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🇮🇳note記事 第2話|インドでパンチャカルマ 



初めてのインド、コチ空港に着いたのは夜中の12時を過ぎていた。

にもかかわらず、空港はごった返していた。時間軸が違う。ほぼインド人の波に圧倒されながら、どこかスパイスの香りが漂っている。非日常が、いきなり鼻から入ってきた。

このインド行きは、アーユルヴェーダ繋がりのツアーだった。でも病院に入ればそこからは自分一人。自分の体と、自分の内側とだけ向き合う時間が始まった。

インドに向かう前から、食事は肉も酒もすでにやめていたので体に入れるものを以前より丁寧に選ぶようになっていた。その準備が、インドでの生活への適応を少し早めてくれたのかもしれない。

空港にはタクシーの迎えが来ていて、病院への道は案外あっさり切り開かれた。夜中のインドをタクシー運転手はやたらとクラクションを鳴らして追い抜いていく。「Slowly!」と言っても、聞いてるのか聞いてないのか、クラクションを鳴らしながら先を急ぐ。これがおそらくインドのデフォルトなんだな、と後で気がついた。

正直、見慣れない夜のインドの街並みは少し閑散として、怖かった。ここで一人降ろされたら嫌だな、という感覚が頭をよぎった。

病院に入ると、外の世界は遮断された。

食事は徹底的に管理された。1日3食、それぞれに役割があった。

朝は瞑想とヨガから始まる。参加は自由だったが、せっかくインドに来たんだという気持ちもあって参加するようになった。ヨガは店でワークショップを開いていた縁で少しかじってはいたが、本場インドの朝にやるヨガはまた別物だった。静かな空気の中で体を動かすと、頭がすっと整う感覚があった。

朝食は軽め。アッパムやイドリーにチャトニが添えられる。昼が一番豪勢で、カレーにドーサ、ケララシチューと品数も増える。そして夜はお粥だけ。体を休ませるように、静かに締めくくる。

3週間、動物性のものは一切使われていない。

カレーのカフェをやっている自分にとって、これは単なる食事ではなかった。エスニックレストランで働いていた頃はグレイビーベースの北インドカレーが中心だった。そこから10年近く、自分なりにカレーを研究してきた。

ところが病院で毎朝出てくる南インドのカレーを口にした瞬間、妙な感覚があった。

知っている。この作り方、知っている。

自分が長年研究してきたカレーの作り方が、スパイスの配合以外のところでほぼ南インドのサンバルカレーと一致していたのだ。意識していたわけではない。ただ自分の舌と感覚を信じて研究を重ねた結果が、自然と南インドの方向に寄っていた。

なんだこれは、と思った。インドに来る前から、自分はすでにここに向かっていたのかもしれない。

日本でカレーを作っていたつもりだったが、本場の南インド料理は別物だった。スパイスの奥行きが違う。体への入り方が違う。毎日食べているのに胃が重くならない。むしろ日を追うごとに体が軽くなっていく。

しばらくすると厨房にお邪魔するようになった。料理人たちにレシピを教えてもらいながら、南インドの食の奥深さを少しずつ知っていった。これは修行だ、と思った。治療しに来たつもりが、料理人としても何かを受け取っていた。

病院には常にラーガが流れていた。これが心地よくて仕方なかった。

治療は3つの段階で進んだ。

最初の1週間は「アビヤンガ」。温かいオイルを全身に丁寧に刷り込んでいく。最初は気持ちいいだけだった。でも毎日続けるうちに、体の奥に眠っていた何かがじわじわと動き出すような感覚があった。僕は中耳炎気味だったので、鼻への「ナスヤ」療法も同時に受けた。鼻の奥に薬用オイルを注入する。初めての感覚——正直、かなり独特だった。でも施術後、頭が不思議とスッと軽くなった。

2週目に入ると、薬用のギーを飲む段階になった。体の内側から毒素を引き出すためのプロセスだ。飲んだ日は食事もほとんど摂らない。それを3日間続けた。

1日目は、まだよかった。

2日目から、体が重くなってきた。石を飲み込んだような感覚。起き上がるのも億劫で、気持ちにも余裕がなくなってくる。なんでこんなところに来てしまったんだろう、という気持ちが頭をよぎりはじめた。

3日目——正直、かなりしんどかった。体の中で何かがせめぎ合っているような感覚。でも同時に、何かが出ていこうとしているのも感じていた。

そして3日目が過ぎた朝——普段では考えられないような排便があった。何か得体の知れないものが体の外に出ていくような感覚。これは本当に衝撃だった。そこから急に、体が軽くなった。頭まで晴れた。あの3日間の重さは何だったんだというくらい、嘘みたいに体が動いた。

体の中で、何かが変わり始めていた。


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このインドへの道を開いてくれた妻や現地で支えてくれた方々への感謝は、言葉にしきれない。🙏

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第1話「インドへ行ったわけ」も読んでいただけると嬉しいです🙏

第3話 浄化の果てに再会










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