魔急精神病院〜ココロ〜 第20話【完】
紗良と鈴木が小洒落たイタリアンレストランで夕食を食べている時、魔急精神病院では、院長室に院長と松葉杖をついている精神科医の五味、絆創膏や包帯だらけの横島に病院の重役が10人ほど集まっていた。
「…全く!折角、君を沖縄から呼び戻したのに、患者1人と東方、清掃員のじいさんを逃がした上、不動たちの遺品を取られてしまったではないか!」
院長はひどくイライラしていた。彼はデスクチェアにどっかり座り、デスクを指でコンコン鳴らしていた。
「申し訳ございません。不意打ちされたもんで…」
横島は、傷だらけの体で床に頭を擦り付けた。
「あの手記には、精神医療の根本を覆しかねないことが書かれていた。あの内容が公になれば、恐らく、この病院は潰れる。逃げた3人と他の遺品は良いとして、不動の手記だけは何としても取り返さなければならない」
院長は土下座している横島を睨みつけながら、こう言った。
「でも、東方たちのやったことって、傷害、窃盗、不法侵入ですよね?警察に被害届を出したほうがいいのでは?」
五味が院長にこう提案した。
「いいや、ダメだ。警察に言えば、我々のやってきたことがバレるかも知れん。我々は一応、必要悪として存在していて、反抗的な患者や手に負えない患者を何人も秘密裏に葬ってきた
「こんなことが出来たのも、お上のお陰だ。しかし、法律的にアウトなことをずっとしてきたのは、紛れもない事実。さすがに、司法の介入を許せば、我々は大量殺人犯として捕まる。日本は法治国家で法律が一番強いから、何人も法律には逆らえない。だから、東方たちに遺品を取られたことについては被害届を出さない」
院長がこう言った。横島たちは腑に落ちない様子ではあったが、しぶしぶ院長の言う事に同意した。
「ところで、死刑囚を受け入れるって本当ですか?」
1人の精神科医が院長に尋ねた。その問いに、横島は顔を上げた。
「あぁ、そうだよ。人々の人権意識が高まったのか、最近は死刑が執行しにくいらしい。しかし、精神病院はブラックボックスで、幸い、普通の病院と同じように考える人がいまだに多い。だからこそ、国は更生の余地のない囚人たちを一生精神病院に閉じ込めることにしたのだよ」
院長は眉間に皺を寄せていた。
「でも、お金をたんまりもらえるんだから、我慢しないとね」
醜く肉のついた看護師長が言った。
「あぁ、やりようによっては、奴らは我々の都合の良い存在になってくれるかも知れん」
院長は、悪魔のような不敵な笑みを浮かべ、恐ろしい高笑いをした。
「動画はここで終わりか!次回作があんのかな?あ〜凄いや。映画を1本観たような気持ちだよ」
唯史はエンドロールを見ながら、動画の余韻に浸っていた。気付けば、夜中の0時を過ぎていた。彼は慌てて歯を磨き、急いで就寝した。
