脳卒中を予防するには?まず知っておきたい危険因子【ガイドライン2025をもとに】
こんにちは。「脳と脊椎のまなびノート」です。
このnoteでは、自分の勉強を整理しながら、診療ガイドラインや公的資料をもとに、脳や脊椎について学んだことを共有していきます。
最初のテーマは「脳卒中の予防」です。
脳卒中を完全に防ぐことはできませんが、危険因子を知り、早めに対策することで、発症する可能性を下げられるものも少なくありません。
今回は、脳卒中予防の全体像を簡単にまとめます。
そもそも脳卒中とは?
脳卒中は、大きく次の3つに分けられます。
脳の血管が詰まる「脳梗塞」
脳の血管が破れる「脳出血」
脳動脈瘤などが破裂する「くも膜下出血」
起こる仕組みは異なりますが、いずれも突然発症し、麻痺や言語障害、意識障害などの後遺症を残すことがあります。
そのため、発症してからの治療だけでなく、発症する前の予防が大切です。
まず見直したい危険因子
1.高血圧
高血圧は、脳卒中の危険因子のなかでも特に重要です。
一般的な高血圧の診断基準は、診察室で測った血圧が140/90mmHg以上、家庭血圧が135/85mmHg以上です。
ただし、血圧は測定する時間や体調によって変動します。1回の測定だけで判断するのではなく、家庭で継続して測ることが大切です。
治療を始める血圧や目標血圧は、年齢、脳卒中の既往、糖尿病、腎疾患、血管の狭窄、服用している薬などによって異なります。
詳しい数値については、次回の「脳卒中予防と血圧」でまとめる予定です。
2.心房細動
心房細動は、脈が不規則になる不整脈の一つです。
心臓の中に血栓ができ、それが脳の血管に流れ込むことで、大きな脳梗塞を起こすことがあります。
心房細動は無症状のこともあるため、健診の心電図や日頃の脈拍確認が、発見のきっかけになります。
脈が不規則に感じる、動悸が続く、健診で不整脈を指摘されたといった場合は、医療機関で確認してもらうことが大切です。
心房細動が見つかった場合は、年齢や持病などから脳梗塞のリスクを評価し、必要に応じて抗凝固薬などによる予防を検討します。
3.糖尿病
糖尿病では、高血糖が長く続くことで血管が傷み、動脈硬化や脳の細い血管の障害が進みやすくなります。そのため、特に脳梗塞の重要な危険因子になります。
健診で血糖値やHbA1cの異常を指摘された場合は、そのままにせず確認することが大切です。
ただし、脳卒中予防は血糖値だけを下げればよいわけではありません。血圧、コレステロール、体重、喫煙なども含めて管理する必要があります。
HbA1cの目標値も一律ではなく、年齢、治療内容、持病、低血糖の危険性などに応じて個別に設定されます。
4.脂質異常症
LDLコレステロールが高い状態などが続くと、頚動脈や脳の血管に動脈硬化性プラークが形成されやすくなります。
血管が徐々に狭くなったり、プラークの表面にできた血栓が脳へ流れたりすることで、脳梗塞を起こすことがあります。
健診ではLDLコレステロールだけでなく、HDLコレステロールや中性脂肪も確認します。
目標値は一律ではなく、脳梗塞や心筋梗塞の既往、糖尿病、頚動脈狭窄などによって変わります。
食事や運動を見直し、必要な場合はスタチンなどによる治療を続けることが大切です。
5.喫煙と飲酒
喫煙は動脈硬化や血栓形成を促し、脳梗塞やくも膜下出血のリスクを高めます。
受動喫煙も含め、禁煙は自分で変えることのできる重要な予防策です。
飲酒については、少し注意が必要です。
脳卒中治療ガイドラインでは、純アルコール24g/日以下の少量から中等量の飲酒で、脳梗塞が少なかったという観察研究が紹介されています。
一方、出血性脳卒中は飲酒量が増えるほど発症しやすくなり、純アルコール48g/日以上の大量飲酒を避けることが推奨されています。
ただし、これは「少量なら飲んだ方がよい」という意味ではありません。
飲酒による影響は性別や脳卒中の種類によって異なり、少量でもリスクが上がる場合があります。飲まない人が脳卒中予防のために飲み始める必要はなく、飲む場合も量を少なくすることが基本です。
高血圧管理の面では、「高血圧管理・治療ガイドライン2025」で、100%エタノール換算として男性20~30mL/日以下、女性10~20mL/日以下が節酒の目安とされています。
純アルコールの重さに換算すると、男性約16~24g/日、女性約8~16g/日です。
純アルコール約20gは、おおよそ次の量に相当します。
ビール5%:500mL
チューハイ7%:350mL
日本酒15%:1合
ワイン12%:200mL
これは「ここまでなら安全」という量ではなく、自分の飲酒量を把握するための換算の目安です。
6.体重・運動・食生活・睡眠
肥満や運動不足は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などを介して脳卒中のリスクを高めます。
無理に激しい運動を始める必要はありません。ウォーキングなど、続けやすい運動を生活に取り入れることが大切です。
食生活では、食べ過ぎを避け、塩分を控え、食事全体のバランスを見直します。
睡眠も血管の健康と関係します。
特に睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中の低酸素や交感神経の活性化を繰り返し、高血圧や心房細動を合併しやすくなります。
「脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2025]」でも睡眠時無呼吸の治療は検討されていますが、脳卒中予防効果についての根拠は、現時点ではまだ強くありません。
大きないびき、家族から指摘される睡眠中の無呼吸、日中の強い眠気などがある場合は、一度医療機関に相談してみてもよいと思います。
参考:日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2025]」
まず何から始めればよい?
最初からすべてを完璧に変える必要はありません。
まずは、次の項目を確認するところからでよいと思います。
家庭で血圧を測る
健診の血糖値やコレステロールを確認する
脈が不規則でないか確認する
喫煙や飲酒習慣を見直す
続けられる範囲で体を動かす
いびきや睡眠中の無呼吸を指摘されていないか確認する
自分にどのような危険因子があるのかを知り、できるところから少しずつ整えていくことが大切です。
予防と同じくらい大切な「発症時の対応」
脳卒中は、予防していても発症することがあります。
突然、次のような症状が出た場合は「FAST」で確認します。
F:Face
笑ったときに、顔や口の片側がゆがむA:Arm
両腕を上げると、片方の腕が下がる、または上がらないS:Speech
ろれつが回らない、言葉が出ない、話が理解できないT:Time
一つでも突然現れたら、様子を見ずに119番

症状が出た時刻、または最後に普段どおりだった時刻も確認し、救急隊に伝えてください。
症状が一度よくなっても、そのまま様子を見てはいけません。一過性脳虚血発作などの可能性があるため、すぐに医療機関で評価を受ける必要があります。
まとめ
脳卒中予防では、高血圧、心房細動、糖尿病、脂質異常症、喫煙、飲酒、肥満、運動不足、睡眠などを一つずつ見直していくことが大切です。
なかでも血圧管理は重要ですが、どの段階から治療を始め、どの数値を目標にするかは、その人の年齢や持病、脳卒中の既往などによって変わります。
次回は「脳卒中予防と血圧」をテーマに、高血圧への治療介入値と、脳卒中診療で考える目標血圧について詳しく整理したいと思います。
参考資料
※この記事は、診療ガイドラインなどをもとにした一般的な情報と学習内容の共有を目的としています。個別の診断や治療を代替するものではありません。
薬の開始・中止・変更は自己判断せず、主治医に相談してください。急な麻痺や言語障害などがある場合は、記事を読み進めず119番に連絡してください。
