ドラマ「マイダイアリー」第7話の感想
■「フィルムカメラと人生の日記」
第7話は、全く想定していなかったトムさんメインの回、そして「人生の日記」の謎が明らかにされる回だった。
これまでのストーリー、そして今回の予告編から予想した内容は当たったのもあり、そうでなかったものもあったが、概ね想定の範囲内だった。
怒濤の伏線回収の回でもあり、かなり情報量は多め。
ただ、何を考えているか分からない謎の女トムさんが泣くなんて思ってもみなかった。
しっとりと情感あふれる話で、過去から未来へ、いろいろなものがつながっていく話だった。
■謎の女トムさん
トムさんは謎の女。
普段何をしているかドラマの中では全く示されていなかった。
カレーを作った、スイカを間違って10個注文したぐらいの情報しかないが、仕事をしている雰囲気はまるでない。
前回になって、タトゥー設定やら、優希の母との関係匂わせシーンが突然出てきて、次回の伏線かなと思っていたら、そのとおりだった。
競馬については伏線未回収。競走馬に「マイダイアリー」という名前の馬がいるってだけじゃないよね、まさか。
もしかして競馬で生活していたプロ?
第5話で、トムさんが優希の母の遺灰に手を合わせながら「ごぶさたしてます。なんとか元気にやってます」と言っていたので、トムさんと優希の母は知り合い設定かなと思っていたが、具体的にトムさんが優希の母とどう知り合って、最終的に優希の隣人になったのかが気になっていた。
そして、優希らの5人と同様に、トムさんの「告白」がある。
○トムさんはバイク乗り(トムさんがライダースジャケットを着ていたのはそういうことか)で、2月の雪の中静岡方面にひとりでツーリングに出かけ、大コケして大けがして入院。
○入院先の病院で、同じく入院していた優希の母と知り合って仲良くなる。
優希の母が退院しても、会う仲になる。
○しばらくして優希の母からトムさんにまた入院したという連絡があり、トムさんがお見舞いに行ったら、優希の母の容態はかなり悪い状態だった。
○優希の母から、トムさんに2つの頼み事をされる。
○トムさんは、優希の母が亡くなったことを知り、葬儀会場までは行ったが、葬儀会場へは入れなかった。
ということがトムさんの口から語られる。
トムさんは、優希の母と出会う前から首からフィルムカメラをぶら下げている。
この時点でフィルムカメラを持っていたということは、左腕に虎のタトゥーを入れて他人を威嚇していたトムさんの心境に変化が出ていたのだろう。
虎のタトゥーにまつわるエピソードについては、短い回想シーンながら、トムさんと優希の母の人柄、その時の心情がうまく表現されていると思う。
トムさんが優希の母に心を開きかけているからこそ、「ひとりでいるのはかわいそうなんかじゃない」ということを優希の母に話したのだろう。
虎のタトゥーにうんちを書き入れて、トムさんを柴犬扱いする優希の母は、茶目っ気がきいて、あたたかい。
優希の母の退院後、トムさんと一緒にプリクラを撮る回想シーンは、優希の母と撮ったプリクラが、「誰かとうれしそうに写真に写る自分を見るのは初めてで、なんだか恥ずかしかった。でも悪くなかった。」という語りにちょっとぐっとくる。
ここまでは、ドラマ的な展開ではあるが悪くないと思っていたのだが、その後が行けない。
優希の母が、トムさんに優希のことを見守ってほしいとお願いするのはまあよしとして、優希のことを見守る方法がわからず、優希が住まい探しに東京へ向かう電車に同乗して、優希に話しかけて、ふたりで不動産屋へ行き、同じマンションの隣室を借りるというのはさすがにやりすぎというか、ドラマだとしても都合がよすぎる。
優希の母から優希のことを頼まれたときに、トムさんは優希について教えられたとしても、優希が東京の大学に進学を決めたのは、優希の母が亡くなった後だ。
優希が住まい探しに東京へ向かうことをどうやって知って、その電車にどうやって同乗したのか。
考えられるのは、トムさんが優希が大学に進学する前の2月ぐらいから恩の湯を張り込んで、優希をストーキングでもしない限りありえない設定になっている。
まあ、このあたりの設定の奇天烈さについては、脚本家も承知の上なのかもしれないが、優希の母のお願いがトムさんをストーカー行為に走らせたともいえるので、よい設定とはとても言えない。
■なぜ優希の母は優希のことをトムさんに頼んだのか
優希の母が姉妹のうち妹の優希のことを「特に」心配していたのはよく分かる。
姉の優見はお姉ちゃんだし、しっかしりしているから妹ほど心配していないというのは、第6話でしっかり姉の性格や行動が示されているので、ちゃんと理解できる。
一方妹の優希の方は、「やさしさに不器用」というだけではなく、優希がまだ高校生で、母としては自分が亡くなった後のことを心配するのは当然と思うような性格だというのも、よく分かる。
大学生になった今でも、相当危なっかしいところがある。
その優希が「もう大丈夫ってなるまで」の見守りをなぜトムさんに頼んだのかという点が今回のひとつのポイントとなっている。
そのことを頼めるのが「心友」であるトムさんしかいなかった、トムさんの性格、行動を分かった上でトムさんならやってくれると思ったというのは当然として、その他にもトムさんでなければならない理由があったのだろうか。
優希の母がどのような見守り方を考えていたかは分からないが、トムさんがどうやって優希のことを見守っていいか分からなくなっているのをみると、具体的な方法まではトムさんには言っていない。
優希の母は、見守り方をトムさんに考えてもらおうとしていたのではないだろうか。
優希の母にしてみれば、優希のことを見守ってほしいとはお願いしたが、優希の隣の部屋に住めとまでは言っていないので、そこまでしたのはトムさんらしいと笑っているかもしれない。
トムさんがいかに人の懐に飛び込むのがうまいとはいえ、見知らぬ女性が電車の中で声をかけてきて、東京の同じ場所に住まいを探しているという話を疑いもせず、一緒に不動産屋に行って、同じマンションの隣人になってしまったことを「出会いも不思議」としか思っていなかった優希も優希らしい。
「そんなことある? 偶然に見せかけた必然だったりして」と思う広海は極めて常識的だ。
本当に優希は詐欺に引っかからなくてよかった。
優希の母は、自分が亡くなった後の娘と「心友」に同じような危うさ、なかなか前に進めずにいる姿を感じ取っていたのかもしれない。
優希が影絵で作ったカニのように、トムさんが影絵で作ったカタツムリのように。
広海にとって同じギフテッドだった克弥が鏡だったように、トムさんの鏡として優希を見させることによって、自分自身のことを見つめて、前に進んでほしいと思っていたのだろう。
(それにしては、お願いの仕方がちょっと雑だったような気はする)
■なぜトムさんは優希に「人生の日記」を託したのか
トムさんが本当のことを優希に「告白」するのをためらっているのはよく理解できる。
それはまるで、遺灰のことを姉に言えずにいた優希と同じだ。
そうしなければならない事情があったとはいえ、優希に対して4年間大事なことを黙っていたのだから。
それを優希に言ってしまえば、優希が怒るかもしれない、優希に嫌われるかもしれない。
そんなふうに優希にされるのが辛くて、何も言わずに優希の前から姿を消そうとしていたものの、自分が手放したはずの優希の母との思い出の詰まったフィルムカメラが優希の手元にあるのを見て、偶然とは思えない必然的な縁を優希と優希の母に感じたのだろう、「割と大事な話」を優希にする決断をする。
フィルムカメラというのが今回のキーアイテムになっているのが、フィルムカメラはフィルムカメラでも、そのカメラは1960年代に発売されたリコーオートハーフSEである。
この機種を選んだのは、演出サイドだと思うが、とてもよい選択だ。
撮影に使われたこのカメラは、今でも写真が撮れるのだろうか。
このクラシックなカメラが、トムさん→喜田教授→遥斗→優希と渡っていくのも、またいい。
遥斗親子の出番がもう1回ぐらいあるかなと思っていたら、とてもよい流れで登場してよかった。
幸せになるカメラを喜田教授からもらった遙斗が、そのカメラを自分で持っているのではなく、「この人に幸せになってほしい」という思いで渡したのが優希先生というのには、思わずほろっとさせられた。
トムさんは自分がつけていたフォトダイアリー、フィルムカメラで撮った写真の裏に書いた「人生の日記」を優希に見せる。
そこに収まっていたのは人ではなく「もの」、優希の母との思い出が詰まったアイテムだった。
日記なので、日付が入っている。
1枚目:半分に切られたいちご大福 2月22日
2枚目:うんちが書き加えられた虎のタトゥー 4月7日
3枚目:プリクラ写真機 5月12日
4枚目:初めて買った喪服 5月21日
トムさんの話と突き合わせると、4枚目3枚目が撮られた同じ月の写真ではなく、その翌年に撮られたものということになるだろう。
その写真を撮ったカメラは今優希の手元にある。
トムさんが優希に言いたかったのは、自分がつけていた「人生の日記」を優希にもつけてほしいということだった。
大切なものが無限に、永久に自分の手の中にあるとは限らない。
優希が母を失ったように、想定外に大切なものを失うことがある。
その喪失感、悲しみに、大切なものに出会って、ともに過ごした時間の幸せを上書きされないように、記録と記憶に残しておいてほしい、ということになるだろうか。
そうしておかないと、有限だけど確かにあったはずのものを見失ってしまいがちだから。
そうすることで、トムさんにとって優希の母との出会いがどれほど大切なものだったかを優希に伝えたかったのだろう。
「その人の思い出の中で、心に残ったものを写真に撮るの」
「大切な人に既に出会ってるなら、思い返すだけでもいいと思う」
「私はこの人との思い出の中で、何回心のシャッターを切ったんだろうって」
もう既に大事な人に出会っている優希は、アイテムたちをリストにする。
ポップコーン、絆創膏、あくび、似顔絵、くつ下、手、フィルムカメラ
写真には撮れていないそのアイテムたちにまつわる出来事を日記にしたのだろうか、それともその日のことを思い出しているだけなのだろうか。
「自分で持っていてもいいし、誰かに渡していい」と言われたフィルムカメラだが、優希は誰にこのカメラを渡すことになるのか。
やっぱり広海なのかな。
そうなったら切ない展開しか考えられないよな。
「心のシャッター」とは割と言い古された言い回しだ。
これを聞いて思い出したのは、映画「青春18×2―君へと続く道―」の1シーン。
とても印象的で、重要なシーンでこの言葉が使われている。
第3話の最後で、優希が広海の肩に頭ももたれて寝てしまうシーンがあったが、これもドラマ「霊媒探偵城塚翡翠」にあるシーンだ。
広海の告白で手を握ることといい、清原果耶が出演した映画やドラマのオマージュがこのドラマに散りばめられているような気がする。
■優希はトムさんの「告白」に何を思ったのか
トムさんの「告白」を受けての優希の反応にとても興味があった。
優希は、トムさんに対して怒りもしないし、気持ち悪がったりもしない。
何か不思議そうな顔をしている。
トムさんの「人生の日記」の3枚目のプリクラ写真機の写真に関連して、恩村家の回想シーンが出てくる。
優希の母が「心友」とのデートに着ていく「写真映えする服」について、娘たちに相談しているシーンだ。
優希の母が退院した直後だから、優希の母が亡くなる前年で、優希が高校2年生の5月。
優希は勉強しているが、優希の姉優見は本を読んでいる(お姉ちゃんは読書家らしい)。
ふたりは半袖Tシャツ着ていて、優希は学校指定っぽいジャージパンツを履いている。
母が着ていく服のうち、シャツを優希が選び、ズボンを姉が選んだ。
優見と優希の姉妹が年子なら姉の方は高校3年生だが、見た感じは少し年が離れているように見えるので、姉はこの時点で高校を卒業していたのだろう。
姉が実家にいると言うことは、大学に実家から通っていたのか、もうすでに信用金庫に勤めていたのか。
服装からすると、学生っぽい気がする。
このシーンは、母と姉妹の関係、母の生前の姉妹の関係を示している。
優希が母の遺骨を持ち帰ったことになぜ姉があんなに怒ったのかということについて、前回いろいろと推測していたが、その中で妹に対する姉の「嫉妬」があったのではないかと書いたが、ここでもそれが少し垣間見える。
母は姉妹のうち、妹の優希について「特に」心配していた。
父を一人残すことはせず、高校卒業後も実家に残った姉が、実家を離れ東京の大学に行ってしまった妹に「嫉妬」のような感情を持っていたとしても不思議ではないだろう。
優希が6年近く前の日のことを覚えていたのは、母の言った「心友」という言葉と、その「心友」と会う母の楽しげな様子が印象的だったのだろう。
母の生前の様子を思い出すとともに、トムさんとの縁を新ためて感じた優希がもう少し感情的になっても良さそうな場面だが、優希は意外の冷静だ。
そして「トムさん、次の一歩の前に足踏みしてるんじゃないですか」と言う。
優希の母が、虎のタトゥーを入れ他人を威嚇しながら、ずっとわざとひとりになることで自分を守って生きてきたトムさんの孤独を見透かしたように、優希は、他人を拒絶していた過去の自分、「心友」の死から何とか前に進もうとしていたトムさんの気持ちを言い当ててしまう。
さすが自分の気持ちよりも他人の気持ちを慮る「やさしい」親子だ。
この後の優希の言葉が意外だった。
「私はもう大丈夫です。」
この場面で優希がトムさんにかける言葉としては満点以上だ。
優希のことを「もう大丈夫ってなるまで見守ってほしい」といった優希の母の言葉、そしてそれを言った「心友」の死からの解放を意味するからだ。
そして、優希のことを見守ってきたこの4年が無駄ではなかった、トムさんが次の一歩を踏み出すまでに必要な時間だったことを伝えている。
これを聞かされたら、いつも斜に構えているトムさんも泣いてしまう。
母の死に向き合えなかった優希を4年も見守り続けたトムさんの背中を、今度は優希がそっと押す。
トムさんが優希について母の思いをつないだように、優希がトムさんのついての母の思いをつないだ。
自分の連絡先を優希に教えるシーンがあるのは、卒業後優希が本当に悩んだときにトムさんに「1回ぐらいは」電話することがあるからなのだろう。
卒業後にトムさんに優希が電話する内容とは?
それにトムさんがどう答えるのか興味がある。
ここまででかなりの伏線が回収され、謎が明かされた。
ただ、新たな伏線らしきものも出てきた。
フィルムカメラがなかったときは、「心のシャッター」を切ればよかったが、手元にトムさん愛用のフィルムカメラがあるのに、優希はまだ1枚も写真を撮っていない。
「楽しい思い出も、つらい思い出も、こんなふうに」写真に撮って日記にしてほしいと言ったトムさん。
トムさんの「人生の日記」最後の写真は、初めて買った喪服だった。
実際の写真はまだ1枚もない優希が、そのフイルムカメラで撮る写真は楽しい思い出にまつわるものなのか、それとも悲しい出来事なのか。
次回の予告編を見る限りは、トムさんと同じようになってしまいそうな予感がする。
■広海の嘘
業後の優希と広海の関係に多大な影響を与えてしまいそうな広海がついた嘘。
広海はなぜ優希に嘘をついたのだろう。
教授には素直に自分の気持ちを話しているのに。
「僕には大切な人がいて、離れるってどうなるんだろうと考えてしまって」
「正直怖いです。一度負けた場所に戻るっていうのは」
「僕は、もうひとりきりになりたくないんです」
特に、最後の一言を優希に対してなぜ正直に言えなかったのか。
自分の気持ちより相手の気持ちを優先してしまうのは、広海だけじゃなく優希も同じ。
本当のことを話せば、優希が数学命の広海の足かせになっているのではないかと思ってしまうのを避けたかったというのは理解できる。
でも、自分の大切な人に悲しい思いをさせたくないというのは、自分への言い訳で、自分の弱さをもはや晒したくなかったのではないか。
言い方を変えると、自分の弱さを相手に晒して相手がそれを受け入れてくれる自信がなかった、そこまで相手を信頼していなかったとも言える。
お互いが我慢していることをお互いが分かっている状況は、お互いが辛い。
お互いが我慢しなくなってしまうと、今の関係そのものが成り立たなくなってしまう。
日本にいて大学院生として過ごしていても数学の研究はできるだろう。
それはあくまでも学生としてであって、アメリカからのオファーは研究者としてのオファーだ(たぶん)。
広海が経済的にも独立した「大人」になれる機会を「優希のために」自ら手放してしまった。
このことを優希が知ってしまったらどうなるかまで広海は考えなかったのだろうか。
遺灰をまいたと言って持ち帰ってしまった優希と似たような状況。
相手を傷つけたくないというのは自分の言い訳で、ほんとうは自分が弱いからそれを隠すために嘘をついた。
相手が本当のことを知ってしまったときは、相手との関係が悪くなる。
血縁関係はなくすことは出来ないが、知り合って2年あまり、付き合い出して1年と少しの恋人同士の関係にひびが入るには十分な嘘だ。
このやさしすぎるふたりならなおさら。
学生のままなら通じていたかもしれない「やさしさ」が、大人になると、大人になろうとすると、すれ違ってしまう。
5人が卒業した7回でこのドラマは終わりと考えていた人もいたようだが、むしろこれからが本番。
このドラマのテーマのひとつは「大人になるということ」だからだ。
■虎之介
冒頭にあった虎之介のバイト最終日の場面は、ほほえましい。
広海の「うちの虎之介がお世話になりました」からの、虎之介の「うちのおかんか」と言いながら広海の足を踏もうとするシーンは、そんな冗談が広海の口から出るほど虎之介と広海が打ち解けたことが分かるシーンで、ほっこりする。
また、なんだかんだ言って、虎之介の相談相手が愛莉というのもいい。
まひるの傍にいたら、あまり恋愛体質ではないっぽい虎之介でも好きになっちゃうのはやむを得ない。
虎之介と愛莉のコントみたいな会話も卒業までかと思うとちょっと寂しい。
結局、虎之介はまひるにはっきりと告白しなかったが、卒業後にこのふたりがどうなるかも気になる。
■5人の卒業
5人の卒業後のシーンが描かれているが、切なさよりも未来の希望にあふれた明るい雰囲気で描かれている。
今まで重い表情が多かった優希の表情のこの明るさよ。
清原果耶は、卒業式のシーンで思い切りかわいい優希を演じている。
初回冒頭のシーンとは、まるで別人だ。
女性3人の卒業式の衣装も、3人の個性が出ている上にそれぞれ似合っていて眼福である。
清原果耶の卒業式用の袴姿を見たのは初めてかもしれない。
男性ふたりのスーツ姿もかっこいい。
卒業式後の5人が仲間で楽しく過ごす様子にかぶせられる優希のナレーション
「子供でいられる最後の日を終えたあの日から、私たちは少しずつ大人になった。」というのは、大人になってその時を振り返ったことのある人なら、誰しも思ったことがあることだ。
次回の予告編を見てからだと、このナレーションが余計に切なく聞こえる。
■次回は卒業後の話
次回が最終回かと思っていたが、そうではなかった。
優希の「人生の日記」も今回で終わりかと思っていたが、2か月前のハッピーとは言いがたいことも「人生の日記」の一部なので振り返りの対象になっている。
今回は、お題がフィルムカメラだっただけに、エンディングのマイフォトダイアリーが復活。
優希の母とトムさんのプリクラも入っていた。
そのマイフォトダイアリーにワイプで流された30秒版の予告編は、突然現れた優希の恋敵(?)の内容が中心だった。
天真爛漫で、明るく、積極的な、アメリカ時代の広海の知り合いの女性は、広海以上の「数学の天才」で、広海がアメリカにいるときに「お世話になった」人らしい。
その知り合いの女性は、自作の数学の問題を「ギフト」として広海に渡す。
その女性と楽しげに数学の話をする広海を見つめる優希。
優希は、立ち止まっていた広海の背中を押し、広海は前を向くことができた。
一歩前に踏み出した広海は論文を書き、その論文が評価され広海は表彰を受ける。
その内容が全く理解できていないはずの優希は、自分が背中を押した広海が論文を完成させ、その論文が評価されたことがうれしいのだ。
広海の表彰式に出席して、うれしそうな優希。
広海を一番理解しているのは私、広海を支えてここまでにしたのは私という自負が、優希の心のどこかにあったように思う。
しかし、この女性の出現によって、その自負はあっさりと折られてしまった。
優希の知らないアメリカにいるときの広海が、広海の核でありながら優希が触れることさえできない数学という領域で、広海自身が「お世話になった」と認める人がいて、その人は優希が決して広海に贈ることができない「ギフト」を持ってきた。
しかも、その人は、優希と同い年の女性。
その事実に気圧された優希は、今まで感じたことのない疎外感と嫉妬を感じたことだろう。
すくってもすくっても、次々と浮かび上がってきてしまう芥のような負の感情に優希は戸惑っているように思える。
さらにえげつない脚本、演出だと思うのは、その女性を優希とは真逆の明るく開放的な性格にしている上に、ミニスカートを履かせていることだ。
優希の着ている服はずっと地味。
私服ではデニムパンツを履いていることが多く、就職してからは真面目な先生という感じの服を着ていて、夏でも肌を露出するような服は着ていない。
優希と広海は付き合い始めて1年以上経っているが、奥手のふたりはおそらくキスをする以上の関係にはなっていない。
「少しずつ大人になった」はずなのに、男女の仲という点では、子供じみた関係のまま。
広海との関係で、他の女性と自分とを比較することすらなかった優希にとって、「女」の部分で明らかに見劣りを感じる女性の出現は、心がざわつくというレベルを遙かに超える動揺を優希に与えたと思う。
優希の心が今までなかった乱れ方としているときに、広海の「やさしい」嘘が分かったならば、ふたりの関係にひびが入るのは当然だろう。
60秒版の予告編では、これに加えて、卒業してバラバラになりつつある5人の関係が映し出されている。
予告編の冒頭で
「子供でいられた最後の日が終わったあの日から、私たちは少しずつ大人になった」
という優希のナレーションが入っている。
次回のサブタイトルは「ギフトとじぶんの役目」。
「大人になること」がどういうことか説明しようとするなら、そのひとつは「大人は自分の役割、役目をしっかり理解して、その役割を果たそうとする人だ」ということができるの出はないかと思っている。
一方で、10時さんのように「大人になっていうのは、生きてるふりがうまくなるってことだよ」と思う人も出てくる。
優希が教師となってからの、「教師として」の役目と優希自身の「やさしさ」との葛藤も次回描かれるようだ。
5人の関係は、大学生の時なら理由などなくても5人で集まっていたのに、就職して、みんな自分のことで忙しく、5人で集まる「口実」を作らないと集まることさえ難しくなってしまっているようだ。
5人が広海の表彰祝いで、卒業後初めて集まったのに、広海が「僕が嘘をついたから」と言っていて、なんか深刻で、暗い雰囲気。
「いつからこんなにバラバラになってしまったの?」という優希のセリフが切ない。
そして、第1話冒頭のあのシーンが映し出された。
ずっと疑問だったのは、これまでドラマに出てきた卒業後のシーンの時系列だ。
その服装とセリフの内容から判断するに、第1話から時系列順に並んでいると思われる。
次回予告編にあったとおり、10月ぐらいに広海が表彰されて、5人が集まったところから、第1話冒頭のふたりが映画「フライングシャーク」の続編を見に行くシーンに繋がると自然な流れだ。
気まずくなった関係をなんとかしようと、ふたりで初めて見に行った映画の続編を見に行ったが、2年前とは違って、すれ違うふたりの思いを改めて思い知っただけで、優希はあまり広海と目を合わさずに、別れた後に泣いていた。
そこからは、広海に対する優希の態度の異変を敏感に感じとった友人たちが心配して「徳永君と別れちゃったの?」ということになったと理解すると辻褄が合う。
清原果耶が「このドラマの要」といい、吉川愛も「とても重要なシーン」といっていた第1話冒頭のあのシーンがついに次回出てくるらしいのが、その時期によってはこのドラマの景色、見え方が大きく変わる可能性があるので注目している。
そして、愛莉が12月から数か月間東京にいる、つまり5人が東京に揃っているという設定なので、春頃までの数か月間が最終回で描かれるのだろう。
そして、優希の手元にあるフィルムカメラの伏線も回収されるはずだ。
(優希はトムさんに電話するんだろうな。)
次回は、優希が大学卒業後初めて迎えるクリスマスの頃からその2か月前を振り返る構成になっている。
2年前の冬に、優希と広海はくつ下の片方を交換した。
次の年、恋人となって初めてのクリスマスは、ふたりでギフトを交換し合ったのだろうか。
そして、ふたりが出会って3回目のクリスマスシーズン、優希は広海にどんな「ギフト」を贈るのか、贈らないのか、それとも贈れないのか。
「少しずつ大人になった」優希が、広海の嘘が分かった後、広海に対する「じぶんの役目」をどう考えて、どう行動したのかが描かれるのだろう(これまでのシーンで優希の考えていることは、ほぼ見えてしまっているが)。
優希と広海にとって、切なくて、ほろ苦いクリスマスになりそうな展開だ

