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【書評】 エレガントな毒の吐き方

私は決してケンカに
明け暮れる少年時代を
過ごしてきたわけではないが、
生きることの本質は
「戦い」だと思っている。

社会の中で生き抜くというのは
もちろん協調の面は多いにしても
生存競争であることには違いないし、
ビジネスの世界も
顧客とは柔らかく接するにしても
ライバルとの戦いは生き残る上で
避けては通れない。

そこまで大仰に考えずとも、
個人の人間関係においても
時には譲れないものを守るために
戦うことはあるはずである。
それが仲間なのか利益なのか、
はたまた価値観なのかは分からないが。

その昔「戦争とは外交の延長である」と
偉大な戦略家が言ったとか
言わなかったとか聞いたことがあるが、
この「戦う」とはまさに
「交渉」のようなものである。

腕っぷしの力に任せて
真正面から当たりに行くのは
考えなしというものであって、
いかに少ないリソースで効率よく
意図した成果を得るかが重要である。

故に気に食わない相手に対して
溜飲を下げたいと思うなら、
高度な戦略戦術を用いて
全面戦争にならないような
攻め方をするべきなのだ。

…というわけで 私はいつしか
シニカルなものの言い方が
身についてしまった
(しばしば窘められる)のだが、
この本を見つけて さらに自身の皮肉に
磨きをかけたいと思ってしまった。

向学心とは恐ろしいものである。


皮肉というガス抜き

私は元来 気が短い性分なので、
ストレス耐性というものは高くない。

多少の分別はあるので
余程のことがない限り
不満や怒りを態度には出さないが、
さりとて全てを我慢すると
自身の身が持たないものだから
強烈なストレスを与えてくる相手には
「皮肉」という形で
意趣返しをすることにしている。
(関係ない人に向けることだけはしない)

これはどこまで他人に
理解してもらえるか分からないのだが、
別に相手を攻撃してやろうという
意思は全くなく私が
モヤモヤした気持ちを吐き出したいだけ。
言わば ただガス抜きをするわけである。

だから相手にこちらの真意は
伝わらなくてよくて
(内心 伝わっても構わぬとも思っているが)、
気付かぬならば それでよしと思っている。
(大抵 相手は何も反応を示さない)

皮肉を言って、その真意に
乗ってくるのが来ないのか。
はたまた皮肉と捉えないのかなど、
ひと言投げるだけで
その人の人となりが
ある程度掴めるというものである。

直球至上主義の時代

ところで元号が令和になって久しいが、
現代は何かと
時間の価値が重視されている。
もちろん平成の頃から
その向きはあったが、ここ数年で
いっそう加速している感がある。
タイパという言葉が浸透しているのも、
その証左であろう。

これは私の偏見が
多分に含まれているのだが、
そんな時代にあっては
若い世代になるほどに
婉曲的な表現よりも
ストレートな表現の方が
好まれている気がしないでもない。

X のような流れの速い
SNS をやっていると一瞬の印象が
反応の良し悪しを決めるから、
より "シンプル" で "分かりやすい" 表現が
選好されているのではなかろうか。

そう考えれば、
婉曲的な表現が軽視されている
現状とも辻褄が合う。
(決して私の X が
 伸び悩んでいる言い訳ではない)

もちろん思いを
ストレートに伝えることも
素晴らしいことではあるのだが、
それはあくまで
「そういう選択ができる」からこそ
価値があるのであって、
状況によっては
それが相応しくないこともある。

感情表現には使い分けが大事であり、
どんなに火の玉ストレートを
投げ込もうとも
変化球も交えて勝負をせねば
痛打や失点は免れないというもの。

だからこそ 毒を吐く場合に限らず、
この本の主題にあるように
エレガントで芸術的な婉曲表現を
身につけておくべきなのである。

品のある大人になる

私も不惑が近付きつつあるが、
本書を読んで改めて我が身を振り返れば
まだまだ血気盛んなところが
あると反省する。

確かに戦いは交渉における
ひとつの手段ではあるが、
戦いにおいて最良なのは
「戦わずして勝つ」ことである。

クラウゼヴィッツの言葉も
確かに有名ではあるが、
それよりはるか前の時代に
孫子が分かりやすく
言っていたではないか。

直接 激しくやり合うよりも
冷たく胸元を抉るような ひと言を
放つのを良しとしてきた
(極めて性格が悪い)が、
グサリと来る ひと言より
サラリ爽やかな毒を吐く。

そんな振る舞いが身につけば、
もう少し品のある大人に
なれるのではないだろうか。

前半部には具体例を交えた
エレガントな毒の吐き方を解説しつつ、
後半部では本書のテーマとは対極にある
「論破」との比較を交えた考察が
語られている。

現代では論破することに
快感を覚える人も
増えてきているらしいが
(昔は某インターネット掲示板の
 中の話だと思っていたのだが)、
今一度 人との向き合い方というものを
考え直すにはいい題材であろう。

こんな人にオススメ!
・いつも不満を言えずにモヤモヤを溜め込んでしまう人
・不満を知的に言えるようになりたい人
・交渉や駆け引きのスキルを高めたい人
・「論破こそ至高」と思っている人
・ブラックユーモアが好きな人

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お読みいただき、
ありがとうございました。


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