魔急精神病院〜カケル〜 第19話【完】
日和が雑誌をここまで読んだ時、「大船〜大船〜」と最寄り駅への到着を伝える車内アナウンスが流れた。日和は慌てて雑誌をカバンに仕舞うと、電車を降りて家路についた。
数時間後、日和と唯史が夕食のカレーライスを食べていると、テレビで流れてきたとんでもないニュースに、2人はカレーを吹き出しそうになった。
「日本精神医療推進協会会長で、日本DD通信病院理事長の黒崎利満(くろさきとしみつ)氏が本日、八急アイランドに謝罪及びお化け屋敷の魔急精神病院の閉鎖を要求しました」
「何言ってるのよ?私の楽しみを奪うな〜!」
日和はテレビに向かって憤慨していた。唯史はそんな日和を宥めていた。
そうこうしているうちに、テレビは黒崎への記者会見の様子を映し出していた。ふさふさした白髪に丸眼鏡、福面のような容姿をした黒崎は一見、人の良さそうなご老人に見えた。しかし、そんな彼が発した言葉は自分勝手そのものだった。
「八急アイランドの魔急精神病院は、我々精神医療従事者を冒涜しています!今の精神病院はとてもきれいで、患者様に暴力なんてあり得ません。魔急精神病院によって精神医療が誤解され、現に精神病院の看護師の離職者が、去年までと比較すると増えています。これは、我々にとって非常に大きな損失です
「また、患者様の唯一の居場所である精神病院をこんな風に貶されると、患者様の精神状態を余計に悪化させます。八急アイランドには、誠意ある対応をしていただきたいと思います」
ここで、1人の男性記者が質問した。
「先ほど、『患者様の唯一の居場所である精神病院』と仰いましたが、病院はあくまでも治療の場であり、ずっと居続ける場所ではありませんよね?何故、精神病院が患者さんの唯一の居場所になるのでしょうか?」
そんな彼の鋭い質問に、阿弥陀如来様のように柔和な顔をしていた黒崎の目が、急に邪悪な光を帯びた。そして、黒崎は先ほどとは明らかに違う乱暴な口調で、彼にこう言い放った。
「精神病院に入院するほどに精神疾患が悪化した患者は、社会に戻しても差別され、孤立してしまいます。そんな患者たちにとっての唯一の居場所が精神病院であり、そこで患者仲間と生活する方が幸せに決まってます!」
「なんじゃそりゃ~!」
日和はテレビを見ながら呆れていた。唯史はそっとリモコンで番組を変えた。
そのニュースが報道された後、魔急精神病院を取り上げるテレビやラジオ、ネット番組はなくなり、インフルエンサーたちも話題にするのを控えるようになった。しかし、八急アイランドは黒崎の圧力に屈することなく、魔急精神病院を運営し続けた。
ただ、日を追うごとに、魔急精神病院への来場者数は減り、予約のキャンセルも相次いだ。このまま、魔急精神病院の人気は落ちていく一方だと誰もが思った。
しかし、ここで4人の救世主が現れた。その救世主たちのお陰で、魔急精神病院は再び人気アトラクションとなった。そんな魔急精神病院のピンチを救った彼らの名前は…またの機会にお話しするとしよう。
