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私と彼女の馴れ初め - 西炯子の世界 #1 -

「彼女作ろうとは思わんの?」
「ちゃんと結婚のこととか考えんとアカンど」
「部屋に引きこもってちゃ出会いなんてないぞ」

(ずいぶん勝手なこと言うなぁ…)
(こっちの気も知らないで…)

言われる度に腹の中で
何度 悪態をついたことか。


あれは今から10年以上前。

私の中では 読書といえば紙の本。
毎週のように近所の書店に赴き、
毎月のように大型書店で大人買い。

今でも読書は大好きではあるが、
間違いなく あの頃の方が
読んでいる数は多かった。

当時 私はまだ独身。
20代も中盤を迎え、
同級生や同期の仲間にも
結婚や出産といった話題が
ちらほらと聞こえてきていた。

子どもの頃、自分はなんとなく
20代で結婚して
子どもができるものだと思っていた。
自分の両親が若くして
結婚・出産をしていたから。

彼ら自身も私に対して、
漠然と そう思っていたふしがある。

でも どういうわけか、自分には
それまで全くそんな気配がなかった。

あれが最後のチャンスだった…?

振り返れば 小中学生の頃は、
比較的 クラスの女子との距離は
近かったように思う。

バレンタインに学校で
チョコをもらったこともあったし、
バレンタインではないが
後に聞いたら 実は好意を抱かれていた
…ということもあったらしい。
(人伝手に聞いた話だが)

でも、私はそんなチャンスを
活かせなかった。
きっと私の生き方が下手だったのだろう。

10代も後半に差し掛かってくると、
異性との縁は皆無になった。

相手の性別にかかわらず
元々 社交的ではなかったから、
自分から行動を起こすこともない。

おまけに就職したら
男社会を絵にかいたような職場に
入ったものだから、
もはや私には
恋愛とか結婚なんてものは
自分には縁のないものなのだと
自然消滅的に諦めていた。

理解し合えない既婚と未婚

生まれ育った 50Hz の地元から
富士川を越えて
遠く離れた 60Hz の世界で
ひとり暮らしをしていた私には、
会社を一歩出れば 友人もいない。

休日といえば、もっぱら読書か
当時勤しんでいた将棋の勉強くらいしか
することがなかった。

それまで彼女がいたわけでもないし、
アウトドア派だったわけでもない。

別に強がりでも何でもなく、
寂しくはなかったし
むしろ プライベートは充実していた。
自分が好きな時間に
好きなだけ読書ができたからだ。

ところが周囲というのは勝手なもので、
私がどう思っているかなんて関係なく
「女っ気がない可哀そうなヤツ」
という目で こちらを見てきた。

「彼女作ろうとは思わんの?」
「ちゃんと結婚のこととか考えんとアカンど」
「部屋に引きこもってちゃ出会いなんてないぞ」

たまの連休に実家に帰っても、
全く同じことが言われる。

どうして彼らは 当たり前のように
そう言えるんだろう。

私が彼らのことを
理解できないように、
彼らもまた 私のことは
理解できないようだった。

書店で生まれた巡り合い

でも 今さら恋愛だ結婚だなんて
やり方も分からないし、
何より(負け惜しみではなく)
心から興味が湧いてこなかった。

もちろん、キッカケがあれば
それでいい。
何も生涯独身を宣言する気はない。

「交際しましょう」と
言ってくれる相手がいるなら、
いつでも喜んで お受けいたします。

ただ 日がな部屋にこもって
読書に明け暮れる自分には
出会いなんてあるはずもなく、
それこそ古典的なドラマのように
本屋で偶然 同じ本に手を伸ばすか、
あるいはラピュタのように
空から女の子が降ってくるか。

私の貧相な脳みそと人生経験からは、
出会いのイメージなんて
そんなものしか浮かんでこない。

「たぶん このまま独りで
 年を取っていくんだろうな…」

それが私という男の一生なのだ。

そんなふうに思って生きていた頃、
いつものように
近所の書店を歩いていて
なんとなく目に留まったのが
この本だった。

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