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幼稚園バスの思い出

私が通っていたのは、市立の小さな幼稚園だった。

すぐ隣には、同じ名前の中学校があった。
さらにその中学校から少し離れたところに、私が通った同じ名前の小学校もある。

幼稚園から中学校まで、すべて同じ名前の学校なんて、今思うと少し珍しい気がする。


徒歩組とバス組

この幼稚園には送迎バスがあった。
「大型バス」と「小型バス」、2種類のバス。

我が家からは距離があったので、当然バスを利用していた。
一方、徒歩で通う「徒歩組」もいて、2列になって先生に引率されながら帰っていく。

その様子を見て、私は「歩いて帰れるって、なんかいいな」とよく思っていた。


バスを待つ時間

幼稚園が終わると、私たちバス組は園の外に出て、
中学校との間にある原っぱのような場所で、バスを待っていた。

バスはどこから来ていたのかは覚えていないけれど、
毎日みんなでその原っぱで、バスの到着を楽しみにしていた。

銀色に紫の帯が入ったバスが見えると、
「♪大型バス来たよ〜」「♪小型バス来たよ〜」
と、みんなで歌うように声を上げるのが“お約束”だった。


小型バスでの帰り道

私は小型バス組だった。

近所の大きな工場の前で停まり、やがて我が家のある社宅に到着する。
バスを降りると、数人のお母さんたちが子どもたちを迎えていた。

母親の姿を見つけると、なぜかほっとして、思わず駆け寄って抱きついてしまう。

そういえば、一度だけ吉野くんのお母さんに間違って抱きついたことがあった。
吉野くんも私もびっくり。母も笑っていて、私は真っ赤になった。


迎えが来ていなかった日

ある日、バスを降りたら母がいなかった。

私は焦って家まで走ったけれど、玄関の鍵は閉まっていた。
もう泣きそうになっていたとき、母が「ごめん、ごめん」と言いながら駆け寄ってきた。

今考えると、迎えが来ていなくても園児をバスから降ろしていたなんて、
なかなかすごい時代だったなと思う。


憧れの大型バス

小型バスの私にも、ひそかな憧れがあった。

それは「大型バス」だった。
車体も大きくて、なんとなくかっこいい。
いつか乗ってみたいな、とずっと思っていた。


はじめての冒険

ある日、ついに大型バスに乗れる日がやってきた。
たぶん、配車の都合だったのだろう。

乗ってみると、まったく知らない道を走る。
同じ幼稚園に通っている子なのに、こんな街に住んでるんだ——と、新鮮な気持ちになる。

大きな広場で停まって、お母さんたちがたくさん迎えに来ている。
「いつもの帰り道」とはまるで違って、ちょっとした冒険だった。


いま振り返って

幼稚園生の私は、親の行く場所か幼稚園しか知らなかった
だから、大型バスから見た知らない景色は、特別な世界だった。

その日見た風景のことは、いまでもよく覚えている。

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