朝には置けないピアノ
ビル・エバンスが流れる。
雨に合うかどうかは、
分からない。
ただ、
朝には合わないと感じた。
スタジオには、
窓がない。
外の様子は、
数字で届く。
このあと、
雨が降るだろう、
と伝える。
時間は、
言わない。
強さも、
触れない。
必要なのは、
夜が続くという感触だけだ。
ピアノは、
前に出ない。
音と音のあいだに、
余白がある。
その余白に、
街が入る。
歩いている人。
立ち止まる人。
店の奥で、
グラスが置かれる音。
誰かは、
それを聞いていない。
それでも、
音は流れる。
朝になれば、
きっと違う音が選ばれる。
そのことを、
確かめる必要はない。
夜は、
まだここにある。
