再考|あの頃、朝が怖かった28
入学式後の最初の登校日に、次男は自分から友達になれそうな子に話しかけたようだった。
たまたま家の方向が同じで、一緒に帰ってきたという。
友達ができそうで、ひとつ心配が減った。
条件をクリアすれば、2年生から同じ高校の全日制に転籍することができる。
体調が上向いている次男は転籍を希望していて、入学早々にあった希望調査にも、その旨を書いて提出していた。
条件のひとつは、登校日数。
目標ができた。
運動部には入れないけど、文化部は全日制の部活に入れるということだったので、次男は何ヶ所か見学に行ったようだった。
でも、入部はしなかった。
まずは登校することが目標。
部活は入らなくてもいいと、私も思っていた。
この高校は、「学校が楽しいと思える」「登校したくなる」そんな思いが詰まったようなカリキュラムだった。
田植えなどの農業体験、調理実習、炊事遠足、スポーツ観戦、美術館での鑑賞、工場見学。
楽しそうな行事がたくさんあり、行事もそれぞれの単位になり、参加は自由だった。
遅刻や早退のカウントはなく、登校日に行けば出席としてカウントされる。
数ヶ月に1回のレポート提出期間にレポートを提出し、試験は年に1回、3学期に自宅で受験する。
進学校に通っていた長男とは、まったく違う学校生活だった。
時々、起きられない日もあった。
電車に間に合わず、学校まで車で送った日もあった。
どうしても動けず、休んだ日もあった。
それでも、全日制への転籍条件である出席日数は、クリアできそうだった。
夏休み明けに転籍試験があり、練習問題を受け取っていたようだったけど、ちゃんと勉強していたかどうかは定かではない。
夏休み明け、次男は飲食店でアルバイトを始めた。
面接で
「どんな性格ですか?」
と聞かれて、
「明るい性格ですが、ちょっとおっちょこちょいです」
と答えたと言った。
面接を終えて帰ってきた次男は、シャツのボタンが一段ずつずれていた。
その答え、そのまんまだねと言って笑った。
それでも採用され、週に3回くらい働き始めた。
10月に、初めての三者懇談があった。
先生は、クラスの様子が全日制のようで、とても雰囲気がいいと話してくれた。
確かに友だちはいるようだった。
そして、問題の転籍。
出席日数も試験もクリアして、転籍は可能だった。
ただ、全日制に転籍することは、良いことばかりではないと先生は話し始めた。
全日制は2年生に上がるときにクラス替えはあるが、人間関係を考慮するクラス替えのため、転校生のような形になる。
友達ができず、通信制に戻ってきた子も過去にはいるという。
遅刻もカウントされるようになる。今でも時々遅刻しているのに、毎日1時間早く通えるのか。
定期テストを受けるために、勉強に追われる。
それをこなせるのか。
大学を目指すなら、通信制のほうが受験勉強の時間を取りやすい。
時間を有効活用して予備校に通い、国立大学に進学した生徒もいる。
そしてこれはおまけだけどと、次男が最初に話しかけた子のお母さんが、三者懇談で話していたことを教えてくれた。
「次男くんのおかげで、息子が登校できるようになって、感謝している。引き留めることはできないけど、全日制に行ってしまうと残念だ」と。
だから、よく考えて決めてほしい。
そう言われて、三者懇談は終わった。

