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シギリアロックよりもドライバーの顔をよく覚えている

15年ほど前スリランカを旅行しました。

効率よく回れるように現地で車と運転手を手配しました。

10日ぐらいで島内の半分ぐらいを回る旅です。

世界遺産のシギリアロック。

古都キャンディ。

寺院や遺跡。

インド洋にかかる虹

今思い返しても、本当に見どころの多い国でした。

でも今、「スリランカで何が一番印象に残っていますか」と聞かれたら、

最初に思い浮かぶのは、

浅黒くて小太りで目がギラギラした運転手の顔です。


彼は決して理想的なドライバーではありませんでした。

こちらの希望を聞いてくれないこともありました。

勝手に遠回りして、スリランカ中に点在してる自分の親戚の家をを尋ねて回ったりしました。

旅行会社にクレームの電話入れたこともありました。

旅行中は、「まったく困った人だな」と思うことも少なくありませんでした。


それなのに不思議です。

旅の最後の日。

空港で別れる時、払ったチップを目の前で数えてまあまあ納得した顔をした後に 

彼は「Bye-Bye Sri Lanca」と言いました。

その時何かがぐっと込み上げてきたのです。


10日間ずっと一緒にいたのですから当然かもしれません。

そして握手をして別れた時、

「ああ、この人ともう会うことはないのだろうな」

と思いました。

15年経った今でも、私はその人の顔を覚えています。


考えてみると、他の旅行でも似たような経験があります。

現地ガイド。

ドライバー。

宿の主人。

たまたま隣の席になった旅行者。

名前は思い出せません。

でも顔や雰囲気は覚えています。

むしろ観光地の細かな記憶より鮮明だったりします。


もちろん景色は素晴らしいです。

世界遺産も感動します。

地元の料理も忘れられません。

でも人との出会いには、それとは別の力があります。

人間は人間を覚える生き物なのかもしれません。

旅先で出会った人が親切だった。

面白かった。

変わっていた。

時には腹が立った。

そうした感情を伴う記憶は、驚くほど長く残ります。


インバウンドガイドを始めてからも、このことをよく思い出します。

寺や神社を説明すること。

歴史を紹介すること。

日本文化を伝えること。

もちろんそれも仕事の一部です。

でもゲストの記憶に残るのは説明ではなく私自身になるかもしれません。


もしかしたら今日案内したゲストも、

10年後、20年後に日本旅行を思い出した時、

清水寺より先に私の顔を思い出します。

逆に、私のせいで嫌な思い出になるかもしれません。

ガイドは旅の一部なんです。

そう考えると少し怖くなります。

でも同時に、この仕事の価値の大きさも感じます。


ガイドは旅という特別な時間に寄り添います。

旅行者は普段より感情が動いています。

期待しています。

興奮しています。

時には不安も抱えています。

そんな時間を一緒に過ごすのです。

だから記憶に残るのだと思います。


もちろん観光地が主役です。

でも旅の記憶の中では、時として人が主役になります。

だからガイドという仕事は大事な仕事だと思います。

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