映画評 劇場版「きのう何食べた?」
劇場版「きのう何食べた?」
出演 西島秀俊, 内野聖陽
観終わったあとに心がじんわり温かくなる。
料理上手で倹約家の弁護士・シロさんと、美容師で明るく人懐っこいケンジ。
二人の食卓を中心に描かれる日常は、どこか特別で、でもとても身近なもの。
美味しそうな料理が出てくる作品が好きな人にも、同性カップルの日常を自然体で描いた作品を観てみたい人にも、ぴったりの一本です。
料理上手で倹約家の弁護士・筧史朗、通称シロさん。
彼の恋人で美容師の矢吹賢二、通称ケンジ。
二人は、日々の暮らしの中で食事を作り、一緒に食べ、ささやかな会話を交わしながら穏やかに暮らしている。
そんな当たり前だったはずの日常の中で、二人は改めて「一緒にいられること」のかけがえのなさに気づいていく。
親との関係、恋人との距離感、友人の幸せ、年齢を重ねること。
大きなドラマではなく、日々の暮らしの中にある小さな揺れを丁寧に描いた作品。
誰かと一緒にご飯を食べる時間が、愛おしい。
この作品を観ていると、食事はただお腹を満たすためだけのものではないのだと感じます。
シロさんが料理を作る。
ケンジが嬉しそうに食べる。
その何気ないやり取りの中に、二人が一緒に生きてきた時間や、お互いを大切に思う気持ちがにじんでいます。
特別な言葉を言わなくても、豪華なプレゼントがなくても、日々の食卓を囲むことそのものが、二人にとって大切な愛情表現になっている。
だからこそ、観ているこちらまで、普段の食事や家族との時間を少し大切にしたくなるのです。
「わかんないけどさ、でも、誰かの嬉しいことってのは、やっぱ嬉しいじゃない」
この言葉が、ケンジという人の魅力をとてもよく表していると思いました。
他人の幸せを素直に喜べる。
人はつい、誰かと比べてしまいます。
自分にはないものを持っている人を見ると、羨ましくなったり、少し寂しくなったり。
でもシロさんやケンジは、誰かの幸せを自分のことのように喜ぶ。
当たり前のようでいて、実はそうではありません。
航のようについやっかみを口にしてしまうことも。
人生を幸せなものにしたいなら、喜べることは多い方がいい。
だったら、他人の幸せを妬むより、一緒に喜んだ方がいい。
ケンジの言葉には、そんなシンプルだけれど大切な生き方が詰まっているように感じました。
一緒にご飯を食べる。
今日あったことを話す。
相手の機嫌を少し気にかける。
誰かの嬉しいことを一緒に喜ぶ。
どれも小さなことですが、その積み重ねが人間関係を作っていく。
身近な人だからこそ、何でも言っていいわけではない。
正論を言うことと、相手を傷つけないことは別。
言いたいことを我慢する必要はないけれど、わざわざ相手の機嫌が悪くなるような言い方をしなくてもいい。
大切な人と長く一緒にいるためには、優しさと礼儀の両方が必要なのだと感じました。
この作品はこんなあなたにおすすめ
・簡単に作れる美味しいものが好きな人
・同性カップルを描いた作品に興味はあるけれど、重すぎる物語は少し苦手という人
登場する料理はどれも美味しそうで、観ているだけでお腹が空いてきます。
しかも、特別な高級料理ではなく、日常の食卓に並びそうな料理だからこそ、普段料理をしない自分でも作れるのでは? と思えてきます。
また、この作品は、LGBTQを特別なものとして大げさに描くのではなく、シロさんとケンジの暮らしを自然体で見せてくれます。
だからこそ、偏見を持たないことの大切さや、家族との関係の難しさが、押しつけがましくなく伝わってくるのです。
美味しいご飯。
穏やかな会話。
少しのすれ違い。
そして、誰かの幸せを一緒に喜べる優しさ。
劇場版『きのう何食べた?』は、観終わったあと、大切な人と一緒にご飯を食べたくなる作品です。






劇場版「きのう何食べた?」
出演 西島秀俊, 内野聖陽
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