毒親 第80話 崩れゆく計画
第80話 崩れゆく計画
冷たい空気が肌を刺す深夜、サキとカイは必死に車を走らせていた。リナが田嶋と美和に連れ去られた。その事実を知ってから、二人は休む間もなく行動していた。
その時、サキのスマートフォンがなった。それは田嶋からの電話だったのだ。「リナさんをちょっと預かった、返してほしかったら廃工場に、君が盗んだ私の証拠を持って来てください。」
リナは直ぐに警察に通報して廃工場に向かった。
「廃工場?」カイがハンドルを握りながら険しい表情を浮かべる。「あんな場所に連れて行くなんて、奴らは何をするつもりなんだ……?」
「分からない……でも急がないと!」
サキの声には焦りが滲んでいた。リナは末期がんの身だ。ただでさえ体力がないのに、あんな過酷な場所に閉じ込められれば、命に関わるかもしれない。
二人はアクセルを踏み込み、夜の闇へと突き進んでいった。
一方、その頃
廃工場の一角にある薄暗い部屋。リナは荒い呼吸をしながら、冷たい床に座り込んでいた。体の震えが止まらない。病状は確実に悪化していた。
「リナ、もう観念しなさい。」
目の前に立つ美和の目は狂気に満ちていた。彼女の背後には田嶋が腕を組んで立っている。
「お母さん……どうして……?」リナの声は弱々しかった。
「どうして?それはこっちの台詞よ!」美和が声を荒げる。「せっかく田嶋先生があなたの治療を手配してくださったのに、どうしてこんな形で裏切ったの?」
「治療?……違う、あなたは私を利用しようとしていただけ。」
「黙りなさい!」美和がリナの頬を強く叩いた。リナの身体がぐらりと傾き、咳き込む。口元に薄く血が滲んだ。
田嶋が冷たく笑う。「無駄な抵抗はやめたほうがいい。君の妹サキが証拠を持っているんだろう?それを渡せば、おとなしく開放してやる。」
リナは微かに笑った。「サキは……そんな取引には応じない。」
「ならば、娘が来た時に、無理やりでも渡させるしかないな。」
田嶋の言葉に、美和が驚いたように振り向いた。「ちょっと、どういうこと?サキをここに呼ぶつもりなの?」
「当然だ。奴が証拠を持っている限り、俺の計画は終わらない。」
「でも……」美和は躊躇する。彼女にとってサキは憎い存在だったが、同時に娘でもあった。
「お前、今さら迷うのか?」田嶋が冷たく睨みつける。「もう後戻りはできないんだぞ?」
美和は唇を噛みしめた。
その時「警察だ!動くな!!」
突然、建物の外から怒号が響いた。続いて、工場内にサーチライトが照らされる。
「何!?」田嶋が驚き、窓の外を見る。数台のパトカーが工場を取り囲んでいた。
「クソッ、警察が来やがった……!」
「なぜ!?どうして警察が!?」美和が動揺する。
その瞬間、ドンッ!!と工場の扉が勢いよく開いた。そこに立っていたのは?
「お姉ちゃん!!」
サキだった。カイと共に駆け込んでくる。
「サキ……!!」リナの目に涙が滲んだ。
「お姉ちゃんを返して!!」サキの目には強い怒りと決意が宿っていた。
「動くな!!」警官たちが突入し、田嶋と美和を取り囲む。
「チッ……」田嶋は舌打ちし、懐から何かを取り出した、小型のナイフだ。
「まだ抵抗する気か!?」カイが警戒しながら構える。
「ここで捕まるわけにはいかねぇ……!」田嶋は狂ったように笑い、リナへと向かって突進した。
「やめて!!」
サキがリナをかばおうとする。しかし、その瞬間、バンッ!!
銃声が響いた。
田嶋の身体が崩れ落ちる。
撃ったのは警官だった。ナイフを持っていた田嶋に対し、警官が正当防衛として発砲したのだ。
「ぐっ……」田嶋は膝をつき、警官の威嚇射撃に観念したようだった。
工場内は静寂に包まれる。
「お姉ちゃん……!」サキはリナに駆け寄った。「大丈夫……?」
リナは涙を流しながらサキを抱きしめた。「サキ……来てくれて、ありがとう……」
その後、田嶋は警察に連行され、美和も共犯として逮捕された。
こうして、田嶋の悪事は終焉を迎えた。
だが、本当の戦いは、ここから始まるのだった。
つづく
