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掌編小説「技後硬直キャンセル界隈」

 はじめとケンジはゲームセンターで筐体格闘ゲームをする仲だ。
 
 紙タバコとパイポを噴かせつつ、二人は隣り合わせで共に10人抜きを達成していた。
 
ケンジ)
 なぁ、はじめよ。
 
はじめ)
 なんだ、よっ、と。
 今17人抜きなんだ。
 
ケンジ)
 お前、遠距離技の後どうしてる?
 
はじめ)
 跳んで技の後の硬直キャンセルするか、そのまま距離詰めてコンボだな。

 下段で倒して起き責めもいいが、下段と中段決めるのは"読み"だろ?

 読みの算段は、外したら半撃喰らう。
 下段はコンボに組み込む。

ケンジ)
 グラップルと投げは?

はじめ)
 基本的にインファイターだろ。
 距離感掴むのが大事だ。

 だから発生の速いグラップル。
 投げはキャラによるよ。

ケンジ)
 俺は単純にバランスだと思うよ。
 その上で強い技はつえぇ。
 けど連発はできねー。

 キャラ相性とポテンシャルの習熟もあるが、基本が最上だよ。

 あとはコマンドが反応と判断に、技がタイミングよく間に合うか。

はじめ)
 格闘ゲームのレバーを握るとさ、斜め下と後ろと前がぐだぐだんなってるんだよ。

 古い筐体ほどな。

 みんな殴りに行って、返しでボコボコにされて、気を衒ってまた殴る。

 ぶっ倒れるまで。
 ぶっ倒れた後も。
 ぶっ倒すまで。

 そんで強くなる。
 闘わずに強くなる奴はバケモノだ。

 だから俺はゲーセンで遊ぶ。
 辞めてった奴も、たまに来るよ。

 新しい筐体が出て、キャラが増えてさ。

ケンジ)
 強い技使い過ぎると、弱い技の有り難みを知る。
 強い奴と闘うと、アドレナリンが出る。

 そんで強くなる。

 いつまでも弱い奴は格闘ゲームには向いてない。

はじめ)
 サブロウタが聞いたらまた格闘ゲーム民が減るぞ。

ケンジ)
 アイツはロボゲーとストラテジーでゲーセンに貢献しているからいいんだよ。

 格闘ゲームはハマったらブームが帰ってくるんだよ。

 今はゲーセンもアクティビティなのが多いだろ?

 どんだけ複雑になっても、人は原初にして最新の闘争神「アドレナリン様」に血湧き肉躍るわけよ。

 ……サブロウタは戦術向きじゃなくて、戦略向きなんだろ。軍師タイプ。

 殴られたら、すーんとしてさ。
「なんで殴ったの?」って。

はじめ)
 でも、ずっと遊んでは、いられないのかなぁって。最近ずっと思うよ俺は。

ケンジ)
 眼も脳も耳も反射神経もなぁ…。
 イケてるジジイになりたいもんだ。
 
はじめ)
 今度、VRで格ゲーやるか?
 
ケンジ)
 大会でU40が実装されたら、階級制になるかもな。

 50や60じゃあ、俺の中のアドレナリン様が好々爺になっている。

 ゲーマー人口減ったら、ゲームがたくさんあっても、プレイヤーはみんなゴーストになっちまう。

はじめ)
 それもXRってやつかね。
 アドレナリン様は電気信号になられた。
 ゼウスかトールかインドラか…。

ケンジ)
 日本ならタケミカヅチだろ。

はじめ)
 結局のところ、みんなゴーストだな。

ケンジ)
 ゲームやるときゃ、神さまたちと遊ぶつもりで遊ぶようになるんじゃねーか?

はじめ)
 はぁ…。進み過ぎだぜ時代…。


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