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第50話 簿記3級ここまでの総まとめ取引から決算書までの地図

青葉製作所の事務所。

いつもの机の上に、山田くんのノートが何冊も積み重なっていた。

最初のページには、大きく「借方・貸方」と書かれている。
次のページには、現金、売掛金、買掛金。
さらに進むと、仕訳帳、総勘定元帳、試算表、決算整理、精算表、損益計算書、貸借対照表。

みおちゃんが、そのノートの厚みを見て、目を丸くした。

「山田くん、すごい量ですね。最初のころと比べると、だいぶ進みましたね」

山田くんは、少し照れながら笑った。

「最初は、借方と貸方の左右だけで混乱していました。でも今は、取引が決算書までつながる流れが、少し見えるようになってきました」

そこへ、美咲さんがホワイトボードの前に立った。

「今日は第50話。ここまで学んできた簿記3級の内容を、一つの地図として総まとめするよ」

みおちゃんが、少し背筋を伸ばす。

「第50話……なんだか区切りって感じがしますね」

「そうやね。今日は細かい仕訳をたくさん覚える回ではなく、全体の流れを確認する回。ここまでの知識を一本の線でつなげていこう」

美咲さんは、ホワイトボードに大きく書いた。

取引

仕訳

総勘定元帳

試算表

決算整理

精算表

損益計算書・貸借対照表

山田くんは、ゆっくり読み上げた。

「取引、仕訳、総勘定元帳、試算表、決算整理、精算表、損益計算書、貸借対照表……」

高橋さんが、現場から戻ってきて、その流れを見た。

「おお、今日は完全に工程表やな」

美咲さんがうなずく。

「はい。簿記の工程表です」

高橋さんは、ホワイトボードの流れを指差した。

「現場で言えば、材料が入って、加工して、検査して、組立して、出荷する。どこか一つだけ見ても全体は分からん。流れで見るから、今どこにいるのかが分かる」

みおちゃんが、ぽんと手を打った。

「簿記も同じですね。仕訳だけ見ても、決算書までは見えない。でも流れで見ると、数字がどこへ行くか分かる」

「その通り」

美咲さんは、まず一番左の「取引」を丸で囲んだ。

「簿記は、会社の取引を記録するところから始まる。商品を売った、仕入れた、給料を払った、家賃を払った、備品を買った。こういう会社の動きを、数字で記録していくんやね」

山田くんが言う。

「取引は、会社のお金やものが動く出来事ですね」

「そう。簿記では、取引が起きたら、それを仕訳にする」

美咲さんは、次に「仕訳」を指差した。

「仕訳は、取引を借方と貸方に分けて記録する作業やね」

みおちゃんが、なつかしそうに言った。

「借方は左、貸方は右。最初はどっちがどっちか、ずっと迷っていました」

山田くんも笑う。

「でも、今は“何が増えたか、何が減ったか”で考えるようになりました」

美咲さんはうなずいた。

「それが大事。仕訳は丸暗記だけではなく、取引の中身を見ることが大切やね」

たとえば、現金で商品を売り上げた場合。

借方 現金
貸方 売上

「現金という資産が増える。売上という収益が発生する。だからこの仕訳になる」

みおちゃんが、ノートに書きながら言う。

「取引を、簿記の言葉に変えるのが仕訳ですね」

「いい表現やね」

次に、美咲さんは「総勘定元帳」を指差した。

「仕訳をしたら、その内容を勘定科目ごとに整理する。これが総勘定元帳やね」

山田くんが答える。

「現金なら現金、売掛金なら売掛金、売上なら売上。科目ごとに集めるんですよね」

「そう。仕訳帳は、取引が起きた順番で記録するもの。総勘定元帳は、科目ごとに集めるもの」

高橋さんが現場の例で補足する。

「現場で言うたら、発生順の作業日報と、部品別の実績表みたいなもんやな。全部を日付順で見るのも大事やけど、部品ごとに何個作ったかを見るには、別にまとめ直す必要がある」

みおちゃんがうなずく。

「仕訳帳は日付順。総勘定元帳は科目別」

「そうやね」

美咲さんは、次に「試算表」を指差した。

「総勘定元帳に転記したら、各勘定の残高を集めて試算表を作る」

山田くんが続ける。

「借方合計と貸方合計が一致するかを確認する表ですね」

「そう。試算表は、仕訳や転記が大きく間違っていないか確認するためにも使う。そして、決算前には前TB、決算整理後には後TBとして使われる」

みおちゃんが確認する。

「前TBは、決算整理前の試算表。後TBは、決算整理後の試算表」

「その通り」

ホワイトボードには、次のように整理された。

前TB
決算整理前の数字

後TB
決算整理後の数字

美咲さんは、次に「決算整理」を丸で囲んだ。

「決算整理は、決算日に合わせて数字を正しく直す作業やね」

みおちゃんが、少し得意げに言った。

「当期の収益と費用を正しくする。決算日時点の資産と負債を正しくする」

「完璧」

山田くんも、これまで学んだ項目を思い出した。

「売上原価、減価償却、貸倒引当金、前払費用、未払費用、前受収益、未収収益、現金過不足、貯蔵品……」

美咲さんは、それらをホワイトボードに並べた。

売上原価
売れた商品の原価を計算する

減価償却
使った分だけ固定資産を費用にする

貸倒引当金
売掛金などの回収不能リスクに備える

前払費用
払ったけど、まだ使っていない分を資産にする

未払費用
使ったけど、まだ払っていない分を負債にする

前受収益
もらったけど、まだ当期の収益ではない分を負債にする

未収収益
まだ入金されていないけど、当期の収益にする

現金過不足
帳簿と実際の現金のズレを整理する

貯蔵品
未使用の切手や収入印紙を資産にする

みおちゃんが言った。

「こうして見ると、決算整理って“ズレを直す作業”なんですね」

美咲さんはうなずいた。

「そう。決算整理をしないと、今期の利益や、決算日時点の会社の状態が正しく見えない」

高橋さんも言った。

「現場でも棚卸をせずに在庫表だけ信じたら危ない。実際の数、まだ使っていないもの、もう使ったもの、そういう確認が必要になる。決算整理は、数字の棚卸やな」

山田くんは、ノートに大きく書いた。

決算整理は、数字の棚卸。

次に、美咲さんは「精算表」を指差した。

「前回学んだ精算表は、決算整理から決算書までの流れを一枚で見る作業用の表やったね」

みおちゃんが元気よく答える。

「精算表は、決算の地図です!」

「そう。精算表では、残高試算表、修正記入、損益計算書、貸借対照表の欄を使って、数字の流れを確認する」

山田くんが続けた。

「収益と費用は損益計算書へ。資産・負債・純資産は貸借対照表へ」

「その通り」

美咲さんは、最後に「損益計算書」と「貸借対照表」を大きく囲んだ。

「損益計算書は、一定期間の成績を見る表」

山田くんが言う。

「収益から費用を引いて、当期純利益を求める表ですね」

収益 - 費用 = 当期純利益

「貸借対照表は、決算日時点の会社の状態を見る表」

みおちゃんが答える。

「資産、負債、純資産を並べる表です」

資産 = 負債 + 純資産

「そして、損益計算書で出した当期純利益は、貸借対照表の純資産につながる」

美咲さんは、赤いペンで矢印を引いた。

当期純利益

繰越利益剰余金

純資産

山田くんは、深くうなずいた。

「当期純利益は、損益計算書で終わりじゃない。会社の純資産に積み上がっていくんですね」

「そう」

そのとき、社長が事務所に入ってきた。

「今日は、ずいぶん大きな地図を描いているな」

美咲さんが会釈する。

「第50話なので、取引から決算書までの流れを総まとめしています」

社長は、ホワイトボードをじっと見た。

「会社の数字は、いきなり決算書になるわけではない。日々の小さな取引が積み重なり、仕訳され、整理され、最後に会社の成績と状態として表れる」

山田くんが聞いた。

「つまり、決算書は日々の仕事の結果なんですね」

「その通りだ」

社長は、少し表情をやわらげた。

「売上を上げる人、仕入をする人、現場で製品を作る人、検査する人、出荷する人、請求や入金を確認する人。会社の動きが全部、数字につながっている」

みおちゃんが、静かに言った。

「簿記って、会社の活動を見えるようにするものなんですね」

社長はうなずいた。

「数字は冷たいものではない。正しく見れば、会社の努力や課題を教えてくれる」

その言葉に、事務所が少し静かになった。

美咲さんは、今日のまとめとして、簡単な例題を出した。

「では、最後に小さな会社の一年間を、決算書までつなげてみよう」

青葉製作所で、次のような取引と決算整理があったとします。

現金で商品を売り上げた 800,000円
掛けで商品を仕入れた 400,000円
給料を現金で支払った 150,000円
家賃を現金で支払った 60,000円
期末に減価償却費を計上した 40,000円

「まず、収益と費用を分けてみよう」

山田くんが答える。

「収益は売上800,000円です」

みおちゃんが続ける。

「費用は、仕入400,000円、給料150,000円、支払家賃60,000円、減価償却費40,000円です」

「そう。では、費用合計は?」

山田くんが計算する。

400,000円+150,000円+60,000円+40,000円
=650,000円

「当期純利益は?」

みおちゃんが答える。

800,000円-650,000円
=150,000円

「正解」

美咲さんは、ホワイトボードに書いた。

売上 800,000円
費用合計 650,000円
当期純利益 150,000円

「この150,000円が、損益計算書で求める当期純利益。そして、この利益は貸借対照表の純資産につながる」

山田くんが言う。

「繰越利益剰余金を増やす方向に働くんですね」

「そう」

みおちゃんが、ホワイトボードの全体図を見ながら言った。

「取引があって、仕訳して、元帳に集めて、試算表を作って、決算整理して、後TBから決算書へ……。やっと一本につながった感じがします」

高橋さんが笑った。

「最初は部品がバラバラに見えても、組み上がると一つの製品になる。簿記も同じやな」

美咲さんは、最後にホワイトボードの中央へ大きく書いた。

簿記3級の地図

取引を記録する
仕訳

科目ごとに集める
総勘定元帳

一覧で確認する
試算表

決算日に合わせて直す
決算整理

流れを一枚で見る
精算表

会社の成績を見る
損益計算書

会社の状態を見る
貸借対照表

山田くんは、それを見ながら、静かにノートを閉じた。

「簿記って、暗記だけだと思っていました。でも本当は、会社の動きを順番に整理して、最後に見える形にする勉強なんですね」

美咲さんは、やさしくうなずいた。

「そうやね。仕訳を一つずつ覚えることも大事。でも、それ以上に、数字がどこから来て、どこへ行くのかをつかむことが大事やね」

みおちゃんが笑顔で言った。

「ここまで来たら、最初の借方・貸方も、前より怖くないです」

「それは大きな成長やね」

社長が最後に言った。

「数字の流れを見られる人は、仕事の流れも見られる。簿記は、経理だけのものではない。会社を理解するための共通語だ」

山田くん、みおちゃん、高橋さん、美咲さんは、ホワイトボードの大きな地図を見つめた。

第1話では、まだ何も分からなかった簿記の世界。
でも一つずつ進んできたことで、取引から決算書までの道が見えるようになった。

山田くんは、今日のノートの最後にこう書いた。

簿記は、会社の取引を記録し、整理し、決算書として表す流れ。
仕訳は入口。
決算書は出口。
その間に、元帳、試算表、決算整理、精算表がある。
全体の地図が見えれば、簿記はもっと分かりやすくなる。

そして、もう一行だけ書き足した。

数字は、会社の物語を映す。

今日の簿記ポイント

簿記3級の大きな流れは、次の通りです。

取引

仕訳

総勘定元帳

試算表

決算整理

精算表

損益計算書・貸借対照表

取引は、会社で起きたお金やものの動きです。

仕訳は、その取引を借方と貸方に分けて記録する作業です。

総勘定元帳は、仕訳の内容を勘定科目ごとに集めたものです。

試算表は、各勘定の残高を一覧にして、借方合計と貸方合計を確認する表です。

決算整理は、決算日に合わせて数字を正しく直す作業です。

精算表は、決算整理から決算書までの流れを一枚で見る作業用の表です。

損益計算書は、一定期間の成績を見る表です。

収益 - 費用 = 当期純利益

貸借対照表は、決算日時点の会社の状態を見る表です。

資産 = 負債 + 純資産

損益計算書で求めた当期純利益は、貸借対照表の純資産につながります。

つまり、簿記は、取引を記録して、整理して、最後に会社の成績と状態を表す流れです。

今日の仕訳例・計算例

青葉製作所で、次のような取引と決算整理があったとします。

現金で商品を売り上げた 800,000円
掛けで商品を仕入れた 400,000円
給料を現金で支払った 150,000円
家賃を現金で支払った 60,000円
期末に減価償却費を計上した 40,000円

まず、収益と費用を分けます。

収益
売上 800,000円

費用
仕入 400,000円
給料 150,000円
支払家賃 60,000円
減価償却費 40,000円

費用合計は、

400,000円+150,000円+60,000円+40,000円
=650,000円

当期純利益は、

800,000円-650,000円
=150,000円

この150,000円は、損益計算書で表示される当期純利益です。

そして、この当期純利益は、貸借対照表の純資産につながります。

練習問題

問題1

次の言葉を、簿記の流れとして正しい順番に並べてください。

精算表
仕訳
取引
損益計算書・貸借対照表
総勘定元帳
決算整理
試算表

問題2

次の資料から、当期純利益を求めてください。

売上 1,200,000円
受取手数料 80,000円
仕入 720,000円
給料 220,000円
支払家賃 90,000円
通信費 30,000円
減価償却費 50,000円

また、この当期純利益は、貸借対照表のどの区分につながるか答えてください。

考え方と解説

問題1の解説

簿記は、会社の取引を記録するところから始まります。

まず、会社で取引が発生します。

その取引を仕訳します。

仕訳した内容を、総勘定元帳へ転記します。

総勘定元帳の残高を集めて、試算表を作ります。

その後、決算日に合わせて決算整理を行います。

決算整理から決算書までの流れを確認するために、精算表を使います。

最後に、損益計算書と貸借対照表を作ります。

正しい順番は、次の通りです。

取引

仕訳

総勘定元帳

試算表

決算整理

精算表

損益計算書・貸借対照表

問題2の解説

まず、収益を合計します。

売上 1,200,000円
受取手数料 80,000円

収益合計は、

1,200,000円+80,000円
=1,280,000円

次に、費用を合計します。

仕入 720,000円
給料 220,000円
支払家賃 90,000円
通信費 30,000円
減価償却費 50,000円

費用合計は、

720,000円+220,000円+90,000円+30,000円+50,000円
=1,110,000円

当期純利益は、収益合計から費用合計を引いて求めます。

1,280,000円-1,110,000円
=170,000円

答えは、当期純利益170,000円です。

この当期純利益は、貸借対照表の純資産につながります。

具体的には、繰越利益剰余金を増やす方向に働きます。

答え
当期純利益 170,000円
つながる区分 純資産

覚え方

簿記3級は、バラバラの知識を覚えるだけではなく、流れで見ると理解しやすくなります。

覚え方は、次の地図です。

取引
会社で何かが起きる

仕訳
借方と貸方に分けて記録する

総勘定元帳
科目ごとに集める

試算表
一覧にして確認する

決算整理
決算日に合わせて正しく直す

精算表
決算書までの流れを一枚で見る

損益計算書
会社の成績を見る

貸借対照表
会社の状態を見る

短く覚えるなら、次の一文です。

仕訳は入口、決算書は出口。

その間に、総勘定元帳、試算表、決算整理、精算表があります。

そして、損益計算書で出た当期純利益は、貸借対照表の純資産につながります。

簿記は、会社の数字がどこから来て、どこへ行くのかを学ぶものです。

次回予告

ここまでで、簿記3級の大きな流れを、取引から決算書まで一通り確認しました。

次回からは、この地図を使って、試験で問われやすいポイントをもう一度整理していきます。

仕訳問題で迷いやすいところ。
決算整理で間違えやすいところ。
試算表や精算表で注意したいところ。
損益計算書と貸借対照表のつながり。

第51話
「簿記3級のつまずきポイント総点検。間違えやすい仕訳と決算整理を見直そう」

ここからは、学んだ知識を試験で使える力に変えていきましょう。

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