なぜ金属をさわると冷たいの?温度じゃない感覚のふしぎ──身近な化学反応㊲
同じ部屋なのに、金属だけ冷たい
朝、部屋のドアノブや、机の上のスプーンをさわると、ひやっと冷たく感じますよね。でも、そのとなりにある木の机や、布のクッションは、そんなに冷たく感じない。
同じ部屋に置いてあるのだから、どれも同じ温度のはずです。それなのに、なぜ金属だけが冷たく感じるのでしょう。金属だけが特別に冷えている、というわけではなさそうです。
実はこれ、「温度」ではなく「熱の伝わり方」のお話。第7回(さび)や第8回(カイロ)で金属や熱の話をしましたが、今回は「冷たいと感じるしくみ」。厳密には物理の話ですが、身近な不思議としてやさしく解いていきましょう。
何が起きているの?
まず、大事な事実から。同じ部屋に置いてある金属も木も、実はほとんど同じ温度です。金属だけが冷えているわけではありません。
では、なぜ金属だけ冷たく感じるのか。カギは、「私たちは、温度そのものではなく、熱が移動するのを感じている」ということです。
私たちの手は、体温(36℃くらい)で温かい。この手が、手より冷たいもの(室温のもの)にふれると、手の熱が、そのものへと移っていきます。このとき、「熱がうばわれる」のを、私たちは「冷たい」と感じるのです。
ここで大事なのが、金属は、熱をとても速く伝えるという性質。金属にさわると、手の熱が一気にどんどん奪われていきます。だから「ひやっ」と強く冷たく感じるのです。
一方、木や布は、熱を伝えにくい。手の熱があまり奪われないので、そんなに冷たく感じない。
手の熱が、ものへ移る=「冷たい」と感じる → 金属は熱を速く伝えるので、熱が一気に奪われて、強く冷たく感じる
つまり、金属が冷たく感じるのは、金属が冷たいからではなく、手の熱をすばやく奪っていくから。同じ温度でも、熱の伝わりやすさが違うと、感じる冷たさが変わるのです。
逆に、熱いものは「金属のほうが熱い」
このしくみが分かると、逆のことも説明できます。熱いお湯やお風呂で、金属は「より熱く」感じますよね。
冷たいとき…金属は手から熱を速く奪う → より冷たく感じる
熱いとき…金属は熱を手に速く伝える → より熱く感じる
たとえば、熱いスープに金属のスプーンを入れておくと、柄までアツアツになって、持てないほど熱くなります。でも、木やプラスチックのスプーンなら、柄はそんなに熱くならない。これは、金属が熱を速く伝えて、手にどんどん熱を送りこむから。
つまり金属は、「冷たいときはより冷たく、熱いときはより熱く」感じさせる。熱を速く伝えるという一つの性質が、冷たさも熱さも強く感じさせているのです。鍋の取っ手が木やプラスチックでできているのは、熱を伝えにくくして、やけどを防ぐため。ちゃんと理由があったんですね。
ちょっと実験:いろいろな素材をさわり比べる
「同じ温度なのに、感じ方が違う」を、手で確かめてみましょう。
同じ部屋にしばらく置いておいた、いろいろな素材を用意します。
金属(スプーン、アルミホイル、鍵など)
木(まな板、木のスプーン)
プラスチック(下じき、容器)
布(タオル)
発泡スチロール
これらを順番にさわって、冷たさを比べてみてください。金属がいちばん冷たく、発泡スチロールや布はほとんど冷たくないはずです。全部同じ温度なのに、こんなに感じ方が違う——「冷たさは、熱の伝わり方で決まる」が、はっきり分かります。
温度計を当ててみると、どれもほぼ同じ温度なのが確かめられて、さらに面白いです。「体感」と「実際の温度」は違う、という発見は、いい自由研究になりますよ。
ひとつ豆知識:暮らしの中の「熱の伝わり方」
この「熱を伝えやすい・伝えにくい」という性質は、暮らしのあちこちで活用されています。
鍋・フライパン…熱を速く伝える金属。食材に効率よく熱を通せる
鍋の取っ手・持ち手…熱を伝えにくい木やプラスチック。やけどを防ぐ
発泡スチロールの箱…熱を伝えにくい。だから保冷・保温に使える(冷たさ・温かさを保つ)
魔法びん・保温マグ…熱を逃がさない工夫で、飲み物の温度をキープ
冬の服(セーターやダウン)…空気をたくさん含んで熱を逃がさず、体温を保つ
「熱を速く伝えたい場所」には金属を、「熱を伝えたくない・保ちたい場所」には木や空気を——と、素材を上手に使い分けているのです。金属をさわったときの「ひやっ」は、金属が熱をよく伝えるという、料理でも大活躍している性質の裏返し。次にドアノブでひやっとしたら、「冷たいんじゃなくて、熱が奪われてるんだな」と思い出してみてください。
まとめ
金属が冷たく感じるのは、金属が冷たいからではない(室温は木も金属も同じ)
私たちは「温度」でなく「熱が移動するの」を感じている
金属は熱を速く伝えるので、手の熱を一気に奪う→強く冷たく感じる
逆に熱いときは、金属は熱を速く伝えるのでより熱く感じる
この性質は、鍋・保冷箱・魔法びんなど暮らしで活用されている
次回の「身近な化学反応」もお楽しみに!
