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「僕は絶対に逃げる」という約束が自分の大切な人を守る 「人が死なない防災」から学んだこと

「次の津波が来たとき、君たちはきっと逃げるだろう。でも、君たちのお父さんやお母さんはどうすると思う?」
子供たちの顔が、一斉に曇ります。

「人が死なない防災」(著者:片田敏孝)」から引用(P.90)



片田敏孝先生が書かれた「人が死なない防災」にある文章です。
初めてこの文章を読んだとき ドキッ としました。


わたしは生まれてからの約30年間、被災したことがありません。
阪神淡路大震災のときに震度5を経験したようですが、幼かったので記憶もなく、揺れただけで特に被害はなかったようです。
東日本大震災の時は西日本にいたので被害はなく、ただただニュースに映る映像を毎日見ていました。
熊本の震災も能登半島の震災も同じです。
災害=日本にいればいつかは経験するもの、と頭では理解していても、どうしても他人事のようにしか思えませんでした。


どこか遠くで起きていると思っていた災害。

それが、前よりも自分事として考えるようになった出来事があります。
それは、出産です。


子供が生まれてからは、緊急地震速報が鳴り響くたびに「どうしたら災害時にこの小さい子供と生き延びれるんだろう」と考えるようになりました。
一方で、何をどうしたらいいか分からず、ただただ災害を怖いものとして感じ、何も踏み出せずにいました。

そんなわたしが防災について真剣に考え、取り組むきっかけになった本、それが「人が死なない防災」です。
家族と生き延びるためにはどうしたらいいのか、を考えていたわたしは、この本を読んで引き込まれました。
防災スキルではなく、災害への向き合い方を学ぶことができたのです。


この本は防災のマニュアル本ではありません。
日本人として災害にどう向き合っていくかを学べる良書です。

今日は3月11日ということで、こちらの本を紹介したいと思います。




「釜石の奇跡」をご存知でしょうか


東日本大震災で東北地方の沿岸部は津波の被害を受けましたが、釜石市の小中学校の児童・生徒の99.8%が無事だったことから、このように呼ばれるようになりました。


片田先生は防災を専門とした大学教授であり、8年間、釜石市で防災教育に取り組んできました。この本では、釜石市での防災教育とその背後にある問題意識がまとめられています。


片山先生曰く、防災の最優先は「人が死なないこと」
特に「津波は避難すれば助かる」という考えのもと、地域の未来を担う子供に対し、災害時でも主体的な判断や行動ができるよう防災教育を行ってきました。

とても勉強になったのが、「災害は常に想定を超えていく、だから『これでいい』ではなく、その時の状況で最善の選択をする」という教え


東日本大震災の時、釜石市の小中学生は避難場所を3回移動しています。
一次避難所で崖崩れの予兆に気付きニ次避難所へ、ニ次避難所にも津波が迫り、さらに高台へ避難しました。

本当にギリギリのところで生き延びることができたのです。それは、中学生が「先生、ここは危ない。次へ行こう」と言った、この一言に始まったと思います。

「人が死なない防災」(著者:片田敏孝)」から引用(P.70)


これは、子供たちが主体的に判断・行動した結果であり、ハザードマップを信じて規定の待機場所にいたら、助かっていなかったようです。


1番の学びは、「必ず逃げる」その約束が自分だけではなく家族も救うということ


冒頭に引用した片田先生の問いかけに対し、生徒が答えた言葉が以下です。

「お父さんやお母さんは、僕を迎えに来ると思う」
迎えにくるとどうなるか、ということに子どもたちの思いは及ぶわけです。

「人が死なない防災」(著者:片田敏孝)」から引用(P.91)


だから、子どもたちの顔が曇ったのです。
自分を助けにきた親が被災してしまうかもしれない、そう思って子どもたちは親の身を案じたのです。


その時、片田先生は、「自分は必ず逃げるから、お父さんとお母さんも必ず逃げてほしい」と親に伝える宿題を生徒に出しました。


そして、親御さんたちにこう伝えたようです。

お子さんたちは、家に帰ったら、一生懸命『僕は逃げるから』と言ってくると思います。
その背景はどういうことかを説明します。
子どもたちは、お母さんの命を心配しています。
自分は逃げるつもりだけど、お母さんは僕のことを迎えにきてしまう。
そうすると、お母さんはどうなってしまうだろう。そこに思いが及んでいるのです。
だから、茶化さないで、ちゃんと正面を向いて、子どもたちと向かい合って、話を聞いてやってください。

「人が死なない防災」(著者:片田敏孝)」から引用(P.91-92)

さらに、「お母さんもちゃんと逃げること」、「お母さんも逃げて後から必ず迎えに行くこと」を子供に伝えてほしい、と片田先生からお願いしたそうです。


この文章を読むと胸が引き裂かれる気持ちになります。
私にも親と子供がいるので、双方の気持ちが痛い程分かります。
自分のことを大切に思ってくれるが故に、危険な目に遭わせてしまうかもしれない。
わたしは被災した経験がないので、想像になってしまいますが、自分を助けるために大切な人が亡くなってしまうかもしれないと思うと、そんなの耐えられないと思うんです。
家族の絆が被災に繋がってしまうことを思うと、胸の奥がギュッと苦しくなります。


そして、「家族も避難していると思えば、子どもたちも迷わず避難しようという気持ちになれる。家族で信頼し合うことが大切。」と片田先生は仰っており、本当にその通りだと思いました。


まずは自分の身を守ることが家族を守ることに繋がる。


そんなことは思ってもみませんでした。
でも、きっと命を守るためには、家族と共有しておかなければならない考えだと思います。

どうやって防災環境を整えればいいのか、と今までそれだけを考えていたわたしにとって、これは一番の学びでした。
この考えは「津波でんでんこ」という考え方だそうですが、津波に限らない考え方だとわたしは思います。

なお、この本を読んだ後、わたしは夫や親にはひとまず、何があっても自分の身を守ってと伝えました。
わたしの子どもはまだ1人で行動する年齢ではないので、子どもには1人で逃げてとは伝えていません。
でも、もう数年もするとこの言葉を伝える必要が出てくると思います。
その時にしっかり向き合って話したいと思います。


ちなみに、震災後、片田先生が親御さんに「地震が起きた時、逃げましたか?」と聞いたところ、返答が「ええ逃げましたよ。子供は学校にいたし、うちの子は絶対逃げるもの。」だったそうで、片田先生は「ああ、よかった。」と安堵され、あの時の話を実践してくれた家庭があったんだと思われたようです。


自然の恵みを享受することは自然の怖さを受け入れること


日本は素敵な国だと思います。
海鮮物はとても美味しいし、温泉もたくさんあります。
わたしは温泉が好きなので、子供が生まれる前には温泉地によく行っていました。(特に東北の秘湯が大好きです)


しかし、自然の恵みを享受することは、自然の怖さを受け入れること。
特に自然豊かである日本では、災害から目を背けることはできません。

この本は、そういった日本人として理解しておくべき防災の考え方を学べる良書と思います。
ご自身の防災意識向上はもちろん、子供の生き抜く力を育てたい人にもお薦めです。


そして、最後に、
東日本大震災に限らず、被災され、今も向き合われている方がいらっしゃると思いますが、1日も早いご復興をお祈りしています。

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