【小説】メンズエステのめぐみさん 最終話
最終話 めぐみと愛
「ねえ。美咲。ついに明日だね。結婚式だね。」
「うん。なんか実感が湧かない。あの食事から1年しか経ってないのに、こんなに私が幸せになれるなんて思わなかったから。」
電話越しの美咲の声は充実感であふれていた。
「私、実はまだ愛ちゃんに謝れてないことがあって。」
「ん?なに?」
「私が愛ちゃんにメンズエステを紹介したじゃん?本当は嫌じゃないのかなって。無理してないのかなって。本当にごめんね!」
「え!そんなこと思ってたの?」
「うん。」
「嫌だったらとっくにやめてるよ!
私はこの仕事が天職だと思っているから。確かに最初は嫌だったけど、そのおかげでまた美咲にも会えたし。渡辺さんと愛ちゃんのキューピットにもなれたしね!」
「ならいいけど。でも、本当にありがとう。愛ちゃん。」
「やめてよー!恥ずかしい!でも、明日は美咲の晴れ舞台を楽しみにしてるね!」
また明日。と電話を切り、身支度を再開する。
化粧が終わり鏡を見る。よし。「めぐみ」に変わった。
店長からショートメールがきた。
【今日は20時からの予約と言いましたが、予約の石井様が19:30から変更できるかと連絡がありました。仕事中であれば申し訳ないのですが変更可能ですか?】
【今家で準備をしていました。もう家を出れます。お店に19:20には行けるので、可能とお伝えください。】
返信すると部屋を出た。
「すみません!時間を変えてもらって。」
「いえいえ。平日は普段は19:00に入ってますから大丈夫ですよ。気にしないでください。」
「そう言ってもらえると助かります。」
めぐみは、背中の施術を始めた。
「めぐみさんはこの仕事だけをしてるんですか?」
「いえ、普段はOLもしています。」
「そうなんですね。ダブルワークなんて、本当に凄いですね。
正直2つも仕事やりたくないってならないですか?僕なんか1つだけしか仕事をしてないのに嫌で嫌でしょうがなくて。」
「ふふ、私も思ってますよ。」
「やっぱりそうですよね。こういう仕事って大変ですよね?変な客も多いですよね?」
「ん?こっちじゃなくてOLの方ですよ?」
「あ、そっち!?」
驚いた顔をする。
「はい。こういうお仕事って正直あんまりよく見られないじゃないですか?現に石井さんも間違えましたし。」
「まあ、、、そう思われがちですよね?」
「ですよね。でも、私はこの仕事は凄く楽しいんです。色々なお話ができるし、色んな人の人生がわかりますし。最近は誰にどう思われても、自分が楽しく、イキイキ働けるってだけで誇れる仕事なのかなって思ってます。」
「なんか、それっていいですね。僕にもそういう仕事が見つかればいいな。」
「見つかればベストですよね。でも、見つからなくても楽しいことが見つかればいいんじゃないですか?」
「楽しいこと?」
「はい。その楽しいことのために仕事を頑張る。モチベーションにする。私も、OLをやめて、メンズエステだけにすることも考えました。でもそれだけだと色々と不安だから、嫌なOLもしているんです。そしたら、嫌なOLも楽しいメンズエステの為に頑張れるようになったんです!」
めぐみはくすっと笑った。
「楽しいことが見つかれば嫌なことも頑張れる。か。」
顔を耳元に近づける。
「もし、石井さんに楽しいことが見つからなかったら、見つかるまでは、私に会うためにお仕事頑張るのも一つですよ?」
石井の耳元でつぶやく。
「それも1つかもね。」
二人は笑った。
「では、次は四つん這いになってください。これからもっともっと楽しい時間のスタートですよ。」
あとがき
今回は、2作目の小説でした。
前回に比べて、できるだけ人間模様を書きたいと思いましたが、人の心を書くのってすごく難しいなと実感しました。
と、同時に、普段の生活からもっとアンテナを張って、色んな事に興味をもっていきたいな思いました。
いいねやコメントを下さった皆さん、ありがとうございました!

