横山裕と渋谷すばる、YYSSという物語(後編)
【前編】はこちらから。
●YYSS開幕!!
迎えた初日、2025年9月20日。
前日から、願うことはひとつだった。
渋谷さんが楽しめますように。
いつもみたいに、すべてから自由で、彼が人生をかけた音楽を、全身でのびのびと解き放ってくれますように。
喜びで満ち溢れますように。
この数年間、一緒に5人と1人と1人を見守ってきた安田担の友人と神戸に向かいながら、2016年の彼らのユニット曲『ハダカ』の歌詞を読み返して、必然を感じたりしていた。
「あべこべな僕らは
今日も同じ場所に立っている
君が太陽 僕が月とか
そんな単純じゃない
遊べ 笑え ココロから
辿り着ける ハダカなら
それぞれの音が 重なり合う
涙の数だけ 響き合って
だから今を強く生きてる
言葉にできない 想い抱えて
だから僕ら今日も歌ってる
だから僕ら生きてる」
会場に着いて友人たちと合流する。
いつも渋谷さんの現場で挨拶を交わすこの2~3年でできた友達と、昔からエイトの現場に一緒に通ってきた友達、同じ現場で会うのはなんだか不思議な感じがした。

私は真っ赤なスカートを履いていた。
友人たちも、すれ違う人もみんな「YOU & SUBARU」と書かれたギターTシャツを着ていて、ああ、お祭りだなあと思った。
嬉しさと、そわそわと、緊張で
誰かが「緊張してきた…」と言うと誰かが「やめて!」と返す
そんなやりとりを開演まで何度も繰り返した
その一方で、会場の中に入った後も、今ひとつ実感はなかった。
この数年間、何度も何度も何度も何度も観てきた渋谷さんが、この満員の神戸ワールド記念ホールのステージで、歌うのだ。
座席につく。
開演時間が近づく。
セッティングを見て、横山さんから始まることはわかっていた。
遠くで誰かが、「ヨーコ! すばる!」とコールを始める。
「ヨーコ!(パンパン!)、すばる!(パンパン!)」
広がっていくコール。
客電が落ちて、映像が流れる。
バンドメンバーが一斉に音をかき鳴らす中、
「今日俺、ロックしに来ました!!
ただ、ロックの定義がわかりません!!」
「でもこれだけは言える。
今日ロックせな いつすんねん!!!
「全力でかかってこいや!!!」
キラキラの照明の中現れた横山さんは、
ツアー以上の大声でそう叫んだ。
『ロックスター』のイントロが降り注ぐように流れ出す。
客席も呼応するように叫んで、バカでかい手拍子が鳴り始める。
想い出しただけで涙が出そうになる。
溢れ出す多幸感、全力での人生の肯定。
かつての彼が そこはかとなく纏っていた卑屈さや諦めの影は遠い彼方へ消え
ただ、ひたむきな努力を重ねた その日々こそが彼自身を輝かせ、圧倒的な光で周囲を照らしていた。
間違いなく彼はスターで、私たちは幸せだった。
続いて『HERO』『存在意義』。
ファイナルから間もないこともあり、基本の構成はツアーの流れを踏襲していた。
4曲目、『kicyu』前のMC
「続いての曲は『kicyu』という曲なんですが…
アイツ居た頃からやってたし、みんな知ってるよね?笑」
「ていうかアイツもやってたよね? 錦戸さんと」
そう説明してくれたことが嬉しかった。
亮ちゃんの名前を出してくれたことも嬉しかったし、
横山さんが、渋谷さんのファンのことを考えて喋ってくれていること、
その優しさも嬉しかった。
ツアー中に育っていった「秘技オタク殺し・子猫ちゃんコール&レスポンス」などを経て、『黄金期』『ポインセチア』。
ツアーではここで歌われた『繋がる』は飛ばされ、あとで二人で歌うのだなと改めて実感する。
『神様のバカヤロー』『プライド』に雪崩れ込んでいき、会場のボルテージは上がり続ける。
「今日、きっといろんな感情になると思うけど、それが生きてる証拠やから」
「いろんな垣根とか、大人の事情もあると思うけど、どうでもいいから」
「本気で、マジでやろう」
「かかってこいよ!!」
横山さんは事あるごとにそんな言葉を話す。
「俺とあなたで感情をぶつけ合おう! あなたならもっとやれる!」と発破をかけるように叫ぶ。
「今あなた最高の顔をしてるから! この瞬間を忘れないで! 忘れなければ、明日からも大抵のことを乗り越えられるから!」
「俺とあなたで、最高の人生にしていきましょう!」
横山さんはずーっといい顔をしていた。
かっこよくて清々しくて、私は隣の安田担に、「もうこれで終わってもいいよ」と冗談を言って笑った。
それくらい、横山裕のライブは本当に素晴らしかった。
本編ラスト、横山裕の人生哲学が詰まった名曲『ど真ん中』の前、
彼の最後の挨拶が始まる。
これは2日目の内容だけれど、公演直後に必死で書き起こしたものをXに投稿していたので、それを貼っておく。
思い出させてしまうと嫌な気持ちにさせるかもしれへんけど……話させてね。
すばるが抜けて、7年が経ちました。
(※これまでずっと前に8年と言い続けてけど、今日7年に修正されていました)
でも、あの記者会見が今も僕の脳裏には鮮明に残っています。
すばるの門出やのに、俺が真っ先に泣いちゃって、
「今日という日が来ないで欲しかった」って……
でも、あれから7年経って、
「今日という日がどれだけ来て欲しかったか」って、そう思える今になったんです。
それは、あいつが7年間ブレずに音楽をやり続けてくれたからだし、
あいつの男の決断の結果、俺がギターを持てているからだし、
こうやってあなたの前に立てているからだし。
そして、俺たちは関ジャニ∞からSUPER EIGHTになりました。
そうやって色々変わっていくけど、
やっぱり、決断するって、行動するって、本当に勇気がいることなんです。
すばるも、色んな批判をいっぱい受けたと思う。
だから、どうか短期的な、目先の目線で判断しないでほしいんです。
生きていると正解なんてないから。
何が正解なのかじゃなくて、最後に自分で正解にしたらいいんです。
最終的に花丸にしたらいいんです。
俺とあいつはそうやってやってきている。
そうやって繋がっている。
だからそのために俺はまず自分を信じる。
そうしたら人を信じることができる。
そうすると、人が集まってくる。
あなたも、どうか自分を信じてください。
そういうかっこいい人生を、一緒に歩んでいきましょう!
「俺のタスキはあいつに繋げました。
ここからあいつがやってくれるから。
俺もあいつの生き様見届けたいと思います」
『ど真ん中』ですべて出し尽くした横山さんは、そう言ってステージを去っていった。
ツアーでは本編ラストに歌われた『オニギシ』はカットだった。
あの曲はやはり、「横山さん個人の物語」なのだなと思った。
●転換映像「いきなり罰ゲームバトル」
ここまでで既にべしょべしょに泣いていた私と安田担は、幕間で流れ始めた映像にズッコケた。
横山さん渾身のステージが終わり、いよいよこの後は渋谷さんの出番である。
数年ぶりに渋谷さんを観る人たちが、この会場にはたくさんいる。
波打った感情を一旦落ち着かせ、静謐な気持ちで渋谷さんの登場を待ちたいと思ったところで、緊張感をぶち壊すように「どうも~」と、リハの合間か何かに撮ったらしき映像が流れ始める。
二人が並ぶ姿なんて、最大のクライマックスであるべきなのに!
まさかこんなに不意打ちで公開されるとは!
感情をぐっちゃぐちゃにされながら観たのは、慣れ親しんだ『クロニクル』スタッフが制作した、「いきなり罰ゲームバトル」という企画映像。
二人は、びっくりするほど自然だった。
7年ぶりのバラエティでの共演となるはずなのに、ボケるも突っ込むもいたずらにテンションが高すぎることもなく、あまりにも自然に企画を受け入れ進めていく。
そして信じられないくらい面白かった。
やはりこの人たちはバラエティの天才なのだ。
全5日分の内容を書き起こしたメモを投下したポスト、
リンクを貼っておきますのでお暇な方はぜひ。
●渋谷すばる登場
映像の合間にも、新体制のバンドメンバーがセッティングを開始していた。
珍しく全員が揃いの白い衣装に身を包んでいるところに、すばる陣営の静かな気合を感じた。
8000人が詰めかけた会場、久しぶりに渋谷すばるを観るであろう、たくさんの方へ向けて。
どういうテンション、どういうセトリで来るんだろうと思った。
どうか渋谷さんが、いつものように音楽を楽しめますように。
持てる力を遺憾なく発揮して、自由にのびのびと歌えますように。
祈ることはずっと、ただそれだけだった。
「NEXT ARTIST 渋谷すばる」という映像が流れる。
拍手ののち、静まり返る会場、暗闇を歩く渋谷さんのシルエットが浮かび上がり、小さなどよめきが上がる。
初めて生で渋谷さんをご覧になる方もいるんだなと思った。
賑やかだった横山さんのオープニングとは対極に、渋谷さんの1曲目は静かに始まった。
「今日という儚き時を
僕らみんな精一杯生きてる
ああ 悲しみよ 切なさよ
愛でて風になれ」
無音、アカペラのまま歌い出す、『人間讃歌』。
横山さんとの再会のきっかけであり、今回のプロジェクト全ての始まりとなった曲。
私は息を呑んで見つめる。
渋谷さんの声がマイクに乗り空間に広がっていくのをただ感じる。
渋谷さんは緊張していて、でもそれは決して嫌な緊張感ではなかった。
続いて『Lov U』、去年のツアー以来久しぶりに、ダンサー(しかも4人!)まで登場する。
そうか、“この感じ”でいくのか。
一応持ってきていたペンライトを慌てて取り出す。赤く灯して全力で左右に振る。
華やかなサウンド、ひらひらと舞うダンサーさんの赤いドレス、
渋谷さんはリズムに合わせ歌い時々ダンスまで踊ってみせる。
続く『アオ』ではステージを端から端まで歩き、サビでは手を大きく左右に振ってジャンプし、観客を盛り上げていく。
一緒に跳ねる観客を観て、この日初めて、笑顔を見せた。
「こんばんは、渋谷すばるです。
『お久しぶりです』『初めまして』という方、
いろんな人がいると思いますが、最後まで楽しんでいきましょう!」
序盤に披露されたのは、去年リリースされた最新アルバム『Lov U』以降の新曲ばかりだった。
独立後、自分の好きなバンドサウンドを突き詰めたことにより、「好きだけど好きじゃない」と離れていってしまった人たちへ向けたラブソングたち。
ずっと渋谷さんを追ってきた人たちは、当時、「無理をしていないかな」と内心で心配していたのだ。
でもみんな優しいから表では言わない。
彼の選択を尊重して応援したい、水を差すようなことはしたくないから。
そんな方々から、私はたくさんDMをもらった。
「すばるくんが本当にやりたいことを我慢してるんじゃないかと心配です」と。
そのたびに私はこう答えていた。
「恐らく今 彼はこれをやってみたくてやっているし、まだまだ旅の途中だから、きっとまた変わっていきますよ」と。
独立後、バンドサウンドを突き詰めないと前に進めなかった渋谷さんは、また一歩前へ進むためにポップスに挑戦した。
それは、武器を捨てることでも持ち替えることでもなくて、新しい武器を増やすための挑戦だった。
最初はぎこちなく分離していた第2章(独立後~『ないしょダンス』まで)と第3章の曲たちだったけれど、ツアーを経てそれらをシームレスに披露できるようになったことに手ごたえを感じたと、後にインタビューでも何度か語っていた。
第3章の渋谷すばるなりに掴んだエンターテインメントの形。
久しぶりに彼を観るお客さんへ向けて。
煌びやかな衣装もダンサーも総動員し、彼はそれを余すことなく披露する道を選んだ。
結論から言えば、初日はまだまだセトリ前半は固かった。
けれど、2日目からは飛躍的に良くなり、生き生きと歌い上げるからもう、最高すぎて笑ってしまった。
やはり、同じライブは二度とない。
「生きていると、いろんなことあると思うけど…
ありのままのあなたでいてください」
そんなMCで始まる『さらば』。
どの公演も、『さらば』は素晴らしかった。
「好きだよ」のたった4文字、その歌い出しだけで、会場中の人の心を攫っていくのが目に見えるようだった。
『君らしくね』、そして『ストライクゾーン』ではタオルを回しまた観客を盛り上げる。
かなり戦略的なセットリストだなと思った。
「今のすばる、どんな感じなんだろう」という人の心にそっと忍び寄って、「こんな曲も歌うんだ」と意表をついて、歌の力で心を攫って、次第に彼のペースに巻き込んでいく。
「さっきまでヨコが素晴らしいライブをしていた場所に、自分が立っていることが感慨深くて嬉しいです、めちゃくちゃかっこよかった、最高でした」
つい先日公開されたインタビューで、渋谷さんは横山さんのステージについてこう語っている。
「彼の歌をひさびさに聴いたら、無駄なところが削ぎ落とされて、いいところだけが残って、人としてデカく強くなった印象を受けましたね。この前の対バンイベントにしてもそう。
ライブも一緒にやってはいたけど、まじまじと見ることなんてなかったから、それも新鮮で。めちゃくちゃカッコよかった。改めてすごい才能の人やなと思いましたね」
初日、初めて「進化後の横山裕」のステージを生で観た直後の彼
自分を久しぶりに観るであろう、たくさんのお客さんを前に、
そこで受けたであろうインパクトをどう自分が返すか
きっとあらゆる感情が未整理なまま、彼は一人ステージに立っていた。
「色んな人がいると思うけど……
せっかく来てくれたんやから……楽しもう!!」
渋谷さんは、自分が決して歓迎されるばかりではないことを、誰よりもよく知っていた。
複雑な想いを抱えながら、それでもここに来てくれた人に、今の自分が見せられる全てをさらけ出そうとしていた。
「どんなにスペシャルなライブでも、最後に完成させるのは客席にいるあなたです!!」
「俺と、ヨコと、みんな一緒に、最高のライブを作り上げましょう!!」
そう叫んで、「ちょっと懐かしい曲行きますよ!!」と『ココロオドレバ』が始まる。
観客たちは10年の歳月を忘れて、一斉に頭上で手拍子をたたき始める。
そこからは渋谷すばるの独壇場だった。
『ベルトコンベアー』~『爆音』のメドレー、『ないしょダンス』『ワレワレハニンゲンダ』と、第2章の彼が死に物狂いでモノにしてきた鉄板の流れが続く。
彼は叫び歌うことで緊張していた彼自身を追い込み盛り上げていっていたし、「いっそ観客全員ドン引かせてやるガハハハハ!!」という戦闘態勢に入っていたので、
隣の友人と「さっきまでのご挨拶モード台無しじゃん」と爆笑しながら、二の腕がぶっ壊れるかと思うくらい拳を突き上げ全力で飛び跳ねた。
今存在する渋谷すばるのA面とB面、どちらも全力で見せることが、この「YYSS」における彼のステージのコンセプトなのだろう。
それから、
今回久しぶりに一緒にやって、懐かしい気持ちはあったけれど、
お互い時間を重ねて進化した自分たち同士で向き合うから楽しいのだということ。
「頑張ろうと思わせてくれるのは、ヨコだったり…仲間たちがいるから」
「だから、これからも自分は自分の道を進んでいこうと思います」
「すべてのきっかけをくれたのはヨコなので…」
「ヨコ、ありがとう!」
そう感慨深そうに語って、最後の曲に雪崩れ込む。
コロナ禍に発売されたアルバム『NEED』に収録されている『Sing』。
「歌が必要だ
この世界に
歌が必要だ
どんな時でも」
ラスト、観客全員で大合唱することを想定して作られたであろうこの曲は、コロナでツアーも中止になったことから、なかなか披露される機会に恵まれなかった。
「今日、ここに来てくださった皆さんと、あなたと、一つになるための曲をやります」
「途中みんなで歌ってもらうパートがあって…」
「『最近お前のこと追えてないから曲知らんねん』て人も多いと思うんですけど! それでいいんで! 全部俺に任せてください!」
「これだけの人数、音楽でひとつになれるということ、それを事実として作ろうぜ!!」
背景に映し出されるスクリーン、そこには歌詞が表示され、
渋谷さんは穏やかに、のびのびと冒頭から歌っていく。
ラストの合唱パートが近づく。
「皆さん準備はよろしいでしょうか!」
渋谷さんのガイドに従って、知っている人も知らない人も声を出す、同じ歌を歌う。
「歌が必要だ
この世界に
歌が必要だ
どんな時でも」
渋谷さんは嬉しそうだった。
会場を中を見渡して、にこにこ笑って
「最高です、もっと聞かせてくださいー!」と何度も叫んだ。
なかなか終わらなくて笑ってしまいそうになる。
エイトも渋谷さんも、こういう時とてもしつこいのだ。
煽られるたびに観客はもっと声を出す、腹の底から声を響かせる。
最初から大声だった渋谷さんのファンと、
この曲を知らなかった人たちの声の差がどんどんなくなっていく
垣根は壊れ、
私たちはひとつになって、ただ歌だけが響く。
「最高です、ありがとうー!!!」
「歌が必要だ
この世界に
歌が必要だ
どんな時でも」
「歌が必要だ
この世界中に
歌が必要だ
どんな時代も」
アウトロ、メンバー紹介を経て、
「今日来てくれた客席にいるあなた!!
そして、あなた以外の全員に大きな拍手を!!」
「心からのリスペクト、心からの感謝を込めて!!!」
「横山裕に大きな拍手を!!!!!!」
その日一番大きな声で彼はそう叫び、渋谷さんは緊張の初日ステージを見事にやり切った。

●『繋がる』
暗転後、会場は再び
「ヨーコ!(パンパン!)、すばる!(パンパン!)」
コールに包まれていた。
数分後、明かりがつくと同時に、下手から横山さんが、上手から渋谷さんが、それぞれグッズのTシャツに身を包んで現れた。
横山さんはギターTシャツを着ていて、渋谷さんは黒い「YYSS」Tシャツだった。
二人は近づいてステージの真ん中で力強い握手を交わし、どちらからともなくハグをした。
恥ずかしそうで、目は合わせていなくて、会場は割れんばかりの歓声と拍手に包まれた。
渋谷さんは「こっち見てくださいよ」と笑う、「照れくさいですね…」と言って、横山さんはそれでも、渋谷さんを見ることができない。
それから、
「今、観させてもらったんやけど…
いやあ、やっぱすげえわ……」と、誇らしさを嚙みしめるように、溢れそうになる感情を抑えるようにしながら、静かに言葉を漏らした。
「久々にすばるのライブを生で観て、出会えてよかったって、心から本気で思いました。やっぱかっけえわ……」
渋谷さんは嬉しそうで恥ずかしそうだった。
口をもにょもにょさせて、居心地が悪そうに身体をよじらせながら、とても嬉しそうにしていた。
この人は愛されているとき、一番いい顔をする。
私はずっとこの顔が見たかった。
ずーーーーーーーーーーーーーーーっと、
泣きたくなるくらい、この顔が見たかった。
「こんな日が来るなんて…」と繰り返し感慨深そうに語りながら、二人は「ありがとうな」「いやいやこちらこそ…」「あなたこそ凄いですよ」「いやあなたが…」と、お互いに謎に褒め合うおじさんたちと化して、照れ笑いの応酬でぐだぐだになっていた。
聞きながら、何度も拍手をする。
みんなが笑っている。
それから、すばるバンドのメンバーたちが呼びこまれ、
渋谷さんのニューアルバム『Su』の告知、
そのタイトルトラックに、「今度は僕のほうからオファーさせていただきました!」と、横山さんがゲストボーカリストとして参加していることが発表された。
(※ちなみに翌日以降、この告知のくだりはドラムの茂木ちゃんを巻き込んだ壮大なコントコーナーとなる)
(すぐに茂木ちゃんの面白さに反応する横山さんも、あっという間に横山さんにメロメロになる茂木ちゃんも最高だった)
『Su』はめちゃくちゃな曲だった。
会場の誰も知らない、初見の曲なのに、その勢いに乗せられ、横山さんの「Su! Su! Su!」という煽りに合わせてみんなで大合唱し、とにかくバカみたいに盛り上がった。
「ここで、あの曲行っていいですか!」
興奮が冷めやらぬ中、改めて神妙な顔になった横山さんが、熱くこみ上げる想いを抑えるようにしながら、そう切り出した。
「これをあなたの前で歌う日を……俺がどれだけ楽しみにしていたか」
時折感極まったようになりながら、この公演が実現するに至るまでに尽力してくれた両陣営のスタッフやバンドメンバーに対し、繰り返し謝辞を述べる。
「俺と、すばるは繋がってた」
「あなたと俺たちも繋がっているんです」
渋谷さんは、その言葉を聞きながら、横山さんの隣に真っ直ぐに立っていた。
「俺ら、最終的に花丸にするから。
俺たちを見届けてください」
そして、夢にまで見た二人の『繋がる』が始まった。
横山さんは時折感情を昂らせる
渋谷さんは真っ直ぐだった
二人とも、声がバカでかかった。
横山さんは声量で渋谷さんに負けていなかったし、
渋谷さんは一切ブレることなく、天井を突き破るような真っ直ぐさで歌い上げていた。
「繋がる 繋がる あの日の思い出が
繋がる 繋がる ごめんねとありがとう
繋がる 繋がる 大切な人の笑顔が
繋がる 今」
ここまで前を見て歌っていた二人が
「今」で一斉に向かい合う。
その瞬間もうだめで、涙が止まらなくなる。
「繋がる 繋がる 弱さと強さが
繋がる 繋がる 寂しさと楽しいが
繋がる 繋がる 大切な人の幸せ
繋がる あの日と音楽が
繋がる」
改めて、横山裕が書く歌詞は凄い。
一切飾らないのに、本質を抉り出す
本当にこの人は言葉の天才だと思う。
最後、金銀のテープが飛び、バンドメンバーたちを拍手で見送った後
「僕から紹介させてください!! 横山裕!!」
渋谷さんがそう言って横山さんを紹介した。
それに対して、横山さんが続ける
「やっぱり最高で最強のボーカリストでした!! 渋谷すばる!!」
“最高で最強の”
関ジャニ∞とSUPER EIGHTだけしか許されない称号を、
今日また新たに彼に与えてくれた。
渋谷さんが嬉しそうにうつむいて笑う
その光景を見る。
ステージの中央、彼らが手を繋ぐ
大きく両手を上げて、「ありがとうございましたー!!!」と二人で叫んで深くお辞儀をして、その瞬間、ぎゅっと繋いだ手に力を籠めるのがわかった
その手の動きは、きっと無意識で
ああ、彼らの歴史そのものだなと思った。
●YYSS神戸二日目
小さな事故(※)はあったけれど、初日を無事乗り越えたことは、きっと渋谷さんにとって大きなことだった。
(事故1※何度締め直してもベルトが緩んでしまい、バンドメンバーのソロ演奏リレーが繰り広げられる中、前代未聞の“ベルト締め直しソロ”が大画面に大写しになる)
(事故2※テンションが上がりすぎてステージを前へ前へと出ていった瞬間、特攻の火花が噴き上がり、あわや燃えそうになる)
観客に受け入れられたこと、何より横山さんに今の自分のステージを肯定されたことは、彼にとってこれ以上ない手応えだったと思う。
SNSでは、久しぶりに彼を観た方による渋谷さんを絶賛するポストがいくつもおすすめ欄に上がってきた。
常日頃おすすめ欄くんというものは大抵ノンデリのサイコ野郎なのでイラつかされるものなのだが、この日ばかりは珍しく空気が読めたので、ニコニコしながらスクロールを繰り返してしまう。
自分は何もしていないのに、推しが褒められているというのは、何故こんなにも誇らしい気持ちになるのだろう。
「歌っているすばるくんを観て、7年越しでようやくもやもやが晴れた」と書いていらっしゃる方もたくさんお見掛けした。
涙が出るほど ほっとしたし、また横山さんに感謝した。
どれほどファンが言葉を尽くして、今の渋谷さんの魅力を語っても、結局は生の渋谷すばるの歌声、笑顔の説得力がすべてであり、人の心を動かす唯一の真実なのだ。
多くの人をあの会場に集めたのは、横山さんの信念と人望だった。
その多くの人の心を動かしたのは、渋谷さんの才能と努力だった。
初日の公演を見て、横山さんの『Su』への参加を知ったこと、
横山さんが繰り返し「ここまでの道のりは間違っていなかったと確信に変わった」と、「これからの俺たちを見届けてください」と語る様子を見たことで
今回のプロジェクトが終わっても彼らの絆は終わらないのだということ、
これからも当たり前にずっと一緒に生きていくんだということが伝わってきた。
もうメンバーではない。
お互い忙しいだろうし、頻繁に会える関係ではないだろう。
なのに、「一緒に生きていく」ことを、当たり前に彼らは受け入れている。
そういうものだと思っている。
家族でもない誰かとそんな関係を築ける人が、この世にどれだけの数いるのだろう。
二人の関係性がひたすらに眩しかったし、
渋谷さんにとってそういう人がこの世界に存在するという事実が、とにかく嬉しくて心強かった。
二日目の渋谷さんはもう、水を得た魚のようだった!
前日多少のぎこちなさを見せていた前半パートから、もう見違えてよかった。
『君らしくね』なんて、単独含めたこれまでの公演の中でいちばんうまくて、惚れ惚れしてしまった。
すべてのピースがうまくハマっているときの渋谷さんは無敵になる。
スターを取ったマリオがピカピカ光っているみたいだった。
前日の事故(※1)を逆手に取って、特に緩んでいなさそうなベルトを自ら外してまたつけたり
『SIng』の前、
「最後は皆で、ひとつになるための曲です!」
「…って言われてもお前のこと最近追ってないから曲知らんねんて方多いと思うんですけど!! 全然ええから!!!」
「 𝑺𝒐𝑻𝒆𝒊𝑵𝒂𝒊!! (※唐突に“想定内”の英語発音)
全部わかってます!! 渋谷すばると申します!!」
この流れるようなMCには、爆笑しながら心底感心してしまった。
この日、私の大好きな渋谷すばるのいいところ
かっこいいところ可愛いところ、
頭のおかしいところシャイなところ回転が速いところ、ユーモアセンス、優しくて繊細で大胆で常識ぶち壊すところ、最高の歌、全部が出ていた。
単独ではなく、この対バンで。
満員のお客さんの前で全部が出ていた、全部が出せていた
たくさんの人に、「今の渋谷すばるのベスト」を見てもらうことができたこと。
その様子を目撃できたことが、本当に嬉しくて有難くて、誇らしくて幸せだった。
しんどかった日々を一緒に乗り越えてきたすべての同担に心の中で深く感謝して、互いを労い合いたい気持ちでいっぱいだった。
全5日間の公演の中で、唯一渋谷さんが涙を見せたのも、この日だった。
当日書き起こしてアップしたMCをここに貼っておく。
今回この最高のライブが実現したのは、横山裕という人の覚悟、強い想いが、すべての始まりでした。
僕のMVを観たっていうヨコから、数年ぶりに連絡をもらって。
ヨコが俺に「話がある」って連絡してくるってことは、生半可なことではないんだろうなと。
どんな話か想像もできなかったけど、聞くほうの自分も、中途半端な気持ちでは向き合えないなと思って、覚悟を持って会いに行きました。
そこで、今回の話をもらったんですが、会った瞬間、並大抵の覚悟じゃないなということは伝わってきました。
心が動かなかったら断っていたと思うんですが、本気が伝わって来たので、即、「俺でよかったら」って。
やれることは全部やろう、自分の持ってるものは全部差し出そうと思いました。
今考えると、ヨコも緊張してたと思うんですよ。
ヨコは緊張するとめっちゃ早口になるから。笑
気持ちだけは伝わってくるけどあんま何言ってるかわからへんくて
「うんそうそう、そうそうそうそう」(※死ぬほど早口で再現)
相槌ってそんな打てんのや……と思いましたけど、笑
そんな感じで、話をもらって。
今回ここでライブをやっていて。
正直、誰もやっていないことをやるのって本当に怖いんですよ。
彼は覚悟を持って、本気でそういうことをやっている。
そうやって自分の人生を一歩踏み出して、動かして、いま色んなところで活躍していて、本当に僕も勇気をもらっています。
そんな彼だからこそ、色んな人の心を打ち抜いているんだろうと思います。
そういう彼に、心からの敬意と感謝を表したいですし、
そんな奴から声をかけてもらえた自分自身に、拍手を送りたい気持ちです。
(ここで、ずっと真っ赤だった渋谷さんの眼から涙が溢れ、観客から大きな、鳴り止まない拍手が起きました。
この後も確かたくさん話していたと思うんですが、私も泣きすぎて記憶が曖昧です。
最後にバカでかい声で「ヨコ、ありがとうな!!!!」と叫んで、
「つい熱くなっちゃいました……ちょっと鼻噛んでいい?」と、タオルで鼻を噛んで終わりました。)
アンコールでは、前日よりも更にくだけた二人の様子をたくさん見せてくれた。
「あれまだやってるんやろ!?『明日のこと気にすんなよ!』」
「まあ……グループの時とか?」
「なっがいな! 物持ちええな!」
「こんなんもあるで……『もう〜どんなん欲しいの?』
「わー!! あったな!! そんなんも!!」
「言うとお客さん喜ぶから…」
「俺が一番喜んでるわ!!」
このやりとりには、みんなが涙を流して喜んだ。
「すばるとこうやって音楽やれて…感慨深いわ」
「あの…めっちゃ…(ヨコの)ライブ…かっこいいですよ…」
「そんなこと言ってもらえるん!?」
「昨日の今日でまた(今日の横山さんのライブが)熱くなってたから…
それがなかったら今日の自分のライブはなかったわ…
ほんまの対バンってこういうことやない?」
本当にこの人たちは、少年漫画の主人公たちのような会話を真顔でするのだ。
最後は、また
「僕から紹介させてください!! 最高です!!
こんな奴と出会える人生で幸せです!! 横山裕!!!」
「僕からも紹介させてください!!
やっぱり!! こやつは最高で最強のボーカリストです!!! 渋谷すばる!!!」
そう言って手を繋いで挨拶をして、神戸の二日間は大団円で幕を閉じた。
その日は9月21日だった。
翌日は、エイトの全国デビュー日であり、渋谷さんの44歳の誕生日だった。
日付が9月22日に変わった直後、午前0時2分。
渋谷さんは公式Xに、こんなポストを投稿した。
色んな感情が大爆発した。
心の中が花火大会だった。
会場にいた全ての人に心からの感謝を。
何度だって言う
横山裕に、
心からのリスペクト
心からの感謝を。
ありがとうございました!
誕生日最初の投稿は、親友への感謝だった。
その美しいポストには、2.4万のいいねがついていた。
●東京へ!
東京は10月3日~5日の3日間。
神戸から約2週間空いてのことだった。
「これが始まったらいよいよ終わってしまう…」と思うと、次第に憂鬱な気持ちが増していく。
それくらい、ずっと終わってほしくない特別なお祭りだった。
自分にとってこの「YYSS」は、もうひとつの「二十祭」のようなものだったのだ。
終わったらまた「日常」に戻る。
「ケ(日常)」があるから「ハレ(非日常)」が眩しいことなんて、わかっているのに。
今、渋谷さんが幸せそうで、
渋谷さんの隣に横山さんが居て、たくさんのお客さんの前でいい歌を歌っていて
彼が、ひとりではなくて。
また、元に戻ってしまうことが、私は怖かった。
けれど、時間というのは均質にさらさらと流れるもので、その日はあっさりとやってくる。
渋谷さんにとって3年ぶり、3度目の有明ガーデンシアターでの公演。
神戸公演の様子を袖から撮影したFC動画を観て、客席の赤いペンライトが思っていたよりも綺麗だったから。
『Lov U』のペンライトと、色固定ができるエイトのペンライト2本を持って、私は有明に向かった。

東京は神戸以上に、知り合いがたくさんいた。
渋谷さんのグッズを身に着けている人とすれ違うたびに、心の中で「いい日ですね」と挨拶をした。
会場に入ると、ミュージック・ステーションから「横山裕×渋谷すばる」宛にスタンド花が届いていた。
結局二人の出演が果たされることはなかったけれど、その名前の並びを見るだけで胸にくるものがあった。

お互いのグッズを着て喜ぶ姿がそれぞれのSNSに投稿されたり、
少し前だったら一つひとつを奇跡のように語り継いでいたであろう出来事が、目の前で惜しげもなくどんどん繰り広げられていく。
全部をちゃんと、目を凝らして見ようと思った。
何ひとつ忘れたくないなと思った。
2週間のブランクを経て、横山さんのステージはますます熱くなるばかりだった。
公演を重ねるほどに、横山さんの中で、心の色合いが変わっていくのが手に取るようにわかった。
「あいつが男の決断をした時
俺がどうにかできんかったかなって悩んだこともあったけど」
「今となってはあいつに感謝してんねん。
あいつが男の決断をしたなかったら、俺らはSUPER EIGHTにはなっていないし、こうやってギター持ってあなたの前に立っていないと思う」
ソロツアー中から繰り返し語っていた挨拶も、
どんどん前向きになり、言葉が力強さを増していく。
見え隠れしていた不安の色は一切なくなり、彼と渋谷さんがそれぞれ/一緒に創り上げたステージが手応えとなって、彼の心を満たしていったことが伝わってくる。
「俺、いま確信した!
俺とすばる、ここにいるあなたたち……
俺たちが歩んできた道は何も間違ってない!!
これからも、最高で、最強の人生、一緒に歩んでいこうぜ!!」
本編ラスト、『ど真ん中』を歌い終わった横山さんはそう叫んで右手を上げる。
「この後、俺の友達がステージに立ちます。
タスキはあいつに繋げたつもりです。
ここからあいつの世界に入って思いっきり感情をぶつけてください!」
この日から、紹介の際に横山さんは渋谷さんのことを「俺の友達」と呼ぶようになった。
続く渋谷さんのステージ、
この日はまた、神がかって凄かった!
1曲目『人間讃歌』から歌が研ぎ澄まされまくっていて、ピッチから何から、完璧な美しさだった。
唯一涙を見せた神戸二日目が渋谷さんの感情的な昂ぶりのピークだったとしたら、
この日の彼は自信と喜びに満ち溢れた状態で、すべてのピースが思い通りにハマっていく、確変状態に突入しているように見えた。
歌のクオリティという意味で言うと、彼が独立して以降、間違いなくこの日がベストライブだったように思う。
「ついさっきまで、ヨコが熱いライブをしていた場所に今自分が立って歌っていること…
最高に熱いバトンを受け取りました、幸せです、ありがとうございます!」
(ちなみに毎回、横山さんは「タスキ」で渋谷さんは「バトン」と表現していたの、地味に面白かったポイントである)
この日の『Sing』前のMCも素晴らしかった。
以下、当日書き残しておいたメモより。
「神戸から始まって、俺は確信を得たというか…
ヨコと俺は深いところで繋がっているっていうのを感じました」
「すべてのきっかけは横山裕の強い想い、本気の覚悟にみんなが心を動かされたこと、そこからこのプロジェクトは始まりました」
「ヨコの想いが周りのバンドメンバーやスタッフの方々を動かして、自分も心を動かされて」
「自分にも今、周りにたくさんのスタッフやバンドメンバーがいて、
そこに至るまで、一人になってからの時間というのは……思うようにならないことばっかりでした」
「今となっては、それも必要な時間だったと思いますが、
正直ギリギリで、しんどい時もあったけど……とにかく前だけを見て進んできた結果、どん底の状態の時にトイズの皆さんとの出会いがあって」
「それでリリースした『人間讃歌』のMVを観たヨコから連絡をもらって」
「自分の音楽人生の新たな一歩を踏み出したタイミングと、それを観てくれたヨコがソロプロジェクトを始めるタイミングがたまたま重なりました」
「物事を進める時、中心にいる人の心次第でよくも悪くも変わっていく中で、
ヨコはファンの皆さんとか、スタッフとか自分とか、本当に数えきれないたくさんの人の心と心を繋いでくれたと思うんです」
「ヨコの心は、たくさんの人たちの心と繋がっているんだと思います」
「だから、ヨコはすごく幸せだと思います」
「そんな大きくて強いヨコ、輝いていてかっこいい今のヨコから僕も力をもらっていますし、そんなやつに声をかけてもらって、人生を共にしていける自分に、拍手を送ってあげたいなと思います」
有明ガーデンシアター、4階の隅っこまでびっしりと埋まった満員の会場は、真っ赤なペンライトで埋め尽くされていた。
「どんなライブも、見に来てくれる人がおらんかったら成立せえへんから」
「とにかく今日、このライブを選んでここに来てくださったこと…ありがとうございます」
彼はライブ中、何度もそんな言葉を口にした。
このプロジェクトの「ど真ん中」に存在する横山さんの心が、
スタッフ、ファン、一人ひとりの心を繋いで、それが網目のように繋がっていった結果、
今、目の前にキラキラと広がる光景を創り出しているということ。
「色んな想いの人がいると思うけど、とにかく、観に来てくれてありがとうございました」
そのペンライトの持ち主は、もしかしたらかつて自分が傷つけ/傷つけられた相手であるかもしれないこと。
それでも時を経て、こうしてたくさんの方と再会を果たすことができたこと。
その意味を、奇跡を、彼はよく理解しているように見えた。
「ROCK TO YOU」のコンセプト通り、ソロツアー中から横山さんは徹底的にファンのことを「あなた」と、2人称単数で呼びかけ続けていた。
「あなたたち」ではなく、「あなた」
渋谷さんも「あなた」と言う
「今ここにいる、あなたと、あなた以外の人」と言う
「YYSS」は、横山裕と、渋谷すばると、全員違う想いを持って会場に集まった私たち、一人ひとりが向き合う物語だった。
いつの公演だったか、隣に座っていらした横山担らしい若い女性が終演後、「すばるが笑って歌ってたのがもう(たまらなくて)だめだった、泣いちゃった」と、一緒に入っていたお母さんに小さい声で伝えているのが耳に入った。
その言葉だけで、彼女が抱えてきたであろう数年間の想いが一瞬にして胸に雪崩れ込んできた。
この会場中を埋め尽くす人たち、一人ひとりが、全員違う想いを抱えてやって来て、何かを感じ、
全員違うまま一緒に『Sing』を歌って、私たちはひとつになった。
「素晴らしいきっかけを作ってくれた横山裕に改めて感謝を伝えたいです。
ヨコ、ありがとう!」
何度も言うが、この日のステージは本当に素晴らしかった。
頭のてっぺんからつま先まで、あまりにも完璧なステージで
隣に座った25年選手の同担と、「すばる、今日で引退するのかな…」と囁き合うほどだった。
アンコール、顔を真っ赤にした横山さんが開口一番、
「すばるが一方的に俺に言ってくれたから、俺にも言わせて。
俺もマジでリスペクトしてるし、すばると出会えて、すばると友達でいられて、すばると深いところで繋がれて、本当によかったと思ってます!!」
「すばるがいなかったら今の俺絶対ないなって心から思う」
「やっぱすげーわ、ライブ観て、俺よくこの人と対バンしようと思ったなって自分で思うもん!!」
すごい勢いで渋谷さんに畳みかけるから、またみんなで泣き笑う。
この日、横山さんも渋谷さんも、揃って「確信した」という言葉を使っていたのが、本当にたまらなかった。
「俺たちが歩んできた道は間違っていないと確信した」
「ヨコと俺は深いところで繋がっていると確信した」
30年弱の付き合いで、二人が深いところで繋がっているなんて
誰が見ても明らかなことだったし、
今更確信も何もないだろうと思うけど。
お互い見失いそうになった時も確実にあったんだろうな。
この選択が、道が間違っていて、どこにも繋がっていないかもしれないと、
真っ暗闇の中をたった一人で歩いているような感覚に襲われた日がそれぞれにあったんだろうな。
だからこそ、他の誰よりも彼ら自身が今、隣に並んで笑い合えていることが、嬉しくてたまらないんだろうなと思った。
私は、この3年間ずーっと勝手に、一人で戦っている渋谷さんと一緒に戦っているつもりで生きていた。
なんの戦力にもならなかった、なれなかったけど、とにかく必死で、たった一人ボロボロに傷ついている渋谷さんをなんとかして守りたかった。
「どんな感情でもいい!! どんな想いでもいい!!」
「何度だって、何回だっていい、
全部俺に、俺ひとりにぶつけてこい!!!」
「何一つ残らず受け止めるから、全部吐き出してこい!!
何一つ残すなよ!!!」
「やれんのか東京!!!」
「騒ごうぜ東京!!!!!」
彼がライブでそう煽るたび、かっこよくて痺れて、拳を突き上げながら夢中になって一緒に叫ぶけど、
同時に、「頼むからもう全部ひとりで受け止めようとしないでくれ」と本気で願っていた。
でも今、渋谷さんの隣には横山さんがいた。
トイズのスタッフの方々がいて、バンドメンバーがいて、たくさんの人に囲まれて愛されて笑っていた。
渋谷さんはこの辛い数年間を振り返る際、決まって「自分には必要な時間だった」と、言い聞かせるように何度も語ってきたけれど
この日、横山さんが「俺とすばるが歩んできた道は間違っていなかった!!」と叫んだ瞬間、
他でもない横山さんに真っ直ぐ肯定されたことで救われたんじゃないかなと思った。
少なくとも、私は心の底から救われたのだ。
本当はずっと、誰か第三者に肯定してほしかった。
けれどそれは誰かに頼むようなことではなくて、渋谷さんが自分自身で思えるようにならないといけないのだ、意味がないのだと思っていたけれど、
横山さんがあんなに真っ直ぐに肯定してくれたことで、この7年間のすべてが報われるような気さえした。
好きな人の隣に、信頼ができる誰かがいてくれることって、
なんて頼もしいんだろう。なんて温かいんだろう。
思い出すだけでいくらだって涙が出る。
この対バンが終わったら、横山さんはエイトに帰っていくし、渋谷さんもまた渋谷さんの日常へ戻っていく。
各々の戦場があり、状況が劇的に変わることはないだろうなと思った。
一緒に過ごした時間が眩いほどに、それはとても寂しく、心もとなく感じられることだけれど、
それでも、この瞬間、隣でここまでの互いの人生を讃え合ったという事実は、きっとこれからの彼らが進んでいく道を、明るく照らしていくことになるんだろうな、
そうなるといいなと思った。
●そしてオーラスへ
「どうも、元・関ジャニです!」
東京二日目アンコール、横山さんと二人で登場した渋谷さんは、第一声、力強くそう挨拶した。
その瞬間、会場はワッと弾け、割れんばかりの歓声と拍手に包まれた。
「…で言ったら(グループが改名した)俺もそうやけどな」と笑う横山さんに
「だからですよ!」「だからです!!」と食い気味に言葉を重ねた。
この日、『ど真ん中』前のMCで、横山さんは、下記のような挨拶をした。
すばるが抜けるってなった時、俺はほんまに嫌で、辛くて、正直、もっと俺にやれたことがあるんじゃないかって考えたこともありました。
7年経っても、あの記者会見のことは、昨日のことのように覚えています。
当日、朝からその会見場まで移動しながらのこととか…
何度もすばると二人で話しました。
焼肉とか行ったり、酒飲んで、他愛のない話から始めて…
なんとか説得したかったけど、すばるの男の覚悟を聞いて。
それでも、俺はすばるのこと、メンバーやし仕事仲間でもあるけど、それより友達だと思ってるから…どうしてもこれからも一緒にやりたいって気持ちが強かった。
記者会見の日が来て、俺、「この日が来てほしくなかった」って……
凄いですよね、何を言うかなんて何も決めてなかったのに、気づいたら真っ先にそう言って泣いていました。
でも、今は、「今日、この日が来てくれてよかった」ってほんまに心から思うんです。
それはすばるが、あいつが歌い続けてくれたからやし、第一線で活動し続けてくれたからやし……
すばるが男の覚悟を貫いてくれなかったら、
俺たちも関ジャニ∞からSUPER EIGHTになれなかったと思うんです。
こうやってあなたたちの前で、ギターを弾いて歌っていることもなかったと思う。
だから皆さん、目先のことで判断しないで欲しいんです。
それは、すばると俺のことだけやなくて。
今の時代、情報も溢れていて、何が正しいかなんてわからない。
だから、まずは俺は自分を信じることにしています。
自分を信じれば、人を信じることができる。そうすれば、人が優しくしてくれる。助けてくれる。
そうやって生きていって、最後に自分で自分の人生を正解にしたらいいんです。
そういう人生を、俺とあなたで、一緒に歩んでいきましょう!
何度も同じような挨拶を聞いているのに、この日は更に熱く感じられて
聞いていて涙が止まらなかった。
「元・関ジャニ∞」を名乗れるのはこの世界に8人しかいない。
あまりにも紆余曲折があった、
望まない中でグループ名を奪われた歴史も何もかも踏まえ、
横山さんが自分を信じ行動を重ねてきた結果、すべてを必然にして、今を「正解」にして、
「SUPER EIGHT」である自分自身を誇れるようになった今だからこそ、
そして、そんな横山さんと並び立てる今だからこそ、
渋谷さんは、「元・関ジャニ」という冠を、自分たちに共通する、愛しく誇らしい歴史として、堂々と称することができたのだなと思った。
そうして迎えた10月5日。
泣いても笑っても、この「ここまで生きてきたご褒美」のようなお祭り、「YYSS」は残すところ最後の一日となった。
終わってしまうと思うと寂しくて、憂鬱で
東京三日間、我が家に泊まっていた横山担の友人が、寝起きで
「今日という日が来てほしくなかった…伏線回収や……」と呟いたから笑ってしまった。
この言葉で笑えるようになったことが奇跡みたいだなと思った。
五日間、本当に楽しかった。
アリーナで飛んではしゃいでいたら、スタンドから観ていた友人に「ぼと子が一番楽しそうだったよ」と言われたことも、
有明のフードコートで友人たちと一生ワイワイ時間を過ごしたことも、
なんというか、あまりにも青春みたいで、本当に楽しかった。
開演前、ざわつく会場、席に座り、今日ここで行われるすべてを目に焼き付けようと深呼吸をする。
最後の「ヨーコ!! すばる!!」コールが巻き起こり、
いよいよオーラスの幕が開いた。
「YEAH!! 俺ロックしに来ました!!」
「ただここまで来て、まだロックの定義がわかりません!!」
「俺の生き様見せるからさ!! やるって言ったらやるからさ!!!」
「ラストやぞ!!! 全力でかかって来いよ!!! 行くぞ!!!!」
横山さんはもう、全部を出し切るつもりで来ていることが、光の中で叫んだ第一声の馬鹿デカさからわかった。
ソロツアーのオーラスでも、声がカスカスになるまで歌い叫び続けてヨロヨロになって帰っていったけど
この人にとって、「余力を残さないこと」だけが自分を認められる証なのかもしれないなと思う。
2025年の横山裕は、本当に凄かった。
レギュラー仕事に加えてソロプロジェクト、24時間マラソン、4本のドラマ出演、何本のバラエティに出演したのか、44歳にして誰もが心配するほどの仕事量。
そうやって自分を追い込んで、その自分を追い抜くことだけを確かな手応えにして、自信にして、そうやって自分の人生を花丸にしてきた人なんだなと思う、
美しすぎて眩しすぎて本当に凄まじい生き方だなと思う。
誰より努力する人を嗤える人はいない。
その生き様ひとつで一体何人の心を動かしたんだろうと思う。
「あんまりラストとか言いたくないんやけど…
俺は最後だと思って悔いのないよう出し切るから。あなたも本気でぶつかってきて!」
そんなふうにして、自分のため、目の前にいる観客一人ひとりのために、ソロツアーからずーっと真っ直ぐに歌い続けてきた横山さんの空気が変わったのは、Aぇグループの曲のカバー『神様のバカヤロー』が始まる直前だった。
「神様おったら頼むわ…」
暗い照明の中、掠れた声、嘆くようにそう小さく呟いてイントロが始まる。
この日の前日の公演中、リチャくんの件がニュースになっていたから
その言葉の意味を理解するのに時間はかからなかった。
この日のこの歌の切実さを、私はうまく言葉にできない。
ただそこから、次の曲『プライド』まで、横山さんは遣る瀬無さも憤りも悲しみも無力感も祈りも愛も、すべての感情をそのまま歌に乗せて、そのまま天に差し出していた。
「歌をはずしても 人をはずすなよ
そんな、そんな歌を歌いたい。
ありがとう嬉しい好きだよ それでいいんだよ。
そんなシンプルな事でいいんだよ それがいいんだよ。
いらないプライドは捨て
大事なプライドは 胸ん中しまって。
明日はくる どう生きるかは自分次第。
そう難しくないから 笑ってる方が絶対にいいよな。
明日はくる どう楽しむかはあなた次第。
楽しいんだよ めんどくさいぐらいが丁度いい。」
生きていると、本当にどうしようもないことだらけで
どれだけ願っても自分の手には負えないことだらけで
つい誰かや…
それこそ神様を恨んだり、被害者のような顔をしたくなってしまうけれど
自分が選べるのはただ、「こう生きたい」と願って、ブレそうになりながら何度も自分を引っぱたいて、願う通りに生き抜くことだけだなと思う。
ソロツアーと「YYSS」を通して
横山さんには、何度も何度も何度もそのことを教わって、
真正面からそのメッセージを浴びて、
思い出すだけで背筋が正されるような、勇気が湧いてくるような
歌で、生き様でそう思わせてくれる、横山さんは最高のロックスターだった。
この日の『ど真ん中』前のMC、
「目先の結果や結論に左右されんといてほしい」
「生きていると何が正解なんかわからへん、人間なんて絶対失敗するねんから」
「だから、自分でどう正解にしていくかだけ」
横山さんはほとんどずっと泣きながら話していた。
この日のこの言葉は、これまでと違って自分や自分たちのためだけに語られた言葉ではなかったように思う。
(※後から思うと、「俺やすばるのことだけじゃなくて」「今の時代、情報も溢れていて、何が正しいかなんてわからない」と語っていた前日のMCも多分そうだった。
恐らく彼は前日の公演前の段階で、事件のことを知っていたのではないかと思う。)
「これからも、俺らの人生正解にしたらええから!!」
本編ラスト、そう泣きながら叫んでいた横山さん。
その叫びは、みんなの人生を正解にするまで、後輩たちの運命も共に抱えて生きていくという決意表明のように私には聴こえた。
この人は、関わった人全員を幸せにするまで、全部背負って生きていく人なんだなと思った。
●最高の親友たち
「久しぶりに僕のことを観てくれる人もいると思うし、初めましての人もいると思いますが、最後まで楽しんでいきましょう!」
冒頭から3曲を歌い終わり、渋谷さんはそう挨拶をする。
それから、どの公演でも『さらば』の曲振りの前に、彼は決まっていつもこんなことを話した。
「生きていると楽しいことばかりじゃないけど、どうか、そのままでいてください」
「何も変える必要はないから、自分の心に正直に、ありのままのあなたでいてください」
渋谷さんが日頃から何度も何度も言うこの言葉。
私はこの言葉を聞くたびに、「ありのままの自分でなんかいてたまるか」とずーっと思ってきた。
少しでもマシな人間になろうと努力をし続けていないと停滞して沈んでいってしまう感覚がぬぐえなくて、
何度この言葉を言われても、真っ直ぐに受け止められたことは一度もなかった。
けれど最近になってようやく少しだけわかってきた。
「努力し続けていないと生きている価値がない」と走り続けてしまう自分こそが、自分が選んだ自分であって、
誰になんと言われようと、どう足掻いても、私は私の生き方を変えることはできない。
そして。
わからない、全部何もかも想像でしかないけれど、
渋谷さんは渋谷さんなりに、
自分にどんな期待がかけられて、何を求められているのか
それも一つではない、ファンの数だけ存在するあらゆる種類の欲望、願望、理想、
「アイドルとしての正しい在り方」「グループを辞めた人間なりの正しい在り方」という銃口を常に向けられていることを感じながら、
時にその銃口を自分に向けながら、
それらに応えられない重圧にずっと苦しめられてきたのではないかと思う。
「そのままでいいんだよ」
「ありのままのあなたでいてください」
ある時から、これはもしかしたら、渋谷さんが誰かにかけてほしかった言葉なんじゃないかなと思うようになった。
「7人でいてほしかった」とか
「オタク減らさないためにはもっとこうしたらいいのに」とか「もう傷つけないでほしい」とか
私も胸の中で、彼に対して散々勝手な理想や正論を抱いて、
彼をそのまま「視る」のではなく、なんとか自分の理解できる「型」にはめようとしてきたから。
本当は、それぞれが自分の選んだ道を全うする中で、
惹かれ合ったり、合わなかったらそっと手を離したり、うまく距離を取ることで好きでい続けることを選んだり
ただそれでいいのかもしれないなと、夢物語を見るみたいな気持ちで思う。
みんな、一生懸命だから。
必死で大好きだから、
好きな相手には自分の望む姿でいてほしいとつい願ってしまうけれど
それでも、「そのままでいいんだよ」と伝えることは、「あなたの人生はあなたのもの」という尊重であり、祝福であり、精一杯のエールなのだと思う。
そして、互いの人生を全うした上で、「やっぱり君が好きだよ」って、
それこそ、今の横山さんと渋谷さんのように、互いを認め合うことができたら、そんな幸せなことはないなと、心からそう思うようになった。
「色んな想いで今日ここに来てくれたと思うし、色んな想いでそこにいてくれると思うけど、無理に何かを変える必要はないから」
「あなたの心は、あなただけのものだから」
「僕も、渋谷すばるを全うします。渋谷すばるをやり切ります!」
このnoteの書き出しにも引用した、2023年春のFCイベントMCでも、彼は「渋谷すばるを全うします」と発言していた。
あの時は、自分のファンしかいない空間で、「もう一度自分の人生を抱きしめる」という宣言だったけれど。
今回は、自分に対して思うことがある人たちも沢山いるであろう中での、「これからも自分の選択を貫き通した責任を引き受けて生きていきます」という覚悟の宣言だから、とても重かった。
その切実さを想うと、素直に拍手で称えることはできなかったけれど、この人の人生を絶対に見届けるし、ずっと応援しようと思った。
「今日という日にぴったりな曲がニューアルバムにあって…
是非ここで初披露させてください!」
『さらば』の後は、ずっと『君らしくね』を歌っていたのだけれど、
この日だけ特別に新しいアルバム『Su』の中から、新曲『Final Note』が初披露された。
「何回さよならを言っても
何回ごめんねって言っても
言葉の奥に 微かに見える
本当のことに 触れたくて
いつかまたどこかで会えたら
くしゃくしゃなままの言葉と
殴り書きした最後のページに
残った声 聞いてほしい
言葉の奥に 触れたくて くすぶってる」
ド直球の青春ナンバー、初めて聞くとは思えないほど懐かしい曲で
喉を真っ赤にして歌う渋谷さんと、バンドメンバーのコーラス
恥ずかしそうに再会を願うラブソングが響き渡り、切なさを含んだ多幸感に浮かされた観客が一斉に呼応する。
『さらば』『繋がる』に加え、このライブで新しく披露された『Su』と『Final Note』が収録される新アルバムへの期待感が否応なく高まっていく。
この日の映像は後日MVとしてYouTubeでも公開された。
歌う前に「今日という日にぴったりな曲」と語ったのは、
歌詞に出てくる「いつかまたどこかで会えたら」の「いつか」「どこかで」が、「今日」「ここで」だったから。
今日、ここでまた会えた奇跡を持ち帰り、それぞれが生きていく。
そして。
「今回、この対バンにまで繋がったのは、すべて横山裕の熱い想いが始まりでした」
「ヨコの本気の想いがたくさんの人を動かして、俺も心動かされて」
「ヨコのチームの皆さんも、その想いを受け止めて一緒に戦うんだと一丸となって、俺も感動したその想いを自分の仲間たちに伝えて」
「そこから、お互いのチーム、トイズの皆さんと、インフィニティの皆さん、事務所の方々が連絡を取り合って動き始めて、お互いにリスペクトを持ち合っていい関係を築けたからこそ、このライブが実現しています」
「なかなか前例がないことだけど…今回、ヨコと俺がマニュアルを作ったから」
「みんなもっと自由に、こういう風にやればいいよって。
『好き放題やればいい』ってことじゃなくて!
本気の想い、本当の覚悟があるのであれば、人は動くし、物事は動くから!」
「やるなら本気でやれってことです。
本気で生きていれば、叶わないことなんてないから。なんだってできます!」
「今回、自分と横山裕にしかできないライブがやれたんじゃないかと思います。実現に関わってくれたすべての方に心から感謝します」
「そして、すべてのきっかけを作ってくれた横山裕に!
ヨコ、ありがとう!」
この日の『Sing』前のMC。
「ヨコと俺がマニュアルを作ったから」と言った瞬間、会場中から大きな歓声が上がった。
ここまで公演を重ねてきた流れの中で、7年間の道のりが間違っていなかったこと、そして横山さんとの絆が彼の中で「確信」に変わり、
そこから一歩先へ進んで、
未来のエンターテインメントの形を考える上で、この「YYSS」という公演が持つ意義を広く伝えるところにまで辿り着いたのだなと思った。
横山さんの挨拶もそうだった。
最終日、彼の言葉はこの場所にいる自分たちのためだけではなく、後輩たちへ向けたエールの意味も含んでいた。
どうしようもないことが起こった時、
どれだけ願っても自分の手には負えないことが起こった時。
彼らはまず誰より自分自身のために、自分の生き方を貫き、全うしようとする。
誰かの役に立つことや、何かを変えることなんてその先にしかなくて、ただ本気で自分の人生を生き抜くことだけが、何かを動かし誰かを救うことに繋がるのだと、
表舞台に立ち、たくさんの人に希望を与えて生きてきた彼らは、経験として知っているんだろうなと思う。
「今日ここに来てくれて、そこに居てくれてありがとう!!
あなたに、そしてあなた以外のすべての人に!!
大きな拍手を!!!」
「心からのリスペクト、心からの感謝を!!
最高の親友、横山裕に大きな拍手を!!!!!」
横山さんと同じように、渋谷さんも声を枯らすほど絶唱して
「あなた/私」に精一杯の感謝を伝えて、「最高の親友」の名前を呼んで、「YYSS」オーラス本編の幕を閉じた。
そして夢の時間は、残すところ、あと30分となった。
●“またね”
「すばると出会えていなかったら今の俺はないから」
「…親友でいてくれてありがとうございます」
アンコール、横山さんはそう言って恥ずかしそうに笑った。
それから二人は、
「対バンというには5本もあったから、短いツアーが終わっちゃうみたいな感じ」
「7年ぶりと言っても空気感はあの頃と変わらない」なんてことを、しみじみ笑いながら話した。
そして、2024年の秋、横山さんから久しぶりに連絡があって、再会を果たした日が、偶然にもちょうど丸1年前の10月5日だったという事実を明かし、
その日撮ったという、酔って真っ赤な顔をした二人の写真がスクリーンに大映しになった。
それから、その撮影をしたのが渋谷さんの今のマネージャーである菊岡くんであること、その場に横山さんの弟さんである充くんも居たこと。
15年前、横山さんがお母さんを亡くされた際に、引っ越しを手伝ってくれたメンバーが菊ちゃん、WEST.の桐山くんと濱ちゃん、室龍太くんであったこと。
その3人が10月4日の「YYSS」公演に見学に来ていて、横山さん、渋谷さんを含めた6人で集合写真を撮ったことなどが明かされた。
あまりにも美しい伏線回収。
だからといって、これまでの日々にあった涙とか、絶望とか、一切何もなくなりはしない
なかったことにはならない
確かに存在する傷跡と、それでも歩んできた足跡。
その年月の先に、この日の二人の笑顔はあった。
それから二人は『Su』で最大級に騒ぎ散らかして、最後の『繋がる』前の挨拶が始まる。
「さっきすばるも言ったけど、僕たち二人だけだったらこんなステージはできていないと思います」
「トイズのスタッフの皆さん、インフィニティチーム、うちの会社が協力し合って実現しました。ありがとうございます!」
「こうやってすべては繋がっていくんやなと思います」
スタッフに、観客に何度もお礼を言う二人に、私たちは惜しみない拍手を送る。
それから、
「今日、ゴールテープは切りますが……」
そう言って横山さんは一瞬黙って、
「俺は、またすばると一緒にやりたいと思っています」
真っ直ぐに顔を上げて、でも恥ずかしそうに、そんな言葉を続けた。
「いつやれるかはわからないけど、言霊ってあると思うんで!」
それを聞いて、私はもう倒れそうだった。
こんな、はっきりと口に出すなんて。
「可能性を匂わせる」とかそういうレベルじゃなくて、はっきりと言葉にする横山さんが、あまりにも横山裕で、完全にやられてしまう。
スクリーンに映った渋谷さんが嬉しそうにはにかんでいて、嬉しそうで嬉しくて死にそうになる。
今度はその言葉を受けた渋谷さんが口を開く。
「ソロプロジェクトってとりあえず1年限定やって聞いてるけど…ひとつだけ。一人で歌を歌うこと、これからも続けていってください」
「生き様でみんなを感動させることができる人は、歌を歌うべきなんです!」
「(同じ歌詞でも)説得力のない人が歌っても、ただの歌詞やけど……言葉の奥行きを感じさせることができるのは、あなたが凄い人だからなんです」
「そういう人は、歌を歌うべきなんです!!」
渋谷さんの言葉の勢いが、熱量が凄くて、この対バンで横山さんのライブを観て、心からそう感じたであろうことが伝わってくる。
「横山を久々に観て、『めちゃくちゃ愛されてるな』と思ったし、自分もそうありたいなと改めて思った」
「『正しく向き合うって、どういうことだろう』と考えさせられました」
渋谷さんの言葉を聞いて、今度は横山さんが嬉しそうにはにかんでいて、ああ、やっぱり少年漫画の主人公のような二人だなと思う。
「こんな景色を見ちゃったらやめられないですね」
「やりましょうよ! いつだっていいですよ」
そんなことを言い合って
二人、客席に向き合って。
「こうやって、俺とすばるは本当に深いところで繋がっています。
それを繋げてくれたのは、あなたなんです」
「あなたも、俺とすばると繋がっているんです」
そして、二人は最後の『繋がる』を歌った。

オーラス終演後、SNSに公開された1枚。
プロジェクトの始動以来、公式にアップされた二人が一緒に映っている写真は、後にも先にも「音楽で向き合っている」この1枚だけだった。
美学をわかっている、いいスタッフに支えられているんだなあと思った。
後に渋谷さんはラジオで、
「歌いながら向かい合ってる時は、真っ直ぐに目は見られなくて、お互いちょっとだけ視線をずらしてましたね」と笑いながら話していた。
聞いていてこちらが恥ずかしくなるような賛辞をお互いに送り合うのに、
真っ直ぐに目を見つめ合うことはできない。
横山裕と渋谷すばるは、そういう二人だった。
「僕から紹介させてもらいます!
最高の“心友”です。「親しい」なんて当たり前のことなんで!
心の、人生の深いところで繋がっている仲間……横山裕!!!」
「僕からも紹介させてください!
俺も心友でいられて嬉しいです。
唯一無二のボーカル! 最高で最強のボーカル! 渋谷すばる!!!」
「今日という日、俺たちを見届けてくれて感謝しています!」
「ありがとうございました!!!!」
大きく手を振って はけていく二人。
終演アナウンスが退場を促す中、まだまだ奇跡の余韻に浸っていたくて、
しつこく鳴りやまない拍手、今日3度目の「ヨーコ!! すばる!!」コールが巻き起こる。
少しの時間を置いて、Wアンコール、
「もう歌う曲ないから! ごめん!」と笑いながら、挨拶だけをしに二人は再びステージに現れる。
「さっきも言ったけど…また一緒にやれるように俺ら頑張るから!
こうやって言ったからには、また明日から覚悟を持って生きていかなきゃ」
「お互い相手が頑張っている限り、しんどくても諦めるわけにはいかないですからね」
「この約束があるから頑張れるよな」
「その時、また来てよな。彼氏とか選ばないでね?」
「ありがとう!!」
「またなー!!」
この挨拶が、
良すぎて、良すぎて、考えられ得る限り最高で最強のふたり過ぎて
私はもう、ずーっと胸がいっぱいで、不安だったことも全てが大丈夫になって、もう、これ以上満たされることなどないだろうなと思った。
きちんとこの後、また分かれるのだ、二人の道は。
渋谷さんが横山さんに「一人で歌い続けてほしい」と伝えたことや、
二人が再会を誓ったことで、それこそ、ここまで築き上げてきた5人の/7人のバランスが崩れることを危惧するような声も聞かれたけれど。
そういう類の話ではなくて、彼らが交わしたのは、堂々とまたそれぞれの道を進むための固い握手だったのだ。
この対バンはもともと、彼らが互いの、自分自身の、そしてファンのここまでの人生を、
必死で生きてきた「今」を肯定するためのものだった。
横山さんがやろうとしたことは、自分や渋谷さんの現状だけでなく、同時に「SUPER EIGHT」として進化した今のグループの形の肯定でもあった。
そうして互いの絆を確かめ、これまでの人生を讃え合った二人は、また未来を花丸にすべく、自分の信じた道をそれぞれ歩き出す。
その夜、渋谷さんはインスタのストーリーに、
「全ての人に心から感謝します。」「横山裕、ありがとう」
「またね」と投稿した。
たとえ遠い未来だとしても、
“またね”の約束があれば、幾らだって強くなれる。
幾らだって生きていけるということ。
そんな風に生きる彼らの姿を見ていたら、東京公演を迎える前に抱えていた不安や寂しさはもう綺麗に消えて、清々しい充足感だけが胸に残っていた。
そして。
この有明の三日間でとにかく感じたのは、横山裕と渋谷すばるは友達なのだということ。
メンバーであった以前に、二人の間にしかない関係性があり、絆があり、
それは他の誰が考えるよりも、恥ずかしくなるほど圧倒的に純粋で無垢なものだった。
これはただ、二人の友情と本気が実現させた奇跡の物語で、きっと替えはきかない。
それでも、渋谷さんが「俺とヨコで(規格外の公演をする)マニュアルは作ったから」と語ったように、
二人の男が貫いた個人的な友情が、奇跡と奇跡を繋いでいき、新しい世界を切り拓いた。
「YYSS」とは、そういう物語だった。

●その後のこと
それは、まだ公演の興奮冷めやらぬ10月7日のことだった。
渋谷さんは突然、Xにこんな長文を投下した。
これは何のタイミングなのか、偶然なのかもうよく分かりませんが、
ヨコとの対バンが終わって、
11/5リリースのNew Album「Su」のプロモーションを頑張るぞ!の日々なのですが、先程、ある方のラジオ番組の収録をさせて頂いていたのですが、収録を終えて帰ろうとしている時、隣のスタジオから聴き馴染みがあり過ぎるバカでかい関西弁が聴こえて来て、無意識にその声に反応してスタジオを覗くと、見覚えがあり過ぎる顔がラジオの収録をされていました。
その方の周りのスタッフの方々に勧められるままにスタジオに入っていくと、やっぱりどう考えても知ってる奴だと思ったのですが、
バカでかい関西弁で、ぶどうについて熱弁されていたので、おそらく僕の勘違いだと思います。
もし勘違いじゃなかったら、約7年ぶりの再会!?みたいな感じだと思われますが、
聴き馴染みあり過ぎるバカでかい関西弁と、
見覚えあり過ぎる顔でも、
果物屋さんの知り合いはいないので、
おそらく見間違えかと思います。
「8.2万いいね」がついたこのポスト
7年ぶりにヒナちゃんと再会を果たしたという事実をリアルタイムで報告してくれたということも含めて、
すべてが奇跡のような出来事だった。
スタッフの方が呼び込んでくれたのも、その気持ちを受け取った渋谷さんが素直に応えて、きっと7年ぶりに何かを話したであろうことも、
全部全部、このタイミングだからこそで
横山さんの意志が作った土壌で、
二人の再会が叶った
本当に、絶対に神様はいるし
やはり三馬鹿のバランスは完璧なんだと思った。
その後、ヒナちゃんはFCのボイスコンテンツやブログで二度にわたり、「ちっちゃい妖精」と再会したお話を教えてくれた。
「果物屋さん」と「ちっちゃい妖精」
お互い素直じゃなくて、照れ隠しに溢れた二人だけの言葉選び。
それでも、湧き上がる嬉しさが零れ落ちてくるような
その後、ヒナちゃんが出演した該当のラジオ番組において、二人の再会のドキュメンタリー、その様子がカットされることなくそのままOAされた(こちらの記事にもその時の様子が記録されている)。
「色んなものを足していこうと……んおおお!! すばるやぁ!!!」
「たまたま…あっ、こないだヨコが世話になってなあ、ありがとうなあ!」
「あ、せやんなあ! いやあ、えっ、あ、かまへんかまへん!!」
「またなあほんなら!! うん、またまた!!」
「いやいやありがとうありがとうわざわざ!!」
「ほんま…ちっちゃいなあ相変わらず!!」
「あらあら、こらまた、若手も世話になってるみたいで……あ、そうなんや!!」
(※これは菊ちゃん、もしくはスタッフに言っているのかなと思いました)
「またどっかで!! えらいすんませんほんまに!! ありがとうなすばる、ほんならまた…」
ブースの外にいるらしい渋谷さんの声は聞こえなくて、
ただ、想像していたよりもずっとずっと、ヒナちゃんの声は嬉しそうだった。
わからない。
二人のことは、二人にしかわからない。
けれど、昔ヒナちゃんにもらったというバッグを今も日常的に使い続けている渋谷さんと、『半分論』の序章で渋谷さんの名前を出したヒナちゃん
ヨコヒナみたいに、一蓮托生じゃなくても、
横すばみたいに、連絡を取り合わなくても、
二人には二人にしかわからない、特別な関係性があって
ただ、どちらから歩み寄るわけでもない二人は、きっとお互い何かのきっかけを待っていたような
それが、思ってもみないタイミングで不意に訪れたことに
お互い、安心したような、変わらない姿を見て、心のどこかにあったわだかまりや強がりが一瞬にして溶けて
思わず互いのファンにも報告したくなってしまったのかなと想像させるような
そんな温かさが、OAされたラジオには、あった。
それから、11月5日、渋谷すばるの“最高傑作”『Su』が遂にリリースされた。
『繋がる』をセルフカバーした1曲目、The Birthdayメンバーの演奏による爆裂イントロを聴いた瞬間に、あ、桁違いだわ、とわかるこのアルバムは、
ロックとポップスが高次元で融合していて、勝ち気で自由で衝動性に溢れ、細部にまで遊び心と愛情と執念と血液がこれでもかと行き渡った、最新、最強、弩級のエンターテインメント作品となっていた。
既に披露されていた『さらば』『Final Note』、横山さんがゲストボーカルとして参加した『Su』のほかにも、
キラキラとした大人なファンクサウンドでこれまでの自作曲のイメージを覆したダンスナンバー『With U』や、
関ジャニ∞の名曲『宇宙に行ったライオン』の藤森真一さんとタッグを組み、アンサーソングとして制作された『Jam Jam Jam』が収録されるなど、
「エイト時代の渋谷さんが好きだった」というファンにとっても楽しめるようなサービス精神に溢れている。
そこに「無理に歩み寄っている」気配は一切なくて、そういうものも心から楽しめる余裕が今の渋谷さんにはあるんだなと伝わってくる、その事実そのものが何より嬉しかった。
アルバムの最後を飾る、『ひとひら』という曲がある。
「君が笑えるように 今日を歩いてみるよ
何気ないこの日々が 誰かを灯しますように」
レコード会社のスタッフに「今のすばるくんだったら、誰かの支えになるような曲を作れるんじゃないか」と言われ、初めてそういう心持ちで書いたというこの曲。
「風に舞った桜が 肩にひとひら落ちた
あの日の言葉が 胸でまだ浮かんでる
“行ってこい”と手を振った声
今も背中を押してる」
誰かの支えになるような生き方をしたいと願う渋谷さん自身が、
かつて“行ってこい”と見送ってくれた6人の声に、今も背中を押されているのだと歌う。
「君の前でも言えない
本当は怖くて仕方ない」
「選んできたことに 正解はないから
ずっと少しだけ怖かった」
「怖くて仕方ない」「ずっと少しだけ怖かった」と
ようやく零せるようになった渋谷さん。
ここまで長かった、でも終わりじゃない、まだ道は続いていくけれど、
この声の、強さが、優しさが、切なさが、
今の渋谷すばるだから、どうか一人でも多くの方に聴いてほしいなと私は強く願う。
それから数日後の11月9日。
アルバム『Su』のプロモーションに励む渋谷さんのインスタの投稿に、亮ちゃんが“いいね”をつけるという事件が起こった。
それは、アルバムタイトルにちなみ、ダイアンの津田さんとコラボしたリールで
(ちなみにこの企画は、「YYSS」の罰ゲーム映像を制作した『クロニクル』総合演出の福山さんが繋いでくれた縁によるものだという。ここでも全てが“繋がっている”)
先日亮ちゃんが参加したイベント『NO GOOD FES』に津田さんもゲストで参加されたということだったから。
そして、その日はKAT-TUNのラストライブが行われた翌日で、赤西くんがインスタにメンバーとの写真を投稿した日でもあったから。
(直接的に関連性はないけれど、『YYSS』があった直後にこのKAT-TUNのライブや再会劇があったこと。
こういった彼らの「本気」が切り拓いた前例の積み重ねが、きっと事務所の後輩たちにとっても、生きやすい未来へと繋がっていくことだろう)
亮ちゃんからすると、7年の時を経て何か自分からアクションを起こすには、これ以上ないタイミングだったのかなと思う。
それでも、強火のす担として知られる亮ちゃんが、ずっと渋谷さんを畏れ憧れ続けた亮ちゃんが、彼自身も一人になってから、「ツインボーカルの僕の片割れが何処かへ行ってしまった」と語った亮ちゃんが、
どんな気持ちで「♡」のボタンを押したのだろうと想像するだけで、胸を搔きむしられるようなたまらない気持ちになる。
渋谷さんは当然、なんのリアクションを見せることもなかった。
けれど、
その数日後に収録されたラジオで、彼はこんな発言をした。
(活動をしていく上でのモチベーションを聞かれて)
「やっぱり…仲間、SUPER EIGHTの5人とか、錦戸亮もそうですけど、仲間たちがそれぞれの場所でバリバリやっているので。その存在が一番でかいですよね。
それがある限り負けられないので。たぶん僕以外の全員も思っていることだと思う。
場所が変わろうと、やっぱりその関係性は変わらないです。それが何より有難いことですよね」
私が知る限り、渋谷さんが脱退後、亮ちゃんの名前を公ではっきり口に出したのは、これが初めてのことだった。
渋谷さんなりの亮ちゃんへの返答な気がして仕方なくて、
その答えが亮ちゃんに届くのかわからないところまで含めて。
どこまでも“気まずい”二人だなと思って、愛しかった。
(それにしても、【前編】に引用した「二十祭」における横山さんのMC。
「抜けたメンバーに負けたくないって気持ちがある。切磋琢磨してみんなで幸せになりたい」って、本当に彼らは離れた場所にいる間も同じことを言い続けていたなと思う。)
月日は、流れる。
傷跡も焼き跡もなかったことにはならないけれど、
そんなふうにして、月日は、流れる。
余計なものは少しずつ剥がれ落ち、
絡み合い鎖となった絆は少しずつほぐれて、
やがて大切なものだけが残っていく。
11月26日から三日間行われた、SUPER EIGHTの武道館公演。
私は渋谷さんの現場に駆け付けていて、参加することはできなかったけれど、
サポートなし、5人だけでステージに立ちバンド演奏を行ったと聞いて、横山さんがギターを手にしたからこそ生まれた、今のエイトの形なんだなと思った。
「やっぱり5人が最高」という感想で溢れかえるTLを、私は少しだけ寂しく、眩しい気持ちで眺めながらスクロールしていく。
その寂しさもまた、頼もしくて愛しいなと思う。
渋谷さんは上海、台湾での公演を経て、2026年1月24日から、いよいよ国内でも最強の「Su」ツアーの幕を開けようとしている。
とんでもないツアー、楽しくて、今から終わってしまうことが寂しくて、私はもう泣いてしまいそうだ。
「観に来てくれれば絶対に幸せにするから」
そう胸を張って宣言する今の渋谷すばる、東京大阪公演は完売しているけれど、福岡、名古屋、神戸など、他の都市での公演はまだ残っているところもあるから。
どうか、一人でも多くの方が、観に来てくれますように。
私はずっと、祈ることしかできない。
渋谷さんのことが、本当に大好きで
ただずっと、笑っていてほしいなと思うけど、それすらももう押し付けたくはないなと思う。
誰がそばにいても、いなくても、一人でも、たとえその場所が地獄でも、手の届かない楽園でも。
最後まで見届けたいなと願うので、どうかありのままのあなたで。
“またね”の約束だけを胸に。
あなたの進む道を、ずっと応援しています。
