20話 自動販売機 Vending Machine — The Old Man in the Mountain 【波打際編】波打際スケッチ Sketches of the Shoreline ~AIと創る青春物語~
自動販売機で買ったばかりのお茶を飲みながら、ナビオはふと気づいた。
車はどうやら山の上のほうに停められていたらしい。
森のように樹々が生い茂る細い道を歩いていると、道の脇に石像がいくつも並んでいるのが目に入った。翼があって長い鼻の像。
「……天狗、かな」
天狗を見上げた空に見たことがないほど星が多い。

石段の一番下に、老人がひとり腰を下ろしていた。
こんな夜に、こんな場所で。不思議に思っていると、老人がこちらを見上げて声をかけてきた。
「そこの若い方」
「水はないかな」

水ではないが、さっき買ったお茶ならある。
ナビオがペットボトルを差し出すと、老人は一気に半分ほど飲み干した。
喉の渇きが癒えたのか、老人は静かに語り始める。

「戦があるかもしれん」
「……イクサ?」
ナビオは思わず聞き返した。
こんな平和な国で、戦なんて考えたこともない。
「ここは武士の都じゃ」
返されたペットボトルを受け取ると、それは竹筒に変わっていた。
「平家がやってくるのじゃ」
「へ、へいけ……?」
いつの時代の話をしているのだろう。
混乱しながら振り返ると、さっきまで見えていた自動販売機の明かりが、どこにもなかった。
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