魔急精神病院〜ココロ〜 第5話
一方、紗良たち4人は鈴木のアパートに向かって歩きで移動していた。時刻は16時前だったが、真夏の太陽はまだまだ暑く、4人をジリジリ照らしていた。
「鈴木くんちって、このビルから5分くらいなのよね?5分でもしんどいね。あ〜暑いわぁ」
紗良はそう言いながら、左手に携帯扇風機を持ち、右手に持ったタオルハンカチで顔や首の汗を拭いていた。そんな紗良の仕草に、鈴木は胸が高鳴るのを感じた。
「そ、そうですね。良かったら、水飲みます?まだ開けてないんで」
鈴木はドギマギしながら、自分のショルダーバッグからペットボトルを取り出した。
「あ、大丈夫。私は水筒を持っているから。ありがとう」
紗良は笑顔で答えた。その笑顔に鈴木の頬が赤く染まった。そんな鈴木を、田中と千夏はニヤニヤしながら見ていた。
その後、4人は一棟のアパートに到着した。白と黒のモノトーンのお洒落で清潔感のある築浅なアパートだった。
「お洒落な所に住んでるのね。良いなぁ~」
紗良はそのアパートをこう褒めた。鈴木は「いえいえ、ありがとうございます」と言いながらも、心の中では「荒井さん、プライベートで来てくれたらなぁ…」と呟いていた。
やがて、4人が鈴木の部屋である302号室に入ると、そこは男性の一人暮らしとは思えないくらいキレイだった。間取りは1Kだったが、4人が入るには十分な広さだった。4人は手洗いうがいをした後、談笑する間もなく、居間の中央にある黒の丸テーブルを囲み、紺色の冷感素材でできたラグの上に座った。そして、紗良がパソコンの、田中と千夏がメモの準備をしている間、鈴木は飲み物とクッションを皆に配った。
「ありがとう、鈴木くん。じゃあ、さっきの続きを始めます。準備は大丈夫ですか?」
紗良がそう尋ねると、3人は一斉に頷いた。すると、パソコンが再びオンラインミーティングの画面に変遷したが、そこには仙石1人しか映っていなかった。
「お待たせしました…って、あれ?東方先生はどちらに?」
紗良は戸惑っていた。
「荒井さん、ちょっとばかりマズイことになった。オンラインミーティングを中断している間に、あずまさんが看護師に呼び出された。何で呼ばれたのかは分からなかったが、わしらの計画がバレたか心配だ」
仙石は明らかに動揺していた。紗良は同室の3人と顔を見合わせた。
「今回は諦めたほうが良いんだろうか…?」
仙石がそう言って俯いた時、彼の部屋のドアが開く音が聞こえた。
「いや〜すみません。ちょっと席を外してしまいました。あ、さっきの呼び出しは計画とは全く関係ないので、話を再開して大丈夫です」
東方は流れる汗を拭きながら、こう言った。しかし、鈴木はそんな東方の行動に不信感を抱いていた。
「東方先生、本当に大丈夫なんですよね?病院にバレたら一巻の終わりなんですよ?白石さんは亡くなったし、荒井さんの命だって危ないところでした。これ以上、記者を犠牲にするわけにはいきません!」
鈴木は苛立ちを隠すことなく、語気を強めて言った。
「まぁまぁ、鈴木くん。東方先生は医師だから、非番でも呼ばれることはあるでしょう」
紗良は鈴木の肩に手を乗せ、彼を宥めた。鈴木は顔を赤らめながら、口を噤んだ。
「鈴木さん、あずまさんはわしらの味方で、決して裏切らない。保証する。さぁ、話を続けようか」
仙石が言った。
「はい。必ずや、白石と首藤さん、不動先生、木野さん、秋原さんの遺品を魔急精神病院からご遺族の元に戻しましょう」
紗良が力強く言った。その言葉に、5人は真剣な面持ちで頷いた。
