与那国で見つけた「小さな強さ」 ── Leicaと歩く旅
沖縄県の与那国島。
ここは断崖絶壁に囲まれた島である。

ゆえに、沖縄でありながらも海よりも「断崖を楽しんでなんぼ」の島だと勝手に思っている。
そういえば小さい頃にDr.コトーのドラマで、空撮された与那国の岩壁を見て
「日本にもこんな別世界があるのかぁ」
と子供ながらに感動したのを覚えている。
その頃の記憶が鮮明に残っているせいか、壮大な崖を見つけると車を止めては、崖の淵の方へと恐る恐る近づくことを繰り返していた。

「落ちたら終わり」
頭では理解しているが、それでもどんな風景があるのだろうかと冒険心をくすぐられるのだ。
そして、そこには黒潮により発生した荒々しい波が、岩に何度も何度も激しく打ち当たる風景が広がっていた。

まるで厳しい冬の日本海を思わせるような波の具合だ。
だが一方で、日本海にはない「どこまでも深く濃い綺麗なブルー」も広がっている。

この違和感が面白い。
じーっと見ていると、なんだか吸い込まれそうになってくるから怖い。
ここに似つかない「花」
荒々しい景色のなかで、どうしても違和感のある白が目に入った。
最初は崖や海の様子に夢中でシャッターを切っていたため気づけなかったが、辺りをよく見渡すと、どこの崖へ行っても決まって白い小さな花がチラホラ咲いているではないか。
美しく可憐な白い百合だ。

大切に育ててやらないと今にも折れそうなくらい華奢に見える。
だけれど、咲いている場所はとても過酷な場所。
常に暴風が吹いており、大雨にさらされることも頻繁にある。場合によっては激しい潮水をかぶこともあるだろう。
加えて、お世辞にも豊かな土壌とは言えない。
岩の上に薄く茂った痩せた草原の上に咲いている。

ビニールハウスの中で大切に育ててやらないとすぐにしおれてしまいそうな花が、過酷な環境で凛と咲いている。
僕の目にはその光景が少し異様にみえた。
島を守る鉄砲百合
この百合の花びらは、真上に向かって咲かない。
必ず花びら部分が90度近く曲がって真横を向いている。
その姿が鉄砲に似ていることから、「鉄砲百合」と呼ばれている。

そして、どの百合も決まって海の方向を向いて咲いていることに気づいた。
まるで一斉に銃口を島の外に向けているようで、その姿は外敵から島を守る小さな番人のようにも見える。
実際、この島は台湾が目と鼻の先にあることから、何か有事があった際は真っ先に影響を受ける地域でもある。
それもあってか、威風堂々としているその姿が少し逞しく見えた。
僕とは正反対の生き方を選ぶ植物
いったいなぜ、暴風や豪雨、痩せた土壌という生物が寄りつかなそうな過酷な環境を選んだのだろうか。
僕には到底できる技ではない。
僕はというと、向かい風に逆らってまで、そこにい続けようとは思わない。
むしろ、強い風が吹けば避けるし、荒波の多い人生よりも穏やかな人生を選ぶ。
要はのんびりゆったりと生きていきたいタイプだ。
だからこそ、こんな過酷な場所を自分の居場所にしてしまう百合のたくましさに威厳を感じるのかもしれない。
この島の植物は、きっと僕とは正反対の生き方をしている。
他にも、鉄砲百合と同じように、この崖で暮らす小さな木々があった。

これから大きく豊かな木々へと育っていくようにも思えるが、これ以上は大きくならない。
たとえ大きく育ったとしても暴風が吹き荒れるこの場所では、すぐに折れてしまうだろうし、そもそも岩場である以上、必要な栄養を摂れないのかもしれない。
ここで暮らす植物は、本島や本州とは違う独自の工夫を重ねながら、生きていく必要があるのだろう。
僕も、自分らしさの工夫を重ねながら生きていきたい。
