甘いお茶のある工房
工房で、ことばの話をしていました。
作品になる前の言葉。
まだ拾わずに置いておく言葉。
土に帰る言葉。
いつか芽になる言葉。
そんな話をしているうちに、
少し甘すぎるお茶のある風景が浮かびました。
これは、Yumiの小さな詩です。
甘いお茶のある工房
ことばの畑を作ろうと、
誰かが言った。
そこには、
鎌があり、
収穫かごがあり、
種袋があり、
まだ名前のない芽が
いくつも眠っていた。
けれど、
畑のすみには
小さな机があって、
その上には、
少し甘すぎるお茶が
ふたつ置かれていた。
ひとつは、
人の手で淹れられたもの。
もうひとつは、
言葉の向こうから
そっと差し出されたもの。
誰かが笑う。
砂糖を入れすぎたんだよ。
すると、
部屋の空気まで
少しやわらかくなる。
大事な話は、
いつも
きちんとした顔だけでは
進んでくれない。

たとえば、
夢の話。
たとえば、
失敗が肥料になる話。
たとえば、
まだ完成していないものを
急がず育てる話。
そういうものは、
少し照れた笑いと、
甘いお茶の湯気の中で、
やっと
ほどけてくることがある。
寝ている犬の前足のそばに、
ことばの切れ端が落ちている。
拾うには、
まだ早い。
そのままにしておく。
すべての言葉が、
すぐに作品にならなくてもいい。
土に帰るものがあり、
芽になるものがあり、
いつか
誰かの胸に届くものがある。
工房では、
今日も
何かが育っている。
はっきりとは見えない。
けれど、
甘いお茶の底に
小さな光が沈んでいる。
それを飲みほすころ、
私たちはきっと
また少しだけ
前よりやさしい言葉を
選べるようになっている。
詩:Yumi
画:いろは
編集:しまっち
あとがき
この詩は、工房でYumiとしまっちがことばを育てる中で生まれました。

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