掌編小説『炎の清掃員』
瓦礫の山を掻き分けて。
水の流れで清きを保ち。
これは炎の清掃員。
明日は明日の風が吹く。
……いや待てよ。私は炎の清掃員。
木こりが斧を湖へ。
ならば湖の管理人に連絡しなくては。
唄を聴きながら燃えるハートの清掃員。
「あ、もしもし白鳥さんですか?どうも薪です。実は木こりの名田さんが斧を湖に落としたそうでして……。え、今忙しい?いつまでも掃除してないで身の振り方を考えろ?」
白鳥さんが黒鳥さんになっていたか…。
虫の何所がわるかったんだね、スワン、スワン。
炎の清掃員は、ぶるりと震えた。
湖に入ることを懸念したのではなく、ただ単に自らがおやじギャグを言う事実に戦慄した。
炎の清掃員・薪安良太(まきあらた)は既に裕福だったが、今日は財布も寒かった。
仕方なしにATMへと向かうと同期の土井さんに会った。
「あぁ、薪さん。久しぶり。今度家電量販店で働くことになってさぁ。え、名田さんの斧が湖に?
斧の重量と湖の水深は? ふむ、そんなに深くないね。場所の目処が付けば、湖に流れはないから、この鯉型ロボットでみつけて、舟で引き上げたら良いよ。底引き網? それなら水嶋さんに聞くといいよ。」
薪さんは土井さんの鯉型ロボットを買い、急いで水嶋さんの元へ向かった。
「どーもどーも、薪さん。水嶋ですー。湖の底引き網? 耐久性を見てみよう。魚貝類や土や塵も網に掛かるからね。鯉型ロボットで斧が見つかれば、水底ごと物を引き上げられる道具が作れるよ。」
こうして薪さんは、木工の源さんに辿り着きました。
木工の源さんは、一度斧を掬うのに必要な木材で、大きな回収機を作りました。
あとはクレーンゲームの要領です。
すべては解決しました。
「ふぅ……みんなでちょっとずつ力をあわせて、一振りの斧を拾ったか。しかし、白鳥さんなんであんなに機嫌悪かったんだろ?」
白鳥さんが言うには湖の水質が悪くなり、資源としての水源が危機なのだとか。
「人数を賄えれば、どうってことはないよ。だって斧は引き上げられた。」
「金の斧、銀の斧の話は知っているかい?あれは錬金術の解釈もできてね。」
「鉄の斧を正直に使えば、いずれは金銀財宝を築き上げる。しかし、間違った使い方をすれば鉄の斧は溝(どぶ)に捨てることになる。」
「ようは"馬鹿と鋏は使いよう。二度あることは三度ある。三人寄れば文珠の知恵。情けは人の為ならず。仲良きことは美しき哉。"たったのこれだけさ。」
「目標が定まっているのならば、適切な式は既に世界に組まれている。できるかどうかは、やる人次第。目標がこんがらがって塵になっても"時を返せば、玉手箱"だよ。時は不可逆だが、時間はどうやらプールできるらしい。良いこと言うだろ?」
炎の清掃員・薪さんは、先生のように白鳥さんを諭しました。
めでたくなるかは、白鳥さん次第。
地域の新聞屋の烏丸(からすま)さんが、今回の一連の騒動をすっぱ抜き。
地域新聞の一面には、大きく見出しが書かれました。
"間違えて落とした鉄の斧が、地域の水源を救った。"
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければサポートお願いします。
僕の活動費に使わせていただきます😊!