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防染婆 【ショートショート】

 歩く。歩く。ひたすら歩いてきた。

 走る。走る。周囲を置き去りにして走るしかなかった。

 あの頃、わたくしのような女は稀だった。そう在ることなど許されるものではなかった。だがしかし、わたくしはそう在ることしか選べなかった。そうしなければ、右足の後に左足を出し、また右足を出す事などできずに立ち止まっただろう。

 ある頃、わたくしのような女が顔を上げだした。自らの願望を口にし、独り強風に向き合って立ち歩く。そのようにして生傷を負うことを厭わない。

 この頃、わたくしを取り上げて『女性の社会進出』などと謳う人達が増えてきた。そのような事になど興味なく歩いてきたが、誰かの願いになれるのなら、それでいいのかもしれない。

 いつしかカラフルな社会のなかで、わたくしの形が型抜きされたように——クッキリとわたくしが居たと判るように足跡そくせきが見えるようになった。
 ナニモノにも染まらず歩いて来たわたくしの、両の足の形が……今わたくしの足の裏に確かに続いている。



#毎週ショートショートnote #捺染婆
#ショートショート #短編小説 #創作全般
#女性

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棚島 香帆汰(たなしま かほた) よければ応援していただけると嬉しいです。 いただいたチップは、私の物語のページを少しずつ彩る力に変えさせていただきます。