見出し画像

第62話 売掛金・買掛金の残高を確認しよう

取引先ごとの補助元帳

青葉製作所の事務所。

月末の入金確認をしていた山田くんは、総勘定元帳の売掛金勘定を見ながら首をかしげていた。

「売掛金の残高は、全部で180,000円……」

その横で、みおちゃんが取引先から届いた入金予定表を整理している。

「山田くん、その180,000円って、どこの会社から入金されるんですか?」

山田くんは、もう一度売掛金勘定を見た。

「ええと……総勘定元帳には、売掛金の合計残高しか書かれていませんね」

「じゃあ、A商店からいくら、B商店からいくらっていうのは分からないんですか?」

「この帳簿だけでは、すぐには分からないですね」

そこへ、美咲さんがファイルを抱えてやってきた。

「二人とも、売掛金の残高を確認しているん?」

山田くんがうなずく。

「はい。総勘定元帳では売掛金が180,000円残っていることは分かりました。でも、取引先ごとの内訳が分からなくて」

美咲さんは、抱えていたファイルを机の上に置いた。

表紙には、こう書かれている。

売掛金元帳

「そんなときに使うのが、売掛金元帳やね」

みおちゃんがファイルを開く。

中には、取引先ごとに分けられたページが並んでいた。

A商店。
B商店。
C株式会社。

「会社ごとにページが分かれています!」

「そう。売掛金元帳は、取引先ごとの売掛金の増減や残高を記録する補助元帳なんよ」

美咲さんは、ホワイトボードに書いた。

総勘定元帳
→ 売掛金全体の残高

売掛金元帳
→ 取引先ごとの残高

そこへ高橋さんが、現場から戻ってきた。

「製品在庫で言うたら、全体在庫と品番別在庫の違いみたいなもんやな」

みおちゃんが聞き返す。

「全体在庫と品番別在庫?」

「倉庫に部品が全部で500個あると分かっても、どの品番が何個あるか分からんかったら出荷できんやろ。売掛金も合計だけでは、どの取引先から回収するか分からん」

山田くんは、ノートに書いた。

総勘定元帳は全体。補助元帳は内訳。

1 補助元帳とは何か

美咲さんは、ホワイトボードに「補助元帳」と大きく書いた。

「補助元帳は、総勘定元帳の内容を、さらに詳しく記録する帳簿やね」

総勘定元帳には、現金、売掛金、買掛金、売上、仕入など、勘定科目ごとの全体金額が記録される。

しかし、売掛金が複数の取引先に分かれている場合、総勘定元帳だけでは取引先ごとの残高が分かりにくい。

そこで、売掛金元帳を使う。

また、買掛金についても、仕入先ごとの残高を確認するために買掛金元帳を使う。

美咲さんは、二つを並べた。

売掛金元帳

得意先ごとの売掛金を管理する。
別名、得意先元帳と呼ばれることもある。

買掛金元帳

仕入先ごとの買掛金を管理する。
別名、仕入先元帳と呼ばれることもある。

みおちゃんが言った。

「お客さんごとに分けるのが売掛金元帳。仕入先ごとに分けるのが買掛金元帳ですね」

「その通り」

2 売掛金元帳へ記録する

美咲さんは、青葉製作所の取引を示した。

6月1日

A商店へ商品120,000円を掛けで売り上げた。

仕訳は、

借方 売掛金 120,000円
貸方 売上 120,000円

となる。

総勘定元帳の売掛金勘定では、売掛金全体が120,000円増える。

同時に、売掛金元帳のA商店のページにも120,000円を記入する。

6月4日

B商店へ商品90,000円を掛けで売り上げた。

借方 売掛金 90,000円
貸方 売上 90,000円

総勘定元帳の売掛金は、さらに90,000円増える。

売掛金元帳では、B商店のページへ90,000円を記入する。

この時点で、売掛金全体は、

120,000円+90,000円
=210,000円

となる。

取引先ごとの残高は、

A商店 120,000円
B商店 90,000円

である。

みおちゃんが言った。

「総勘定元帳では210,000円。補助元帳では、その内訳がA商店120,000円とB商店90,000円なんですね」

「そうやね」

3 売掛金を回収したとき

次に、6月15日。

A商店から売掛金80,000円が普通預金へ振り込まれた。

仕訳は、

借方 普通預金 80,000円
貸方 売掛金 80,000円

となる。

総勘定元帳では、売掛金全体が80,000円減る。

売掛金元帳では、A商店の残高を80,000円減らす。

A商店の残高は、

120,000円-80,000円
=40,000円

B商店の残高は90,000円のまま。

したがって、売掛金元帳の合計は、

A商店 40,000円
B商店 90,000円

合計 130,000円

となる。

総勘定元帳の売掛金残高も、

210,000円-80,000円
=130,000円

である。

山田くんが、二つの帳簿を見比べた。

「総勘定元帳の売掛金残高130,000円と、補助元帳の合計130,000円が一致しました」

美咲さんがうなずく。

「この一致を確認することが大切なんよ」

4 補助元帳の合計と総勘定元帳を照合する

美咲さんは、ホワイトボードに書いた。

総勘定元帳の売掛金残高

売掛金元帳の各取引先残高の合計

「もし一致しなければ、どこかに記帳漏れや金額間違いがあるかもしれない」

みおちゃんが質問した。

「総勘定元帳だけ正しくて、補助元帳が間違っていることもありますか?」

「あるよ。たとえば、A商店への売上を総勘定元帳へは記録したけれど、A商店の補助元帳へ書き忘れた場合やね」

総勘定元帳 210,000円
売掛金元帳の合計 90,000円

この場合、120,000円の差が出る。

逆に、同じ取引を補助元帳へ二回記入すると、補助元帳の合計が大きくなる。

高橋さんが言った。

「全体在庫は合っているのに、品番別の集計合計が違うような状態やな。どこかの品番を入力し忘れたか、二重に入力したかもしれん」

「そう。総勘定元帳と補助元帳は、定期的に照合することが大事やね」

5 買掛金元帳へ記録する

次に、美咲さんは買掛金元帳を取り出した。

「今度は、仕入先ごとの買掛金を確認しよう」

6月2日

北川商事から商品100,000円を掛けで仕入れた。

仕訳は、

借方 仕入 100,000円
貸方 買掛金 100,000円

となる。

総勘定元帳の買掛金は100,000円増える。

買掛金元帳では、北川商事のページへ100,000円を記入する。

6月6日

西村物産から商品70,000円を掛けで仕入れた。

借方 仕入 70,000円
貸方 買掛金 70,000円

買掛金全体は、

100,000円+70,000円
=170,000円

となる。

仕入先ごとの残高は、

北川商事 100,000円
西村物産 70,000円

である。

6 買掛金を支払ったとき

6月20日。

北川商事への買掛金60,000円を普通預金から支払った。

仕訳は、

借方 買掛金 60,000円
貸方 普通預金 60,000円

となる。

買掛金元帳では、北川商事の残高を60,000円減らす。

北川商事の残高は、

100,000円-60,000円
=40,000円

西村物産は70,000円のまま。

買掛金元帳の合計は、

40,000円+70,000円
=110,000円

総勘定元帳の買掛金残高も、

170,000円-60,000円
=110,000円

となる。

みおちゃんが言った。

「これで、どの仕入先へいくら払う必要があるか分かりますね」

「そう。買掛金全体が110,000円あるだけでは、支払先が分からない。補助元帳があれば、北川商事へ40,000円、西村物産へ70,000円と確認できる」

7 売掛金元帳と買掛金元帳の違い

美咲さんは、二つの元帳を並べた。

売掛金元帳

商品を掛けで売ると増える。
代金を回収すると減る。
取引先から、あとでもらう金額を管理する。

買掛金元帳

商品を掛けで仕入れると増える。
代金を支払うと減る。
仕入先へ、あとで払う金額を管理する。

山田くんがまとめる。

「売掛金元帳は回収管理。買掛金元帳は支払管理ですね」

「そうやね」

みおちゃんも続ける。

「売掛金は資産なので、増えたら借方。買掛金は負債なので、増えたら貸方です」

「その違いも大切やね」

8 売掛金の回収予定を確認する

美咲さんは、A商店の売掛金元帳を見ながら言った。

「補助元帳は、残高を確認するだけではなく、回収管理にも役立つよ」

A商店の売掛金残高 40,000円
B商店の売掛金残高 90,000円

売掛金全体は130,000円。

しかし、A商店の入金予定日は6月末、B商店の入金予定日は7月末だった。

「同じ売掛金でも、入金予定日は取引先によって違うんですね」

みおちゃんが言った。

「そう。合計残高だけでは、いつお金が入るか分からない。取引先ごとの情報を見ることで、資金繰りも考えやすくなる」

高橋さんが言った。

「納期管理と同じやな。受注が全部で100個あっても、今日納めるものと来月納めるものでは意味が違う」

山田くんはノートに書いた。

売掛金は、金額だけでなく回収予定も見る。

9 買掛金の支払予定を確認する

買掛金元帳でも、仕入先ごとの支払予定を確認できる。

北川商事への残高 40,000円
西村物産への残高 70,000円

合計 110,000円

北川商事への支払日は6月25日。
西村物産への支払日は7月10日。

「買掛金全体が110,000円あるだけでは、いつ、どこへ払うか分からない。補助元帳と請求書を照合して、支払漏れや二重払いを防ぐんやね」

みおちゃんが言った。

「支払いが終わったのに買掛金が残っていたら、記帳漏れの可能性もありますね」

「そう。逆に、まだ払っていないのに残高がゼロなら、間違えて減らしている可能性がある」

10 取引先から届く書類とも照合する

美咲さんは、取引先から届いた請求書と支払明細を机へ置いた。

「補助元帳は、会社の中の記録。でも、それだけではなく、取引先から届く書類とも照合することがある」

売掛金では、

・請求書の控え
・入金通知
・振込明細
・売掛金元帳

を確認する。

買掛金では、

・仕入先からの請求書
・支払明細
・振込記録
・買掛金元帳

を確認する。

山田くんが言った。

「帳簿と取引先の書類が一致しているかを見るんですね」

「そう。金額が違えば、請求漏れ、入金漏れ、返品、値引き、記帳間違いなどを確認する必要がある」

11 合計が一致しない原因を探す

美咲さんは、次の例を出した。

総勘定元帳の売掛金残高 200,000円

売掛金元帳

A商店 80,000円
B商店 70,000円
C商店 40,000円

補助元帳の合計は、

80,000円+70,000円+40,000円
=190,000円

総勘定元帳との差額は10,000円。

「どんな原因が考えられる?」

山田くんが答える。

「どこかの取引先への売上10,000円を、補助元帳へ記入し忘れた可能性があります」

みおちゃんも言った。

「回収した10,000円を、総勘定元帳だけで減らした可能性もあります」

「どちらも考えられるね」

ほかにも、

・金額を間違えて記入した
・別の取引先のページへ記入した
・同じ取引を二重に記入した
・返品や値引きを片方だけに記入した

などが考えられる。

「差額が出たら、伝票や請求書へ戻って確認する。ここでも、数字の流れを逆にたどるんですね」

山田くんが言った。

「その通り」

12 補助元帳は、全体の数字に名前をつける

そこへ社長が事務所へ入ってきた。

「今日は、売掛金と買掛金の内訳を確認しているのか」

美咲さんが答える。

「はい。総勘定元帳と補助元帳を照合しています」

社長は、A商店、B商店、北川商事、西村物産のページを見た。

「売掛金が180,000円あるという情報だけでは、経営判断には足りない。どの会社から、いつ回収するのかが分からなければ、入金予定を立てられない」

山田くんがうなずく。

「買掛金も、どこへいつ支払うかが分からないと、資金を準備できませんね」

「そうだ。合計金額は会社全体を見るために必要だ。しかし、実際に仕事を動かすには、その内訳が必要になる」

高橋さんが言った。

「全体数量と品番別数量。売掛金全体と取引先別残高。考え方は同じやな」

美咲さんは、今日のまとめをホワイトボードに書いた。

総勘定元帳
全体の残高を見る

補助元帳
取引先ごとの内訳を見る

売掛金元帳
得意先ごとの回収残高

買掛金元帳
仕入先ごとの支払残高

総勘定元帳の残高と、補助元帳の合計を照合する。

みおちゃんは、今日のノートの最後にこう書いた。

売掛金がいくらあるかだけではなく、誰からいくら回収するのかを見る。
買掛金がいくらあるかだけではなく、誰へいくら支払うのかを見る。
総勘定元帳は全体、補助元帳は内訳。

山田くんも、その下に書き足した。

補助元帳は、合計金額に取引先の名前をつける帳簿。

今日の簿記ポイント

補助元帳は、総勘定元帳の内容を詳しく記録する帳簿です。

総勘定元帳の売掛金勘定では、売掛金全体の残高を確認できます。

売掛金元帳では、取引先ごとの売掛金残高を確認できます。

売掛金元帳は、得意先元帳と呼ばれることもあります。

総勘定元帳の買掛金勘定では、買掛金全体の残高を確認できます。

買掛金元帳では、仕入先ごとの買掛金残高を確認できます。

買掛金元帳は、仕入先元帳と呼ばれることもあります。

基本的には、次の金額が一致します。

総勘定元帳の売掛金残高

売掛金元帳の各取引先残高の合計

総勘定元帳の買掛金残高

買掛金元帳の各仕入先残高の合計

一致しない場合は、記帳漏れ、二重記帳、金額間違い、取引先間違いなどを確認します。

今日の仕訳例・計算例

売掛金元帳

A商店へ商品120,000円を掛けで売り上げた。

借方 売掛金 120,000円
貸方 売上 120,000円

B商店へ商品90,000円を掛けで売り上げた。

借方 売掛金 90,000円
貸方 売上 90,000円

A商店から80,000円が普通預金へ振り込まれた。

借方 普通預金 80,000円
貸方 売掛金 80,000円

残高は、

A商店

120,000円-80,000円
=40,000円

B商店

90,000円

売掛金元帳の合計は、

40,000円+90,000円
=130,000円

総勘定元帳の売掛金残高も130,000円です。

買掛金元帳

北川商事から商品100,000円を掛けで仕入れた。

借方 仕入 100,000円
貸方 買掛金 100,000円

西村物産から商品70,000円を掛けで仕入れた。

借方 仕入 70,000円
貸方 買掛金 70,000円

北川商事へ60,000円を普通預金から支払った。

借方 買掛金 60,000円
貸方 普通預金 60,000円

残高は、

北川商事

100,000円-60,000円
=40,000円

西村物産

70,000円

買掛金元帳の合計は、

40,000円+70,000円
=110,000円

総勘定元帳の買掛金残高も110,000円です。

練習問題

問題1

次の取引から、A商店とB商店の売掛金残高を求めてください。

1.A商店へ商品150,000円を掛けで売り上げた。
2.B商店へ商品100,000円を掛けで売り上げた。
3.A商店から90,000円が普通預金へ振り込まれた。
4.B商店から40,000円が普通預金へ振り込まれた。

また、売掛金元帳の合計と、総勘定元帳の売掛金残高を求めてください。

問題2

次の取引から、北商事と南物産の買掛金残高を求めてください。

1.北商事から商品120,000円を掛けで仕入れた。
2.南物産から商品80,000円を掛けで仕入れた。
3.北商事へ70,000円を普通預金から支払った。
4.南物産へ30,000円を普通預金から支払った。

また、買掛金元帳の合計と、総勘定元帳の買掛金残高を求めてください。

考え方と解説

問題1の解説

A商店への掛け売上は150,000円です。

借方 売掛金 150,000円
貸方 売上 150,000円

A商店から90,000円を回収しています。

借方 普通預金 90,000円
貸方 売掛金 90,000円

したがって、A商店の売掛金残高は、

150,000円-90,000円
=60,000円

です。

B商店への掛け売上は100,000円です。

B商店から40,000円を回収しています。

B商店の売掛金残高は、

100,000円-40,000円
=60,000円

です。

売掛金元帳の合計は、

A商店60,000円+B商店60,000円
=120,000円

です。

総勘定元帳の売掛金残高も120,000円になります。

答え

A商店 60,000円
B商店 60,000円
売掛金元帳合計 120,000円
総勘定元帳の売掛金残高 120,000円

問題2の解説

北商事からの掛け仕入れは120,000円です。

借方 仕入 120,000円
貸方 買掛金 120,000円

北商事へ70,000円を支払っています。

借方 買掛金 70,000円
貸方 普通預金 70,000円

北商事の買掛金残高は、

120,000円-70,000円
=50,000円

です。

南物産からの掛け仕入れは80,000円です。

南物産へ30,000円を支払っています。

南物産の買掛金残高は、

80,000円-30,000円
=50,000円

です。

買掛金元帳の合計は、

北商事50,000円+南物産50,000円
=100,000円

です。

総勘定元帳の買掛金残高も100,000円になります。

答え

北商事 50,000円
南物産 50,000円
買掛金元帳合計 100,000円
総勘定元帳の買掛金残高 100,000円

覚え方

総勘定元帳と補助元帳は、次のように覚えます。

総勘定元帳は合計。
補助元帳は内訳。

売掛金元帳は、

誰から、いくら回収するか。

買掛金元帳は、

誰へ、いくら支払うか。

を確認する帳簿です。

売掛金は、掛けで売ると増え、回収すると減ります。

買掛金は、掛けで仕入れると増え、支払うと減ります。

最後に、次の一致を確認します。

売掛金勘定の残高

取引先別の売掛金残高の合計

買掛金勘定の残高

仕入先別の買掛金残高の合計

短く覚えるなら、次の一言です。

全体は総勘定元帳。
相手ごとの内訳は補助元帳。

次回予告

次回は、商品の在庫を数量と金額で管理する補助簿を学びます。

商品をいくつ仕入れたのか。
いくつ売れたのか。
いくつ残っているのか。

帳簿上の在庫と、倉庫にある商品の数は一致しているでしょうか。

第63話
「商品有高帳を読もう。商品の入庫・出庫・残高を管理する」

現場の在庫管理と簿記が、さらに近くなる回です。


いいなと思ったら応援しよう!