レティシア書房店長日誌
ジン・イー監督作品「ボタニスト」
中国北西部・新疆ウィグル地区の草原を舞台に、ここに生きる少年の暮らしを静かに見つめた映画です。ジン・イー監督は1994年、舞台となった新疆生まれです。本作がデビュー作品で、75回ベルリン映画祭ジェネーレションKplus部門国際審査員グランプリを獲得しています。

新疆北部の草原地帯にある小さな村。そこに祖母と暮らす、カザフ族の少年アルシンは、他の子どもたちとちょっと違っていて、植物を観察し記録することに生きがいを感じています。ある日、漢民族の少女メイユーが顔を出します。明るく可愛いメイユーと出会ったことでアルシンは変化していきます。初恋とよべるのかどうか微妙な感情に揺れながら、二人で草原を歩き、植物を探し、目の前に広がる大自然のゆっくりとしたリズムで動き、遊ぶ日々が流れていきます。
しかし、この小さな村にも変化の波がやってきます。メイユーは上海の学校への転校が決まります。この時、村から上海まで数日かかることをアルシンは知り、見ている私たちも中国という国の大きさに驚かされます。それだけではありません。天然ガス開発が加速度的に広がり、アルシンの前を大きなダンプカーが走り抜けていきます。

少年と少女が主人公ですが、スクリーンに映し出される新疆の大自然もまた主人公です。草原、植物、風、空や大地などが、生きているような存在として映し出され、全体に精霊的な存在との対話が貫かれています。詩を語る馬、歩き出す木、大きな岩の前に座り一言も話さない、失踪したままの叔父のショットなどが、現実と幻想の間で交差します。深い森の匂い、木漏れ日、小川を流れる水、鳥やアルシンの家にいる羊たちの鳴き声が映画を支配しています。特に、夜の闇の深さと闇に浮かぶ月の姿は感動的でした。もしできることなら、アルシンが丁寧に作っていた植物標本ノートを手に取って見てみたい。
「私は風景をただの場所として撮りたくありませんでした。風景は感情や記憶を保存する器であり、人間の内面が外部へ現れる形だと思っています。新疆の空と大地の下に立つと、自分という存在が自然の時間の中に溶け込んでいく感覚があります。その感覚そのものを映画にしたかったのです。」と、パンフレットの監督インタビューに書かれていました。
⭐️レティシア書房ギャラリーご案内
5/27(水)~6/7(日) 「Tiny Works About Birds」Piypdani展
6/10(水)~6/21(日)「境界を渡る小舟」熊谷誠
6/24(水)〜7/5(日) Laeticroix(レティクロワ)古本・焙煎珈琲販売展
⭐️入荷ご案内
「アルテリ21号」(1430円)
小澤みゆき「リーン·インにまたね」(1100円)
「季刊日記2号 特集ー日記のくるしみ 日記と植物」(2170円)
「随風3号」(2200円)
平城さやか「ふつうに働けないから、好きなことして生きています」
(1760円)
子鹿·紫都香「キッチンドランカーの本」(660円)
「ランバーロール08」(1650円)
「仕事文脈27」(1320円)
きくちゆみこ「人といること、すさまじさとすばらしさ」(2420円)
ゆうあん「本づくり日記」(800円)
堀静香「夫は松田龍平じゃないけれど」(2200円)
あまみやうみ「どさんこ日和」(800円)
小津夜景「書庫に水鳥がいなかった日のこと」(1980円)
青木海青子「図書館、山へ分け入る」(1980円)
月と文社編「何も起きない夜日記」(1980円)
碇雪恵「そいつはほんとに敵なのか」(1870円)
植本一子「とある都市生活者のいちにち」(1540円)
佐々木里菜「近く訪れる彗星」(2200円)
「蟹ブ店番日記」pha(1090円)
能町みねこ「デッドエンドで宝探し」(2200円)
渡邊愛知「guriのぐるり」」(1980円)
テラニシシュウヘイ「喫茶結社の”読む”ラジオ·アーカイブス」(1100円)
村瀬孝生「朽ちて死ぬ自由」(2420円)
