ツアーガイドはゲストの英語を全部理解しているわけではありません。
インバウンド向けのツアーガイドをやっていると言うと、よくこんなことを言われます。
「外国人のお客様と英語でずっと話しているんですよね。やっぱり英語がペラペラなんですね。」
正直に言うと、そんなことはありません。
実は私は、ゲストが言ったことを100%理解しているわけではありません。
特に困るのがジョークです。
アメリカ人やオーストラリア人のお客様は本当によく冗談を言います。しかも早口です。
笑いながら何か言われて、
「あ、今ジョークを言ったんだな」
ということは分かるのですが、細かい内容までは半分くらいしか分からないこともあります。
ガイドを始めた頃は、それがとても気になっていました。
聞き取れなかったらどうしよう。
失礼な対応をしてしまったらどうしよう。
そんなことばかり考えていました。
ところが、ある時気付いたのです。
日本語で友人と話している時のことを思い出してみると、私たちは相手の言葉を一言一句分析して聞いているわけではありません。
楽しそうに話していれば一緒に笑う。
悲しそうなら心配する。
驚いていたらこちらも驚く。
まず反応しているのは言葉そのものではなく、相手の感情です。
外国人との会話も実は同じでした。
相手が笑顔で冗談を言っているなら笑顔で返す。
驚いた顔をしていたら一緒に驚く。
残念そうなら共感する。
もちろん、本当に大切な話は別です。
集合時間。
体調。
食事制限。
予定変更。
こういう内容は、聞き取れなかったら必ず聞き返します。
分かるまで何度でも確認します。
しかし雑談まで全部聞き取ろうとすると、かえって会話の流れが止まってしまいます。
大切なのは、
「これは絶対に確認すべき話なのか」
それとも
「楽しい雑談なのか」
を見分けることです。
その判断ができる程度の語学力があれば、ガイドの仕事は十分にできます。
私はガイドを始める前、
「外国人相手の仕事をする人は、みんなネイティブ並みに英語ができる」
と思っていました。
でも現実は違いました。
完璧な英語よりも、
相手の表情を見ること。
声のトーンを聞くこと。
感情に反応すること。
その方がずっと大切です。
これはガイドの仕事だけではないかもしれません。
私たちが人とつながる時、本当に伝わっているのは言葉そのものではなく、その奥にある感情なのだと思います。
もしあなたが、
「英語が完璧じゃないからガイドなんて無理だ」
と思っているなら、少しだけ考え直してみてください。
必要なのはネイティブ並みの英語力ではありません。
人に興味を持つこと。
相手の感情に気付くこと。
そして分からなかったら素直に聞き返すちょっとした勇気です。
