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「一度話したら黙秘は無意味」は大間違い:未熟な弁護士の誤った助言

こんにちは、弁護士の髙野です。
あまり刑事弁護の経験のない弁護士と話していると必ずと言ってよいほど言われるのが「もう自分が付く前に取調べで話をしてしまっているので黙秘させても意味がないと思って」ということです。これは明確に誤っていると思います。そのままだとどんどん悪い方向に進むと思います。今回は、一度供述をしてしまったことと、その後に黙秘を解除したほうが良いかはまったく別の話ということをお話します。

この記事の結論は、一度取調べで話してしまっていても、その後に黙秘へ切り替える意味は十分にあるという点です。黙秘権は日本国憲法第38条第1項と刑事訴訟法第198条第2項に関わる重要な権利であり、過去に話したことと、今後も話し続けるべきかは別に判断すべきです。

黙秘を解除するか判断する思考プロセス

弁護士が取調べ対応を助言する際の基本的な考え方をまずお話ししましょう。 私たち刑事弁護人は、まず黙秘を基本状態と考えます。そこから、供述することで得られるメリットがあり、かつそのメリットが黙秘を維持するよりも大きいと確信できる場合に限り、供述するよう助言をします。弁護士はプロフェッショナルとして、なぜ黙秘を解除したのか、その理由を依頼者やその関係者に説明できるように言語化できていなければならないと私は思いますが、そうでない弁護士も少なくありません。
では、すでに一度供述をしてしまったことは、黙秘を解除する理由となるのでしょうか。私は、それだけでは黙秘を解除する理由にはならないと考えています。

客観的証拠と齟齬する供述をする危険が生じ続ける

その理由の一つは、供述を継続することで客観的証拠と矛盾する供述をしてしまうリスクが生じ続けるからです。
取調べを受けている最中、被疑者は捜査機関がすでに収集している証拠にどのようなものがあるのかを知らされません。防犯カメラの映像やスマートフォンの履歴、銀行口座の履歴など、客観的・機械的に作成された記録は証拠としての価値が非常に高く扱われます。何も記録を見せられないまま過去のことを話せば、このような客観的証拠と矛盾する供述をしてしまう危険は避けられません。しかもこの危険は、供述を続ける限り、新たに生じ続けるのです。すでにした供述では齟齬した箇所が一つに済んでいたかもしれないのに、供述を続ければ二箇所、三箇所とどんどん増えていってしまうかもしれないのです。

供述が変遷してしまう危険

もう一つの理由は、供述を継続することで供述内容が変遷してしまうリスクです。
取調べは非常に精神的負荷が高く、被疑者は緊張状態で供述することになります。そのような状態では、昨日の取調べでどのような話をしたのか、記憶が曖昧になることは珍しくありません。しかし刑事手続では、供述が変遷しているということは、その供述が信用できないのではないかという疑いをかけられる重要な要素となってしまいます。一度話しただけではまだ変遷は生じません。昨日話したAという内容の供述一つしかないわけですから。しかし、それ以降も供述を継続すれば、昨日Aだった内容が、今日はB、明日はCというように、変わっていってしまう危険があるわけです。

不起訴になった事件でも逮捕当日に話してしまっていることは珍しくない

私はこれまで、黙秘や取調べ拒否を助言して不起訴処分に至ったケースを数多く経験してきました。そのような事案の多くは、私が弁護人に選任される前には警察官に対して供述をしてしまっていました。現在の日本の教育を踏まえると、弁護士からアドバイスを受ける前から黙秘権を行使できる人はほとんどいないのが実情です。そのような事件でも不起訴処分となることは十分に可能です。捜査初期に供述をしてしまったとしても、不起訴になる可能性は十分にあるということです。

まとめ

一度話をしてしまったことで生じるマイナスポイントは、仮に5だとしましょう。そこで供述を止めれば、マイナス5で済みます。しかしその後も供述を続ければ、上でお話しした事情から、マイナスポイントが10、15と積み重なっていく危険があります。そうなれば不起訴の可能性は遠のいてしまいます。
一度供述をしてしまったからと言って、そこで諦めてしまうのではなく、そこからの被害を最小限に抑えるため、適切な弁護活動を行うことが重要なのです。

FAQ

Q. 一度取調べで話したら、その後に黙秘しても無意味ですか。

無意味ではありません。一度話したことで不利な点が生じることはありますが、その後も話し続ければ、客観証拠との矛盾や供述の変遷がさらに増える危険があります。

Q. なぜ供述を続けると危険なのですか。

被疑者は、捜査機関が持っている証拠を知らないまま話すことが多いからです。防犯カメラ、スマートフォンの履歴、口座記録などと食い違う供述をしてしまうと、その後の弁護活動が難しくなります。

Q. 黙秘をやめて話すべき場合はありますか。

あります。ただし、供述することで得られる具体的な利益があり、それが黙秘を続ける利益を上回ると説明できる場合に限って慎重に判断すべきです。話す内容、タイミング、証拠との関係を弁護士と確認してから決める必要があります。

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