ようやく使えたワンモアコーヒー
朝の一杯
どちらかといえば、朝に立ち寄ることが多い。
今日も少し時間を調整するためにコーヒーを飲む。カウンターで受け取り、壁際の席に座る。
朝の数分、温かなコーヒーと少しのゆとり。
何気なく手元のレシートを見る。
普段なら、そのままゴミ箱へ入れてしまう一枚。でも今日は違った。
「ワンモアコーヒー」
このレシートを持っていけば、2杯目がお得に飲めるらしい。
「帰りに飲もう。」
そう思って、レシートを二つ折りにして財布へしまう。
仕事終わりに、もう一杯のコーヒーを飲みながら少しだけゆっくりする。そんな帰り道を想像していた。
ところが、そのレシートは一度も使われない。
帰り道になると、寄り道をする気持ちは消え、ただ早く帰りたくなる。そして翌日、レシートはゴミ箱へ。
朝の自分と夜の自分は、ずいぶん違う。
朝は「ゆとりがある」と思っていても、夜にはそのゆとりがなくなっている。
少しだけ、損をしている気がしていた。
「今日は使いたい。」
午後になると気温が上がった。
水分も欲しい。休憩も欲しい。
エスカレーターを上りながら、心の中で決める。
「バスがまだ来ていなかったら飲もう。」
停留所を見る。
「よし、いない。」
店のドアを開け、レシートと150円を差し出す。
「アイスコーヒーをお願いします。」
ようやく使えた、ワンモアコーヒー。
たった一杯のアイスコーヒー。
それだけなのに、「あとで楽しもう」と思っていた朝の自分と、「少し休もう」と思えた夜の自分が、ようやくつながった気がした。
いつもは入れないシロップで甘くする。
冷たさと甘さでおいしくなっている。
こういうゆとりっていい。
