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僕は僕だ。僕になるのだ!

「おまえは虎だ。虎になるのだ!」

悪役レスラー養成所「虎の穴」でそう言われ続けた伊達直人は、やがて最強のプロレスラー「タイガーマスク」になる。

子供の頃、大好きだったアニメの話だ。

でも、今、真っ先に思い出すのは、リングの上を華麗に飛び回るタイガーマスクの姿ではなく、エンディングで夜の街をひとり寂しそうに歩く伊達直人の後ろ姿である。

彼は確かに虎になった。

しかし、そもそも彼は虎になりたかったのだろうか。
虎になれてよかった、と心から思えた日はあったのだろうか。

もっとも当時は、そんな自問すら思いつかない時代だったのかもしれない。

戦後、焼け野原の日本。
何者かにならなければ、生き残れなかった時代。

最初の日本人プロレスラーは海を渡り、アメリカで悪役レスラーとして戦った。かつての敵国で、観客からひどい罵声を浴びせられ、最後には正義のヒーローに退治された人たち。

そんな人生を生き抜いた先人たちから見たら、たいした努力もせず、何者にもなれないことを嘆く僕など、ただの甘ったれにしか映らないのかもしれない。

それでも、僕は強く願う。

「僕は僕だ。僕になるのだ!」と。

だって、何者にもなれないことを憂う無様な自分も、

鈍臭くて、人見知りで、うっかり八兵衛で、泣き虫で、全然イケメンでもなくて、そのくせ自惚れ屋で、性格もひねくれている、そんな自分も全部ひっくるめて僕なのだから。

そして、本当は僕はそんな僕のことが大好きなのだ。

だから、僕は今日も、こんな僕にできることを精一杯やっている。

特別なことなんて何ひとつ起こらない日々の奇跡に感謝しながら。

大切な人たちの幸せを願えることの有り難さを噛みしめながら。

それだけで、いい、と思い始めている。

そもそも人間は、いや、生命は、生まれてきただけで、等しく尊いもののはずなのに。

でも、簡単にその尊厳を踏みにじるのが、この世界でもある。

だからこそ、せめて僕だけは僕を大切にしたい、と今日もそっと左胸に手を当てて誓う。

現実の僕は、しがないサラリーマンだから、脅かされることも、打ちのめされることもたくさんある。

いくつになっても、この世界で僕であり続けることは、とても困難だ。

でも、その苦しみも込みで、きっと僕の幸せなのだろう。

最近、時々、同じ夢を見る。

夢の中の僕は、まだほんの幼な子で、似合わない白いチューリップハットを被らされ、青色のベビーカーにちょこんと座って、美味しそうにビスコをかじっている。

あの頃、世界はきらきらとまぶしくて、まるで露出を上げすぎて白とびした写真みたいに、見るものすべてが輪郭を失うほどだった。

そのとき幼い僕は、確かに感じたのだ。

「ああ、僕はこの世界から祝福されている」と。

その遠い昔の記憶を辿りながら、僕はこれからも、僕らしく笑って、泣いて、はしゃいで、落ち込んで、全力でこの世界を愛したい。

最後は、ちゃんと「ありがとう」と言って、お別れができるように。

追伸
この文章は、タイトル写真にある息子が描いた虎の絵を見て、なんとなく思いついて書いたものです。つまり、父と息子の初のコラボ記事になります(息子には内緒ですが😅)


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