピッチ上でそれを体現する姿を見たいですね。ただ、忍耐も必要です。それには時間がかかるものですから」

Machín: "Ojalá Lenglet se quede, aunque soy realista..."


被保持

続いては被保持について。敵陣でプレーしたいというフィロソフィーがある以上、被保持においてまず優先度が高いのは前線からのハイプレスになりますが、特徴的なのは後方が数的同数になることを厭わないハーフコートマンツーマンでオーガナイズしていることです。

近年でこそ当たり前の光景になっているハーフコートマンツーマンですが、数年前までは決して普遍的な戦術ではありませんでした。最終ラインは相手の前線の枚数よりも1枚多くすることがベーシックな考え方で、フィールドプレイヤー全員のマッチアップを明確にすることはリスクが大きかったからです。そこから選手のアスリート能力が向上して個々人の守備範囲が広くなり、マンツーマンのメリットを得られやすくなったことで今の流行に至るわけですが、マチンは2015年の時点で既にハーフコートマンツーマンを採用していました。

おそらく、マチンは相手にロングボールを蹴らせたかったのだと思います。相手のゴールキックの場面を想像してみてください。相手のCBは基本的にペナルティエリアの中でGKと横並びになって立っていますよね。対して自軍の選手はペナルティエリアに入って行けないので、CBは確実にフリーでボールを受け取ることができます。

しかし、彼がジローナやセビージャを指揮していた頃、味方の選手でさえゴールキックの際にペナルティエリア内でボールを受けることは禁止されていました。CBはペナルティエリアの外まで出ていなければならなかったため、プレー開始前からCBにマークをつけることができたのです。当然GKがボールを持ち出すなんてことはできませんから、GKはロングボールで逃げるしかありません。あとはここをCBが跳ね返してこぼれ球を回収することができれば、敵陣でプレーし続けることが可能になるという寸法です。

なので、マチンのチームは積極的にハイプレスに出ていくのにも関わらず、ジローナ時代はラ・リーガ内で3番目に、セビージャ時代は5番目にタックル数が少ないチームでした。また、既にセレッソで行っているサイド攻撃→クロスの練習でも、GKがロングボールを蹴ったところをCBが跳ね返してからセッションが始まっています。別に新しいボールを出して始めた方が練習の回転は早くなるのにわざわざこの工程があるということは、つまりそういうことなのでしょう。CBの空中戦や迎撃はハイプレスにおいて極めて重要な要素になりそうです。

ハイプレスを掛けられない、もしくは打開された場合は、即座にブロックの形成にシフトチェンジします。ファーストラインが中央を閉め、それでも中盤の脇で受けられる場合は最終ラインの選手が積極的に前に出て迎撃守備で潰しにいくことで、相手に中央を使わせない。そうしてボールの循環をサイドに誘導して選択肢を奪っていきます。

しかし、これがミドルブロックである内はいいのですが、ローブロックを敷く時間が長くなることはあまり望ましくありません。前提として敵陣でプレーしたいチームですし、後ろに重くなってしまうとカウンターに出ていくことが難しくなってしまうからです。先述したレストディフェンスのように保持している中でも守備を踏まえてプレーしなければならないのだから、その逆もまた然り。守備のためだけの被保持になってしまうのは、小澤さんが動画内で語っている「正しくオーガナイズされた攻撃が出来ていれば自ずと正しくオーガナイズされた守備ができる」、つまり攻守は表裏一体であるという考え方から外れてしまいます。試合を見ていても、マチンのチームがうまくいかない場合は大抵後ろに重くなってしまっていることが原因でした。昨季のセレッソも一度押し込まれると押し返せないことが課題の一つでしたが、ここをどう解決できるかが問われそうです。


システム

先ほども触れたようにマチンは3バックの信奉者で、3142と3421を好んで使用していました。きっかけはロティーナが3バックを採用していたからだということで、セレッソでは442のイメージが強いロティーナも言われてみれば2019年の序盤や2020年の終盤には3バックを採用していましたね。

基本的に、この二つのフォーメーションにそこまで大きな違いはありません。3142のIHと3421のシャドーはほぼ同じ役割ですし、3421の場合2DHの一角は比較的高めのポジションを取るため実質3142のようになるシーンも多いです。被保持の構えは当然2DHの方が固いので、より攻撃的に出たいならCFを2枚置き、守備を重視したいならDHを2枚置く、というのが使い分けの基準になっているのだと思います。3142の方が本人も気に入ってそうですが、そこは自軍のスカッドや相手とのパワーバランス、試合の状況を見ながらといったところでしょうか。

また、セビージャでは1試合だけ4231で戦っていましたが、保持になると左SBが大外高い位置まで上がって右SBが低い位置をとる3421可変式でした。アラベスやアル・アイン、アポロン・リマソールでは4バックをメインに運用していたそうですが、どのようなオーガナイズだったかは気になるところです。

大まかな戦い方は先述の通りですが、選手の特徴によって多少の変化はあります。例えばジローナ時代で3142を採用する際のアンカーはポジショニングでチームを助けられるバランサー型のペレ・ポンスで、CBが簡単にロングボールを蹴ってポンスがロングボール後のカウンターケアを担当していました。対し、セビージャ時代はボールを持ってなんぼのエベル・バネガをアンカーにコンバートして積極的にボールを引き取らせ、下から繋ぐ場面が増加。中盤でのキープ、キャリー、楔のパス、サイドチェンジまで様々なタスクをバネガがこなしていました。クラブの格というのもそうですし、ジローナではバイタリティ溢れるポルトゥがインサイドだったところがセビージャでは足下の技術に長けたパブロ・サラビアだったこと、CBの配球面も考慮しての判断なのだと思います。

アラベス時代はTMを3試合確認できたのですが、いずれも3142をベースにボールを保持しようとする傾向が見られました。ツートップはハーフレーンでレシーバーとなり、再会を果たすことになったペレ・ポンスは今度はアンカーではなく左IHで高めのポジションをとってツートップの降りる動きを補完。WBには本職WGを配置して背後へのアクション要員になっていました。CB陣も簡単にロングボールは蹴らずに下から繋ぎつつ、ライン間のハーフレーンまで届けて相手を絞らせてからサイドチェンジでスピードアップを図るやり方でしたが、公式戦ではロングボールを多用していたとのこと。TMだからこそ試したやり方だったのかもしれませんが、チームが前年までそういうやり方だったからなのか、マチンが本当はそういうサッカーがしたいからなのかで色々変わってきそうです。

というように、大枠の考え方は同じでも設計のところはスカッド次第でかなり柔軟にオーガナイズするのがマチンのチームビルディングの特徴です。選手起用も、常に一貫していたのはCBに空中戦と迎撃性能に長けた選手、WBにスプリントを繰り返して上下動できるスタミナとクロス性能に長けた選手、CFにロングボールやクロスのターゲットになれる選手を求めるくらい。あとはクラブごとに最適な組み合わせを模索していました。おそらくセレッソでは栃木シティ戦でも使用した3421をメインに運用していくのではないかと思いますが、どのようなオーガナイズになるのかは始まってからのお楽しみ、ということで。


編成

GK:中村航、阿部、上林、イシボウ

基本的にゴールキックの際には全体を押し上げてロングボールを蹴りますし、流れの中でもCBに下げてもらったボールを前に蹴り出すことが過去のクラブでは多かったですが、トレーニングをみてると結構GKも交えた練習も多く、アラベス時代のTMではショートパスで繋いでいたのでセレッソでは下から繋ぐことが多くなるかもしれません。中村航輔は百年構想リーグを通して非常にビルドアップがうまくなりましたし、阿部航斗は積極的にビルドアップに関わるところが売りのGKですので、いずれにしてもしっかりアジャストしてくれると思います。


CB:クールズ、鷹啄、畠中、井上、エゼモクェ、(田中)

Luan Freitasへのオファーが噂されているポジションですが、それを加味してもやはりCBの人材は不足していると言わざるを得ません。栃木シティ戦では人材不足故に登里などがHVとして起用されていましたが、エアバトルや迎撃性能を求めたいことを考えると、最低でも高さと強さがあるSBじゃないと実戦では厳しいでしょう。また、保持においてはキャリー性能が高くてサイドチェンジも蹴れる選手が理想。ハイライトにあったクールズが持ち運んで速攻の形を作り、そのままゴール前まで入って行ったようなプレーがまさに大事になってきますし、持ち運んだ場合や迎撃で潰し切った場合にその足で駆け上がって速攻の矢の一つになることが求められます。

SB勢の中ではクールズとエゼモクェがHVとして計算されると思いますが、2人とも推進力に長けており、総合力という意味でもクールズは主軸候補の1人。エゼモクェは貴重な左利きという点で他の選手と差別化ができるので、それを活かしてどこかで出番を得たいところです。これまでの起用を見る限りでは、マチンは左HVに左利きを置くことを絶対条件としているようには見えませんが。


右WB:ルーカス、阪田、奥田、中村拓、(クールズ)、(林)
左WB:横山、小見、大畑、髙橋、登里、(チアゴ)、(エゼモクェ)

今季のキーポジションと言って間違いないでしょう。先述した通り、この両WBが攻守共にどれだけ高い位置に出ていけるかがマチンサッカーの鍵。WGタイプの選手とSBタイプの選手両方が起用されますが、中村拓海は持ち前のキック精度を、髙橋はバイタリティを武器に序列を上げる可能性もありそうですし、誰がスタメンになるかが読めない激戦区です。

ルーカスはインサイドでの起用も想定できますが、リーグ屈指のクロス性能を考えるとやはりWBで使いたいところ。札幌時代にWBもマンツーマンのハイプレスも経験していますので、完全なコンディションで戻ってきてくれればこれ以上に心強いことはありません。左サイドの横山と小見は逆足WBになるので、縦突破からのクロスに加えてカットインからのシュートやインスイングのクロスを出していければ攻撃のバリエーションを増やせそう。


DH:田中、喜田、岡澤、久保、(香川)

石渡と吉野という2人の長身DHが退団したわけですが、マチンはそこまで中盤の選手に身長を求めている監督ではないのが救いでしょうか。岡澤はパパス政権なら復帰しても身長の問題で弾かれてしまいそうでしたし、喜田は実際にそうなりつつありました。そして久保は慣れ親しんだスペイン人の監督ということで、この3人が監督交代を機にどれだけスタメン争いに食い込んで来れるかどうかは見もの。また、バネガの例を考えると香川のDH起用も充分に考えられます。


シャドー:柴山、香川、上門、(横山)、(小見)、(チアゴ)、(ルーカス)、(永添)

10番タイプをはじめ、WGタイプやCHタイプ、セカンドストライカータイプなど様々な選手がこのポジションでプレーすることになると思います。キャリー、ターン、3人目のサポート、背後へのアクション、プレッシングなどは少なくとも求めたい部分で、正直中島はハマり役だったはずなのでかなり痛い流出になりましたが、セビージャ時代に獲得の話があった香川を含め選択肢としては色々ありますのでどうにかなって欲しい。上門なんかは結構刺さりそうなのと、柴山は去年との違いにアジャストできればパブロ・サラビアのようになれるはず。アルベルにリカルド・ロドリゲスとスペイン人監督の元でプレーした経験が豊富な小見も重要な存在になりそうです。


CF:櫻川、チアゴ、(上門)、(塩尻)

チアゴは今季もCFが主戦場になるでしょう。背後へのアクション、カウンター時の振る舞い、クロスの際のマークを外す動きなどはもちろんのこと、動きながらボールに合流することでDFにつつかれずにポストプレーをするのが上手いですし、昨季より間違いなくポストプレーの際の味方のサポートは手厚くなるはずなので、ロングボールの母数が増えたとしてもある程度やれると思います。

とはいえ、ロングボールとクロスのターゲットといえば櫻川の最大の長所。昨季は少なかった高いクロスボールも間違いなく増えてくるので、櫻川には昨季以上の活躍でチームの主軸になって欲しい。チアゴのCFコンバート以来いい競争ができている2人ですが、3142での共存もかなり面白そうです。


最後に

長々と書いてきましたが、確認した映像が全て6年以上前のものですし、何度も述べているように選手に合わせて最適なシステムを構築するタイプの監督なので、正直今回の内容は全く当てになりません。時間の流れやトレンドの変化に併せて、色々変化している部分もあるでしょう。

ただ、「敵陣でプレーする」「ゴールに迫り続ける」「攻守は表裏一体」「バーティカルなポジショナルプレー」といった根底の哲学は変わりないはず。選手・スタッフ共に、今までの武器は継続しつつ、新しい文化にどれだけアジャストできるか。うまくいかない中でもチーム全体に前向きに発信できるロティーナ期の清武のような存在が出てくるかどうかは重要になりそうです。

クラブ史上最高位となる3位になった次のシーズンオフにこうなってしまったというのは残念でなりませんが、その一方で新たな楽しみも生まれたのもまた事実。ここからのチームの成長に期待です。


参考

Girona 14/15 vs Real Zaragoza
https://www.youtube.com/watch?v=_SBnNgzi3VI
https://www.transfermarkt.jp/spielbericht/index/spielbericht/2478372

Girona 15/16 vs Mirandés
https://www.youtube.com/watch?v=iE99GPBgFzk
https://www.transfermarkt.jp/spielbericht/index/spielbericht/2595152

Girona 15/16 vs Cordoba
https://www.youtube.com/watch?v=qjXI30skT98
https://www.transfermarkt.jp/spielbericht/index/spielbericht/2696717

Girona 16/17 vs Elche
https://www.youtube.com/watch?v=Tce5NQXOPfY
https://www.transfermarkt.jp/spielbericht/index/spielbericht/2732972

Girona 17/18 vs Athletic Club
https://www.youtube.com/watch?v=fWlZ2vbC7N8
https://www.transfermarkt.jp/spielbericht/index/spielbericht/2899573

Girona 17/18 vs Barcelona
https://www.youtube.com/watch?v=xMhchlXVRfk
https://www.transfermarkt.jp/spielbericht/index/spielbericht/2899605

Girona 17/18 vs Getafe
https://www.youtube.com/watch?v=N_9_mEiI9oM
https://www.transfermarkt.jp/spielbericht/index/spielbericht/2899701

Girona 17/18 vs Atletico Madrid
https://www.youtube.com/watch?v=2b-oLfs6Tjk
https://www.transfermarkt.jp/spielbericht/index/spielbericht/2899734

Girona 17/18 vs Real Madrid
https://www.youtube.com/watch?v=ZaxYQyx4X-o
https://www.transfermarkt.jp/spielbericht/index/spielbericht/2899815

Girona 17/18 vs Levante
https://www.youtube.com/watch?v=wR7s1rUN4F0
https://www.transfermarkt.jp/spielbericht/index/spielbericht/2899831

Sevilla 18/19 vs Getafe
https://www.youtube.com/watch?v=PrWqglIqj7Y
https://www.transfermarkt.jp/spielbericht/index/spielbericht/3079379

Sevilla 18/19 vs Barcelona
https://youtu.be/RnQi4eM6vNI?si=iPUm1BQE5Oivv5KF
https://www.transfermarkt.jp/spielbericht/index/spielbericht/3079421

Sevilla 18/19 vs Athletic Club
https://youtu.be/AEyGhrDw4Lk?si=yygKrcd1T7gV7afo
https://www.transfermarkt.jp/spielbericht/index/spielbericht/3079525

Sevilla 18/19 vs Barcelona
https://youtu.be/d-JUd_ARc7Y?si=dnD2dVR-AF1cS79D
https://www.transfermarkt.jp/spielbericht/index/spielbericht/3080820

Espanyol 19/20 vs Athletic Club
https://youtu.be/tAR66ul6jKE?si=LAAsxhQ6SUIoc9hb
https://www.transfermarkt.jp/spielbericht/index/spielbericht/3208743

Alavés 20/21 vs Osasuna
https://www.youtube.com/watch?v=scF-HpUbWmM

Alavés 20/21 vs Athletic Club
https://www.youtube.com/watch?v=EivMpgkH9Ik

Alavés 20/21 vs Osasuna
https://www.youtube.com/watch?v=TbzN86hdb4I


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