[書評] 娚の一生
「類は友を呼ぶ」とか
「朱に交われば赤くなる」とか、
あんな言葉は嘘っぱちだと
思っていた時期があった。
大学生時代のごく一時期を除いて
私の周りの親類や友人たちは、
皆 当たり前のように恋愛をして
若い時期から結婚をしていった。
それなのに私は結婚どころか、
異性との交際をしたことすらなかった。
異性の同級生と
比較的 会話をしていた時期すら、
中学生の頃が最後である。
思春期になれば、
彼女ができて当たり前。
20代のうちに結婚して、
子どもが生まれるのが 当たり前。
そもそも自身の両親が
そんな生き方だった上に
友人たちまでもが何不自由なく
順当な人生を歩んでいく。
私を中心に見えている
私の人生は、どういうわけか
私だけがイレギュラーな存在で
あるかのようだった。
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※ Kindle Unlimited 対象です ※
似たもの同士…?
そんな疎外感を抱く傍らで
自分ひとりの生活が馴染み
取り立てて不自由も不満もない毎日を
送っていたある日、行きつけの書店内を
歩いていたときに 平積みしてあった
この本が目についた。
些か前時代的な価値観かもしれぬが
専業主婦(夫)を夢見るならば
必死になって結婚相手を
探そうとするのだろう。
だが 幼少期から
「男は外で稼いできてナンボ」
という価値観を
たたき込まれてきた自分には
働いて稼がないという発想はなく、
さりとて ひとり暮らしをする上では
最低限 生きていくための家事能力が
嫌でも身についてしまう。
料理はそこまで得意ではないが、
仕事も家事もそれなりに
ソツなくこなす独り者。
本作の主人公である つぐみも、
まさに似たような女性だった。
いや 料理は上手だし
仕事も男性顔負けだし、
男を見る目はともかく
恋愛経験はあったし、
似ているというよりも
完全に上位互換なのだが。
強いて言うなら、
容姿が人並みに整っているところは
互角といってもいいかもしれない。
どいつもこいつも
容姿端麗で仕事もデキて、
家事にも収入にも困らない。
こうやって書いてみると
何も不満がないだろうと
思われそうだが、
ここに「結婚に縁がない」と
ひとつ加えるだけで
どういうわけか世間には
残念な人に見えるらしい。
「いい人は見つかったのか」
「いつになったら結婚するのか」
「子どもは早く作った方がいいぞ」
どいつもこいつも
自分は どれだけ順風満帆だったのか、
できないことに悩んだ経験など
忘れてしまったのか
そもそもなかったのか。
「なぜ結婚しないのか分からない」
とでも言いたげな彼らの表情は、
いつだって無邪気そのものに見えた。
つぐみ もそんな周囲の声に
辟易する中で、
もうひとりの主人公である
哲学者 海江田 氏が
彼女の前に表れる。
学生時代に彼女の祖母に
恋をしたという氏は齢 五十過ぎ。
そこから 自分勝手な言い分で
同居をし始める海江田氏と、
それに困惑する つぐみ。
このふたりを中心に、
つぐみを取り巻く
友人や知人たちにも
それぞれの出会いが生まれていく。
そう、結局のところ
これはマンガなのだ。
最初は 未婚であることに
悩んでいようと、
最後はうまい具合に結婚するのだ。
つぐみに感情移入しつつも、
どこかモヤモヤも残る
微妙な感覚もあった。
人の一生は分からない
ただ どことなく
カタルシスのある読後感もあり、
ある日 また読んでみようと思わせる
不思議な魅力がある本だった。
2回目か 3回目か
読んだ回数は失念したが、
あるとき 海江田氏の視点で考えた。
20代の頃に激しい恋をした彼も、
なんだかんだと人生の伴侶と出会うのは
(実質的には)人生も折り返しの頃。
彼の若かりし頃の結婚観や
エピソードは語られていないものの、
世代を考えれば つぐみ や 私と
同じようなことを言われてきても
不思議ではないわけで。
哲学者としての顔を持ち
それほど結婚に飢えているようには
見えなかった彼も、
ひょんなことから
あっさりと結婚してしまう。
(ネタバレと言ってくれるな)
もちろん マンガはマンガ、
素敵な異性が 自分の前にふらっと現れ
あれよあれよという間に結婚を
...などということは期待しない。
それでも 縁というものは
いつ どこで 何をキッカケに
つながるものか、それは当人には
思いもしないことが多いのだ。
そう考えたら、
ほんの少しだけではあるが
自分でも自分にかけていた
結婚への重圧が
軽くなったような気がした。
もちろん縁を掴みに行く積極性も、
縁を活かすための努力も必要である。
強烈に結婚したいわけじゃないが、
かといって生涯独身を
決め込むわけでもない。
だから 自分なりに
縁を掴むための研鑽はした。
この作品に出会うまでは
あんなに捉えどころのない
不安と焦燥感に
苛まれていたというのに、
それから5年もしないうちに
結婚するというのだから
まったく人の一生は分からない。
この先の人生を
共に歩む相手を見つけた今、
結婚に悩んだ あの日を思い出しながら
改めて読み返すと、また違った想いで
彼女たちの人生が見えてくる
面白さがある。
こんな人にオススメ!
・結婚できないことに悩んでいる人
・恋愛や結婚に悩んだことのある人
・周囲から結婚について
あれこれ言われている人
こんな人には合わないかも…
・他人の恋愛や結婚に興味がない人
お読みいただき、
ありがとうございました。
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何についても「言語化が大事」だと言われるのは、それだけ言語化されていない情報が世の中には多いからだ。言葉に表れない部分から、如何に多くの情報を集めるか。その感性の差が、人間力の差となってくる。
— Naseka@令和の哲学者 (@philosopher_018) August 10, 2025
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