カスのブルーピリオド
それは、誰にも触れられない色だった。
それは、何にも侵されない色だった。
例えば、空。近付くほどに、闇に隠れて届かない。
例えば、海。手のひらで掬うと、たちまち透き通ってしまう地球の色。
例えば、春。刹那に過ぎ去る、幾許もない日々の当事者であった頃に気付けない尊さ。
例えば、炎。一切の不純物を持たない、完全とも呼べる姿。
例えば、幼さ。可能性に満ちた、この世界を翔る翼。
それが、青だ。私たちが生きている世界そのもののようで、限りなく幻に近しい色だ。
私は青が好きだ。触れればたちまち壊れてしまいそうな穢れのない処女のような美しさ。清も濁も為す術なく飲み込まれてしまいそうな深さ。白と黒の狭間は灰色ではなく青ではないかと思わざるを得ないその二面性に、酷く心を奪われる。
そうだ。青色は、処女だ。
俺ってば昔から「甘やかされるならお姉さんじゃなく歳下の子だろ!!」とブチギレていた。当然である。歳下にその役目をさせること、歳下の子がその役目を受け入れていることへの筆舌に尽くし難い興奮はもう俺を止められない。
まるで体を串刺しにされたかのような衝撃が俺の脳天から足の裏までを貫く。年末の大掃除の雑巾を絞ったかの如く溢れ出る脳汁は砂漠のように渇いた心を躍動させる。
そうだ、そうだった。俺はそんな知識なんてまだ知らない、身体はもちろん心まで純潔な少女に有無を言わさず抱きかかえられ、その寛大な心に飲み込まれたかったのだ。
その叶うことのない夢を、青に見ていたのだ。
