映画『きみの色』 自分の「色」が分からない全ての人へ。自分を肯定してくれる光の物語【映画感想文】
色とりどりの登場人物たち
『きみの色』という映画を観ましたことはありますか? 私は先日、配信でこの作品に出会ったのですが、今回は、その時に感じた、言葉にならないたくさんの気持ちを、少しでもあなたに伝えたいと思っています。
この物語は、人の感情・雰囲気が「色」として見える、ちょっと特別な力を持った高校生・トツ子ちゃんの視点で進んでいきます。
彼女が、ある日出会った美しい青色を放つ同級生のきみちゃん、そして音楽好きの少年ルイくん。それぞれが心に誰にも言えない悩みを抱えながらも、バンドを組むことで心を通わせていく、そんなお話です。

光と影が織りなす、世界の美しさ
まず、この映画を観て一番に心惹かれたのは、その圧倒的な色彩の美しさでした。
トツ子ちゃんが見る世界は、感情の数だけ色に溢れていて、まるで絵画のようです。嬉しい気持ちはキラキラした暖色に、穏やかな時間は柔らかなパステルカラーに。その一つ一つが、本当に綺麗でした。

きみちゃんがバイトをしている古書店「しろねこ堂」のシーンでは、本棚に並ぶ無数の本の背表紙が、抑えめな色調ながら画面を彩っていました。私は、たくさんの色を自然に画面に登場させるための、古本屋という設定を採用したのでは? とも思います。
生徒たちが歩く廊下、その足元に落ちる影、体育館の床に反射する光と生徒の姿。キャラクターたちの繊細な心の動きを、言葉ではなく、映像そのもので語りかけてくる。そんな優しさを感じました。
それぞれが抱える、変えられないものと、変えられるもの
この物語に流れる大きなテーマの一つに、「ニーバーの祈り」があると感じています。
「神よ、変えられないものを受け入れる落ち着きと、変えられるものを変える勇気、そして、その二つを見分ける賢さをお与えください」
トツ子ちゃん、きみちゃん、ルイくん。三人はそれぞれ、自分ではどうしようもできない過去や現実(変えられないもの)を抱えながら、それでも未来に向かって一歩踏み出そうと(変える勇気で)もがいています。
きみちゃんは、周りの期待に応えることに疲れ、由緒正しそうなお嬢様学校を、おばあちゃんに内緒で辞めてしまいます。
ルイくんは、離島の診療所を営む母親の跡を継ぐことを期待されながらも、音楽への夢を捨てきれずにいます。家に飾られた写真に写る、今はもういない(あるいは家を出ていった?)お兄さんの存在も、彼の心に影を落としているのかもしれません。
そして、主人公のトツ子ちゃん。彼女は他人の色は見えるのに、自分の色だけが見えません。自分が何者なのか、どんな人間なのかが分からない。その不安と焦燥感は、思春期を経験したことのある人なら、誰しもが共感できるのではないでしょうか。
小さな嘘と、優しい赦し
物語の中で、私が特に心を揺さぶられたのは、登場人物たちがつく「嘘」の描き方でした。
きみちゃんを寮に泊めたことがバレてしまったトツ子ちゃん。修学旅行に行きたくない、という自分の気持ちと、きみちゃんを助けたいという気持ちが混ざり合った、優しい嘘でした。そして部屋を見回りに来たシスターたちに「嘘」をつきますが、とても嘘を吐き慣れているようには思えません。バレバレです。
結局、あとできみちゃんは見つかってしまいますし😅
そんな彼女たちを、シスターである日吉子先生は頭ごなしに叱ったりはしません。罰として奉仕活動を二人に命じます。この時、きみちゃんは罰せられることで赦される機会を得たのだと思います。
この日吉子先生が、本当に素敵な大人です。
実は彼女自身も学生時代、トツ子たちが寝泊まりする部屋のベッドに「GOD almighty」なんていうロックなバンド名を刻んじゃうような、やんちゃな少女だったのです。
過去の自分と少女たちを重ね合わせ、罰することで赦しを与え、次の一歩を踏み出すきっかけを作ってあげる。その懐の深さに、胸が熱くなりました。
そんな、トツ子ちゃんですが、物語の後半で、少しだけ「嘘」が上手になります。
日吉子先生にバンドメンバーと旧教会から帰れないことを告げる時、
「もう一人……影平さんと」と、ルイくんが男性であることを隠しながら事実を伝えるシーン。
これは、誰かを傷つけないための、世界を丸く収めるための、彼女なりの成長の証なのかもしれません。
しかし、私はその成長に少し寂しさを感じてしまいました。
クライマックスのライブシーン
正直に言うと、クライマックスの学園祭でのライブシーン、一曲目のアニメーションは少し単調に感じてしまいました。それまでの作画が本当に素晴らしかっただけに、少しだけ肩透かしを食らったような気持ちになったのは、ちょっと残念でした。
でも、二曲目、そして三曲目へと続く構成は、本当に見事でした。最初はそれぞれの「個」の色を主張していた三人の音が、次第に混ざり合い、一つの美しいハーモニーになっていく。
ライブ後には、最初は自分の色が見えなかったトツ子ちゃんが、仲間と一緒に音を奏でる喜びを経て、ついに鮮やかな自分の「色」を見つけ出すシーンには、爽やかな感動がありました。

あなたの「色」は、きっと美しい
この映画は、私たち一人一人が、それぞれの過去を背負い、現在の岐路に立ち、そして未来を変える可能性を秘めている、ということを優しく教えてくれます。自分の色が何色かなんて、分からなくてもいい。誰かと違う色だって、もちろん構わない。あなたがあなたらしくいること、それ自体が尊く、美しいのだと、この映画は全力で肯定してくれるのです。
もしあなたが今、自分の進むべき道に迷っていたり、周りと自分を比べて落ち込んでしまっていたりするのなら、ぜひこの『きみの色』という作品に触れてみてください。きっと、あなたの心を温め、明日へ一歩踏み出す勇気をくれると思います。
最後に余談
この作品に、色々と分からない部分がありました。有体に言えば消化不良といった印象を受けた事柄です。それを、ちょっとだけ記しておきたいと思います。
もし、あなたがそれらの答えのカケラをお持ちなら、ぜひ教えてください。
きみちゃんがバイトをしている古書店の店主との関係性は? このバイトもおばあちゃんに内緒なのだろうか?
あのような由緒正しそうな学校を、生徒の一存で簡単に辞められるのだろうか? 実の親には報告・承諾済みなのか?
学園祭にルイくんが出たことで、「合宿」には男子が居たことが自明となる。問題にはならないのだろうか?
この映画の感想や、私の感想文を読んで感じたこと、どんなことでもいいので、コメントで教えていただけると喜びます😊
更新日:2025/10/25
筆者:棚島 香帆汰(プロフィール、
映画好き、小説も書いてます)
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わたしが映画を観る時に、気にしているようなことをまとめています。
ご興味があれば、一読くださると嬉しいです。
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