生まれてくる命と、消えゆく命のはざまで|ことり日記|第一話|
夫の身体に異変が見つかったのは、 妊娠がわかった、すぐ後のことでした。
「末期のがん、余命は一年」
結婚したばかり。
お腹には、新しい命。
それなのに
夫の命は、あと一年しかない。
その時、私は母であり、妻でもありました。
生まれてくる命と、消えゆく命のはざまで過ごした、
わたしたち夫婦の最初の一年を綴ります。
幸せな新婚生活の、突然の終わり
私は結婚してまもなく妊娠がわかり、
私たちは子の誕生を心から楽しみにしていました。
「赤ちゃんが生まれたら、どこに連れて行こうか」
「名前はどうしようか」
そんな会話を、毎晩していました。
それは、何もかもが始まろうとしている
幸せな新婚生活の、はじまりでした。
しかし、その幸せは長くは続きませんでした。
ある日、夫の身体に異変が見つかり、
精密検査の結果、告げられたのは
末期のがん
すでに臓器に転移し、余命は長くて一年。
転移性の強い、末期のがんでした。
私は妊娠中。 夫は末期がん。
現実が、突然目の前で崩れ落ちていきました。
頭が真っ白になって、
何も考えられなくなりました。
「なぜ、いま……?」
「どうして、私たちが……?」
でも、嘆いていても何も変わらない。
それだけは、はっきりしていました。
母になる私、妻である私
大きなお腹を抱えながら、
私は車を運転して、毎日病院へ通いました。
夫は腫瘍を切除する手術を受け、
その後も抗がん剤治療や放射線治療を繰り返しました。
それでも、状態が良くなる兆しは見えませんでした。
新たな転移が見つかっても、
「もう手術はできない」と告げられました。
ずっと入院していたわけではありません。
体調が落ち着けば、家に帰り、
また悪くなれば、入院する。
入院と退院を、何度も繰り返しました。
病院を転々としながら、
放射線治療ができる施設や、
ターミナルケアに対応する病院へ移っていきます。
その間に私たちは引っ越しも重ね、
ほんの一年余りの間に、「生きる希望」と「別れの現実」のはざまで揺れ動き続けました。
雪の日も、雨の日も、
私は病院へ通いました。
お腹が大きくなるにつれて、
運転も、歩くことさえ、つらくなっていきました。
それでも
夫の側にいたかった。
一日でも長く、一緒にいたかった。
命がけの妊娠生活と、奇跡の出産
その途中、私は切迫流産で緊急入院するというアクシデントにも見舞われました。
自分の通院と内服も続き、不安で、不安で、たまりませんでした。
それでも、どうにか持ちこたえ、
出産が近づく頃
奇跡が起こりました。
夫が、一時退院できることになったのです。
そして、夫は病室で、私の出産に立ち会ってくれました。
私は、夫とともに、
わが子の誕生の瞬間を迎えることができたのです。
生まれてきた、元気な赤ちゃん。
「生まれてきたよ」
「会えたね」
夫は、やせ細った手で、
赤ちゃんの小さな手を握っていました。
その姿は、今も目に焼き付いています。
そして、別れのときが訪れる
幸せな時間は、そう長くは続きませんでした。
私は今度は、生まれたばかりの我が子を連れて、
夫の面会に通う日々が始まりました。
産後間もない身体。
泣き止まない赤ちゃん。
終わらない洗濯と家事。
そして、車で病院への毎日の通い。
やがて冬が来て
我が子が生まれてから、数ヶ月。夫は、静かに息を引き取りました。
私は、母になった。
そして同時に、
夫を失った
忘れられない、あの一年
振り返れば、あの一年は
「母になること」と「夫を看取ること」が同時に押し寄せた、人生で最も濃い時間でした。
悲しみに浸る間もなく、
現実は次々に動いていきます。
葬儀、手続き、育児、仕事。
でも、あのとき、
私が自分自身に言い聞かせた言葉を、今でも覚えています。
「この子だけは、絶対に私が守る」

信じることができなかった。
受け入れるのに時間がかかった。
でも
嘆いていても、何も変わらない。
ならば、前を向いて生きるしかない。
これから綴る「ことり日記」は、
あの日から始まった、母子ふたりの物語です。
悲しみを抱えながらも、
笑顔を取り戻していく日々。
あなたにも、少しでも寄り添えたら嬉しいです。
→ 第二話「余命一年の現実──祈りながら運転した、あの冬の日々」へ続くhttps://editor.note.com/notes/n5efab1e02d8b/edit/
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*追記*
この第一話を、
素敵なマガジンに加えていただきました。
読んでくださった方の優しさに触れ、胸があたたかくなりました。
本当にありがとうございます🕊️✨
❤️clutch0105 さんの🌈素敵な記事の紹介🌈
❤️天砂美佳(みかりん)@いつもありがとうさんの💐https://note.com/amasamika
印象深い記事との出会い💐ワクワクコレクション
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読んでいただき、ありがとうございます。
言葉を綴ることが、誰かの心に届く灯りになりますように。
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