平凡男子と七福神#1
「聖乃木坂学園」。
華やかな校舎、整えられた並木道、そして輝くような生徒たち――。転入初日の〇〇は、胸の奥にひそかな決意を抱いていた。

〇〇:目立たず、波風立てずに3年間を過ごす。これでいい
成績は平均、運動もそこそこ、顔も特筆すべきことはない。だからこそ、余計な人間関係に巻き込まれないよう、静かに日々を送るつもりだった。
ーーー放課後ーーー
人気のない図書館の奥で、〇〇は本を探していた。ふと視線の先に、背伸びをして本棚の上段に手を伸ばす小柄な女子の姿が見えた。
薄茶色の髪がふわりと揺れ、その横顔はどこか幼げで――それでも、整った輪郭と澄んだ瞳が目を奪う。
〇〇:(あれ…遠藤、さくら…?)
中学で同じクラスになったことはあったが、会話らしい会話をした記憶はない。人見知りで、いつも友人たちの後ろに隠れるようにしていた少女。
その彼女が、困ったように手を伸ばしている。
〇〇は、迷った末に声をかけた。
〇〇:…これ、ですか?
遠:あ…はい…

指先がほんの一瞬触れた気がした。受け取ったさくらは、小さく息を吐く。
遠:――ありがとう
その声は、図書館の静寂を震わせるにはあまりにも小さく、けれど〇〇の胸の奥には鮮明に届いた。
軽く会釈をしてその場を離れようとした、その時。
「さくちゃん、こんなところにいた!」
元気いっぱいの声が図書館に響き渡る。清宮レイだ。続けざまに、賀喜遥香、柴田柚菜、金川紗耶、筒井あやめ、田村真佑――聖乃木坂学園の七福神と呼ばれる少女たちが、まるで舞台の上のスポットライトのように一斉に現れた。






その瞬間、〇〇の胸の鼓動は一気に早まった。
金:誰この人?
紗耶のまっすぐな視線が、射抜くように〇〇を捕らえる。
田:もしかして、さくちゃんの彼氏?
真佑が無邪気に笑いながら口にする。
遠:ち、違うよ…本を取ってもらっただけ…
さくらが慌てて否定する。その声に安堵する暇もなく、七人の中でもひときわ存在感を放つ遥香が、すっとさくらの隣に立った。
賀:ありがとう。この子、人見知りだから。あんまり知らない人に話しかけられると、困っちゃうから
笑顔を浮かべつつも、その目は確かにガードの色を帯びていた。
〇〇:(…俺は邪魔者ってことか)
〇〇:そうなんですね…
とだけ答え、背を向けた。
背後で、七人の会話が弾む。
筒:かっきーがしっかりガードしなきゃダメじゃん
清:私もガードする!
その声は、自分とは縁遠い、まばゆい日常の音だった。
賀:さくちゃん、あの人誰?
遠:…知らない人
田:でも、話してる時、ちょっと楽しそうだったよね?
七つの視線が、少しだけ興味を帯びて、確かに彼を追いかけていた。
――それから、〇〇は図書館に足を運ばなくなった。
〇〇の平穏な日常は、静かに終わりを告げた。
To be continued…
