あむねむね#43 倒れて救急病院に搬送される
前号からの続きです
商社1年目に私が担当した製品は、ステンレス製品、溶接棒、トラックエンジン用のピストン、ピストンリング、工業用白金とパラジウムなどでした。その中でもステンレスワイヤーは、ステンレス線材を束にしたものが数百束、それをステンレスバンドルと言いましたが、一輸出毎に200以上もありました
一バンドル毎に、その直径と公差、長さと公差、純重量と公差、バンドルを加えた総重量と公差の5種を一行ずつタイプで打ち込み、それを200バンドル以上一つのインボイスとパッキングリストに打ち込んでいきます
輸出書類に打ち込む前に、その製造会社から電話がかかります。相手の担当者は、バンドル毎に明細を言います。それを電話で聞いて、紙に書き、一つずつ確認を取りますので、平均して1時間以上の電話となりました。大阪の製造会社から私が勤めていた東京の商社に電話を掛けますので、電話代は大変掛かったものですが、一つのインボイス全体の請求額は、2千万円を超えていましたし、利益もそれなりに取っていたので、電話代金は必要経費でした
当時、ファックスはなく、テレックスでそれを書いて打ち込んで、商社に送っても良かったのですが、そういった設備を製造会社の担当部署は持っていなかったので、電話連絡となったのです
そうやって書き取った明細に従って、輸出通関用のインボイスとパッキングリストを作成します。今だったら、電算機に刷り込んだワープロソフトで打ち、間違いは画面を見て訂正しますし、インボイス用に打ち込んだ明細は、同じ明細データを利用してパッキングリストの作成ができます。あるいは、電子メールで送られた明細をそのままコピーして、インボイスとパッキングリストに貼りければ足ります。なんとも便利な時代になったものです
これが毎月2回ほどありました。製造業者からそういった電話連絡を受けると、配船会社に連絡を取り、中国の港向けの船舶を予約し、中国五金進出口公司に、総バンドル数、ネット重量、総重量、請求金額、船舶名、出航予定日、到着予定日を打電します。これは、既に受領している信用状の金額以内に収まります
その他に、ピストン、ピストンリング、溶接棒、工業用白金とパラジウムの輸出書類も並行して作成し、配船し、中国五金進出口公司にその詳細を打電します。もちろん全て英語です
そういった仕事をしていたし、間違いのない書類作成を大量にこなし、連日の帰宅は深夜に及び、土曜日、日曜日は、書類整理、打電などで出社し、日本の景気が熱く、まさしく泡沫景気の始め頃の様相を呈していて、商社員は、寝食を惜しまずというか、月、月、火、水、木、金、金と仕事に精を出していました
健康診断で十二指腸潰瘍の恐れありという警告を受けても、病院に行く暇もなく、仕事を始めて2年が経過し、タイプ処理も正確で速くなり、貿易業務の英語力も高まり、他の業務も確実にこなせるようになり、仕事中に、「あっ、俺は本物の商社マンになった。仕事のこつがつかめた」と思う瞬間が訪れました
その時、突然、鳩尾(みぞおち)近辺に猛烈に刺すような痛みが走り、それに耐えきれずに、立ち上がった時、記憶がなくなり、そのまま気絶したのです
私は、救急車に載せられ、近くの救急病院に搬送されました。十二指腸潰瘍が悪化し、腸に小さな穴が開いたため、猛烈な痛みが走り、その痛みで気絶したようです
続く
