レティシア書房店長日誌
高野秀行「酒を主食とする人々」
お酒を飲まない人には、信じられない!けど、お酒好きなら、行ってみたい!と、思うようなルポルタージュです。辺境を探検し続けている冒険家、高野秀行がTV番組「クレイジージャーニー」の取材で向かったのは、エチオピア南部のデラシャという民族がいる村です。彼らは、栄養の大部分をパルショータと呼ばれるお酒から取っているのです。パルショータは、イネ科モロコシ属のソルガムという穀物から作られる濁り酒で、アルコール度数3〜4%ですが、それを子供も大人も飲んでいるらしい。ほんまかいな?と著者と撮影クルーは、誰も行ったことのない秘境目指して旅立ちます。本書はその詳細な記録です。現地に着くまでは、探検にはつきもののトラブルが次から次へと発生しますが、なんとか到着。村の実態をつぶさに観察していきます。(本の雑誌社1980円)

「私たちが口を潤した後、子供が当たり前のようにパルショータをごくごく飲んでいた。マジか!? 日本なら小学2年生ぐらいだぞ。」
「信じがたいことだが、7歳の子供が丸一日、ビールと同じぐらいの度数の酒を500ミリリットル缶4〜5本飲んでいるようなのだ。しかも他に何も食べないし、水も飲まないという。」
本書は日本では考えられない習慣で生きている人々を、興味本位で捉えているのではありません。著者は、村の家族に入り込んで、彼らの文化を見て、聞いて、そして体験してゆくのです。
「驚くことに、毎日朝から晩まで酒を飲んでいても、生活はちゃんとまわっていた。ほろ酔いになることはあれど、へべれけになる人は(幼児を除いて)おらず、みんな、自分の仕事をふつうに行っていて、家も畑もきちんとしている。つまり、生活に支障が出ているようには見えない。」
本当に体に悪い影響はないのだろうかと、デラシャ第一病院の医師に、主食酒をどう思っているのかを聞きにいきます。彼らが一般の医学的な基準値を超えるアルコール摂取をしていることについて「デラシャ人の健康状態は他よりも良好です。」と、全く問題なしと太鼓判を押すのです。肝臓疾患や高血圧、糖尿病等、飲酒量の多い人のかかりやすい病気はどうかと尋ねると、「デラシャ人にそういう病気が多いというデータはありません。
むしろ少ないと思います。」との答え。
いや、読んでいて驚きました。そしてさらにびっくり。「病院内を見学させてもらったのだが、私は驚きを通り越して笑ってしまった。なにしろ、入院している患者が、みんな、病院で酒を飲んでいるだ。」
ここには病院食は存在しません。患者の家族が病院に食事を持参するのですが、主食が酒なので、酒を差し入れるのは当たり前なのです。先進国の考え方をひっくり返すようなルポでした。
お酒好きな人は行ってみたいと思われるかもしれませんが、重要な注意点があるようです。それは無限にいる虫に身体中を攻撃されること。帰国後もかなり大変だった様子が書かれていました。
🌟レティシア書房夏季休業のお知らせ 8月18日(月)〜26日(火)
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前田エマ「過去の学生」(1980円)
三砂ちづる「心の鎧の下ろし方」(2090円)
いしいしんじ「先生の庭」(1650円)
舟張真太郎「起きて、気をつけ、今から本屋を始めます」(880円)
向坂くじら「アイホーム」(2200円)
とら少「となりのとらんす少女ちゃん」(1650円)
藤崎殊海「あるくくらいの速さで」(770円)
ミシマ社編「新・仕事のお守り」(1980円)
バンヒロシ「言葉は私の音楽」(1650円)
劇団三毛猫座「優美な死骸の採集特装版」(8000円)
誠光社「かもがわあまいもんマップ」(700円)
藤井芳広「森の再生は僕らの再生」(1760円)
村田良平「活字を拾う」(2530円)
「本と本屋とわたしの話22」(300円)
知念満二「71年目の帰郷」(700円)
林田文果「ココロノコリ」(800円)
金原ひとみ「マザーアウトロー」(990円)
「なわない2号」(1400円)
藤井芳広「森の再生は僕らの再生」(1760円)
