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今週の全米アルバムチャート事情 #299- 2025/8/2付

先週末は大相撲名古屋場所で、個人的に応援していた安青錦を破って前頭15枚目の琴勝峰が見事な優勝を飾り、大いに盛り上がりました。また週明けにはクーパーズタウンイチローの野球殿堂入りセレモニーが開催。20分に及ぶ長めのスピーチでイチローが、ほぼ完璧の発音とイントネーションで英語でスピーチしたのにも感心しましたが、その内容もインスピレーションと人生訓、そして関係者への愛情を雄弁に語っていたのにも感服。更には自分のレーザービームを当時実況していたマリナーズ戦キャスターの興奮するアナウンスの物真似や、マーリンズの経営陣や自分に票を当時なかった記者をいじるコメントなどユーモアとウィットに富んだパフォーマンスも素晴らしかった。そして最後に奥様への無条件の感謝と愛情の表現。自分もそうでしたが、時に笑い、時に胸を熱くしながらイチローのスピーチを聴いていた人が世界中にたくさんいたと思います。日本人いやアジア初の野球殿堂入り、素晴らしい偉業達成を心から祝福したいと思います

"Don't Tap The Glass" by Tyler, The Creator

さて今週からチャートはいよいよ8月夏本番。8月2日付のBillboard 200の首位は先週の予想どおり、通常アルバムは金曜日リリースされるところを月曜リリースで、チャート集計期間中4日分しかポイント加算されない中、197,000ポイント(うち実売128,000枚で今週アルバム・セールス・チャート1位初登場)で堂々1位に初登場してきたのがタイラー・ザ・クリエイターの『Don’t Tap The Glass』。前作の『Chromakopia』(2024)に続き、2019年の『Igor』からこれで4作連続ナンバーワンを達成してます。タイラーももう出せばナンバーワン、という感じですね。今週UKでも初登場2位、あちらの方では2017年の『Flower Boy』以降連続トップ10、前作の『Chromakopia』は1位ですから英米共に人気が確立されてるようです。

前2作『Call Me If You Get Lost』(2021)と『Chromakopia』がそれぞれ、前者がタイラー・ボードレールというキャラで世界中を旅するというコンセプト、そして後者が自分が生まれ育ったカリフォルニアはイングルウッドのホーソーンという街を舞台に自分の半生記みたいなコンセプトで作られた、いずれもコンセプトアルバムだったのに対し、今回のアルバムはコンセプトはなし、もうただただ「ボリュームをMAXにして、踊って、動いて、楽しんで欲しいアルバム」とのこと。確かにサウンドはいつもよりエレクトロでダンスビートがかなり効いた感じで、なるほどダンスするにはもってこいかも知れません。

"You'll Be Alright, Kid" by Alex Warren

次は初登場ではないですが、今週圏外19位→5位にズームアップ、初のトップ10を決めたアレックス・ウォーレンの『You’ll Be Alright, Kid』。今回10曲のボートラを追加したバージョンをリリースしたことがストリーミング(対先週比1.5倍)、実売(対先週比95倍!)とポイントを大きくブーストして、今週73,000ポイント(うち実売13,000枚)となり、この順位に躍進してます。
当然Hot100で今週8週目の首位をキープしている「Ordinary」がこの躍進の原動力なのは間違いないところですが、今週16位には「Eternity」も初登場してきており、「Ordinary」に続くヒットとしてのモメンタムも感じられるので、このアルバム、しばらくトップ10に居座ることになりそうな気がします。

"The Essential Ozzy Osbourne" by Ozzy Osbourne

そしてこれも初登場ではないですが、先週のオジー・オズボーンの訃報を受けて、全米のファンがオジーの曲を聴き、アルバムを買ったと見えて、今週44,000ポイント(うち実売3,000枚)で先週の134位→7位という100ポイント以上のズーム・アップ、オジーの『The Essential Ozzy Osbourne』が初めてトップ10を達成してます(2003年リリース当時は最高位81位でした)。やっぱ「みんなのオジー」なんだなあ、ということを実感するようなチャートアクションですね。ただ不思議なことに本国UKでは特にオジーのベストが売れてる、という状況はないようです。いやいやそんなもん、みんな持ってるよ、ということなのかな。

USではこれがオジーに取って『The Ultimate Sin』(1986年6位)、ランディ・ローズとの『Tribute』(1987年6位)、『No More Tears』(1991年7位)、『Ozzmosis』(1995年4位)、『Down To Earth』(2001年4位)、『Black Rain』(2007年3位)、『Scream』(2010年4位)、『Ordinary Man』(2020年3位)、そしてこの間の『Patient Number 9』(2022年3位)に続く、通算10枚目の全米トップ10アルバムになりました。もちろん、ブラック・サバスでも2枚(1971年8位の『Master Of Reality』と2013年1位の『13』)あるので、それも加算すると通算12枚目のトップ10、ということになります。改めてオジーの冥福を心よりお祈りします。

"Sex Hysteria" by Jessie Murph

8位に44,000ポイント(うち実売9,000枚)で初登場、初のトップ10を決めているのは、テネシー州クラークスヴィル出身の女性シンガーソングライター、ジェシー・マーフのセカンド・アルバム『Sex Hysteria』。テネシーというとカントリーか、というとそんな一筋縄ではいかないアーティストです、このジェシーは。彼女のブレイクアウトヒットが、ディプロポロGとのコラボシングル「Heartbroken」(2023年64位)ということからも判るように、かなりヒップホップのテイストが色濃く感じられる楽曲が多くて、それを1960年代南部女性のビーハイヴ(頭に大きく髪の毛を丸く盛った髪型)スタイルで、レトロで無頼なカントリー・スタイルでやってるというところがかなり個性的。その後もジェリー・ロールとの「Wild Ones」(2024年35位)、コウ・ウェッツェルとの「High Road」(同22位)と無頼派のカントリーシンガー達とのコラボシングルで、そのイメージを確立してきている感があります。

このアルバムも、冒頭グッチ・メインのトラックをサンプリングした「Gucci Mane」(笑)と続く「Couldn’t Be Worse」、そして後半にそのグッチ・メインとのコラボ・トラック「Donuts」と、かなりヒップホップスタイルが顕著なトラックがいくつか配されてますが、「1965」や「A Little Too Drunk」、そしてシングルヒット中の「Touch Me Like A Gangster」などは、60年代南部のバーとかでレトロな格好をしたジェシーがレトロなカントリー・ロックを歌っている、という風情で、ちょっとグラミー新人賞を取った頃のシェルビー・リンを思わせるような凄みとレトロ感があります。歌声は「Ex’s & Oh’s」(2014年10位)のエレ・キングにも似てますね。引き続き要ウォッチです。

"Permission To Dance On Stage - Live" by BTS

先週に続いて今週もトップ10が賑やかです。トップ10最後の初登場は何とBTSの2021〜22年の「Permission to Dance on Stage」ツアーのライブ音源を収めた『Permission To Dance On Stage (Live)』。43,000ポイント(うち実売36,000枚)で10位に初登場しています。BTSの面々も今年いっぱいで全員兵役から帰ってくるようなので、来年再始動に向けて、つなぎの意味のリリースかも知れません。

どうやらこのアルバム、Spotifyでリリースから24時間で1450万ストリームを記録、ライブ・アルバムでは2019年のビヨンセの『Homecoming』に記録を破って、Spotify史上ライブアルバム初日のストリーミング記録をマークしたようです。内容は当然ながらヒット曲オンパレードで、割れんばかりの観客の歓声がかぶさった音源で、まあファンサービスのリリースですね。

"Magic Man 2" by Jackson Wang

ということで今週のトップ10は初登場3枚(+初チャートイン2枚)と賑やかな内容でした。一方11〜100位は初登場3枚です。その一番人気は13位に初登場してきた、香港出身のラッパー/シンガー、ジャクソン・ワングの3作目(全米チャートインも3作目で今回がキャリアハイ)『Magic Man 2』。Kポップに負けててなるもんか、というわけでもないんでしょうが、彼は全米でも安定した人気を持ってるようで、アルバムリリースごとに順位を上げて今回キャリアハイ。次作くらいはトップ10に入ってくるかも知れません。

前作『Magic Man』(2022年15位)のときにもお伝えしたように、ジャクソンは2022年に日本人として60年ぶりに「Glimpse Of Us」でHot 100トップ10入り(8位)を果たしたJoji同様、88ライジング・プロダクションの所属アーティストですが、最近では自分のファッション・アイコンとしての活動も合わせて88ライジングとは関係なく活動しているらしく、昨年もコーチェラに出演して、Kポップ・シンガーのビビと共演してます。今回のアルバムの楽曲は、前作より更に音響派っぽいコンテンポラリーR&B、という感じの楽曲が満載で、もはやラッパーというよりもシンガーですね。これ。悪くないと思います。

"The Cosmic Selector Vol. 1" by Lord Huron

続いて23位にチャートインしてきたのは、ロスのインディ・ロック・バンド、ロード・ヒューロンの通算5作目『The Cosmic Selector Vol. 1』。前作の『Long Lost』と全く同じ順位で発信したこのアルバム、前作にも増して、音響派的サウンドとビジュアルを想起させるような独特のサウンドを駆使した冒頭の「Looking Back」のような楽曲が満載。前作で初めてこのバンドに巡り合って一発で気にいった自分としては今回のアルバムは、ちょっとフォーク・ロックっぽい「Nothing I Need」や、あの映画『トワイライト』シリーズ主演で有名な女優のクリステン・スチュアートのモノローグが全編映画の一場面のようなイメージを惹起する「Who Laughs Last」など、新しい側面も楽しめそうでもうリピ確です。

もう一つ収録曲で気になっているのは、「カズ・マキノ」なる人物をフィーチャーした「Fire Eternal」。調べるとこのカズ・マキノという人物、NYベースのシューゲイザー・ポップ・バンド、ブロンド・レッドヘッドというグループのメンバーらしい。でこの曲確かにドリーム・ポップな感じで、他のロード・ヒューロンの曲ともちょっと毛色が違う感じ。先行シングルの「Nothing I Need」が5月から6週間トリプルA チャート(アダルト・オルタナティブ)の首位を取ってた時から「早くアルバム出ないかな」と思ってたので、しばらくどっぷり浸りたいと思います。

"ADHD 2" by Joyner Lucas

そして今週最後の初登場は31位にチャートインしてきた、ボストン郊外出身のラッパー、ジョイナー・ルーカスの通算3作目のアルバム『ADHD 2』。2020年のデビュー・アルバム『ADHD』(10位)の続編的位置付けのようですが、前作の『Not Now, I’m Busy』(2024年42位)がパフォーマンスイマイチだったのを受けてか、今回はエイヴァ・マックス、T-ペイン、ブラックベア、タイ・ダラ・サイン、ビッグ・ショーン、Jバルヴィン、ダベイビーといった超豪華客演陣を配してバウンスバックを図った様子が伺えます。

それだけではなく、何と大俳優デンゼル・ワシントンを担ぎ出してスキット「Denzel」で喋らせるという、「いったい出演料いくら払ったんだろう」と徹底ぶり。楽曲自体は今どきのメインストリーム・コンテンポラリーR&Bよりのトラップ・ポップなんで、これだけゲストを盛るとトップ10くらい来てもおかしくないんですが、この順位でとどまってるってことは、ジョイナー君のアーティスト・パワーもまあ、その程度ってことですかね(笑)。

ということで今週の100位までの初登場は都合6枚でした。一方Hot 100に目を移すと、冒頭でも触れたようにアレックス・ウォーレンの「Ordinary」が8週目の1位をキープしてるんですが、『KPop Demon Hunters』の勢いは収まる様子がなく(うちの末娘もこの間アニメを観てすっかりハマってますわw)女性グループ、ハントリックスの「Golden」が今週4位→2位に上昇中。7/25付のSpotifyのデイリー・チャートの1位は既に「Golden」なので、ひょっとして来週「Golden」が首位を取るか?という事態になってます。恐るべしKポップ・デーモン・ハンターズ!では今週のトップ10おさらいです(順位、先週順位、チャートイン週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

*1 (-) (1) Don’t Tap The Glass - Tyler, The Creator<197,000 pt/128,000枚>
2 (3) (10) I’m The Problem - Morgan Wallen<142,000 pt/6,276枚*>
*3 (5) (5) KPop Demon Hunters - Soundtrack <89,000 pt/4,629枚*>
4 (1) (2) Jackboys 2 - Jackboys & Travis Scott<78,000 pt/15,779枚*>
*5 (19) (35) You’ll Be Alright, Kid ● - Alex Warren <73,000 pt/13,000枚>
6 (2) (2) Swag - Justin Bieber<72,000 pt/1,006枚*>
*7 (134) (9) The Essential Ozzy Osbourne ▲2 - Ozzy Osbourne <44,000 pt/3,000枚>
*8 (-) (1) Sex Hysteria - Jessie Murph <44,000 pt/9,000枚>
9 (4) (2) Let God Sort Em Out - Clipse<43,000 pt/10,721枚*>
*10 (-) (1) Permission To Dance On Stage - Live - BTS<43,000 pt/36,000枚>

オジーへのファンの愛がありありとチャートに表れていた今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。では最後にいつもの来週の1位予想(チャート集計対象期間:7/25-8/1)ですが、今週はかなり予想が難しいですね。タイラーが2割減としても15万ポイントは確保しそうなので、タイラー2週目の1位、というのが順当なところだけど、SpotifyKPDHの楽曲がかなり複数上位に登場していることを考えると、KPDHサントラが一気に1位を取る可能性もあるかも?まあでも予想としてはタイラーの2週目1位に一票入れときましょう。ではまた来週。


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