生成AIに伝わる入力文の書き方を知ろう #6
同じことを聞いているのに、全然違う答えが返ってきたことはないだろうか。
「会議の議事録を作って」と
「以下の会議メモを、決定事項・アクションアイテム・担当者の3項目で整理して箇条書きにして」では、
返ってくるものがまるで別物だ。
使っているAIは同じなのに。
AIの実力の半分は、頼み方で決まる。
残念ながら、これは本当だと思っている。
この記事では、AIへの「伝え方」—プロンプトの考え方と実践
を整理する。難しいテクニックではなく、「なぜ伝わらないのか」という原理から入りたい。
プロンプトとは「AIへの指示書」のこと
「プロンプト」とは、AIに渡す入力文のことだ。チャット画面に打ち込む文章がそのままプロンプトになる。
💡 補足:「プロンプトエンジニアリング」とは、AIから望む出力を得るために指示文を設計・改善する技術のこと。2023〜2024年ごろに注目された概念で、一時は専門職として求人も増えた。
ただ2026年時点では、「プロンプトエンジニア」という職種はほぼ消滅したという見方が広がっている。
最新のAIモデルが曖昧な指示でもかなり賢く解釈できるようになったためだ。
代わりに「コンテキストエンジニアリング」という概念——
どんな文脈・情報を渡すかを設計する技術——が主流になりつつある。
とはいえ、「伝え方で結果が変わる」という本質は変わっていない。
専門職の話ではなく、日常的にAIを使う全員に関係する話だ。
数行の違いで結果が激変する理由
なぜ同じ質問でも答えが変わるのか。
AIは「渡された情報をもとに、確率的に最適な出力を生成する」仕組みで動いている(生成AIリテラシー講座第1回の記事参照)。
情報が少なければ、AIは「それっぽいもの」を返すしかない。情報が多ければ、絞り込んだ回答ができる。
人間に置き換えると分かりやすい。
「報告書を書いて」と頼まれた新人と、
「〇〇プロジェクトの今月の進捗を、社長向けにA4一枚で、箇条書きで書いて」と頼まれた新人では、仕上がりがまったく違う。
人に伝わらない指示は、AIにも伝わらない。
AIへの指示が曖昧だと、AIは「想定の範囲内で最も無難なもの」を返してくる。それが自分の求めていたものと一致しないとき、「AIは使えない」と感じてしまう。でも多くの場合、問題は指示の方にある。
構造を整えると精度が上がる
プロンプトを改善する一番シンプルな方法は、「構造を整えること」だ。
私がよく使う基本の型はこれだ。
役割:あなたは〇〇です(例:ベテランの編集者)
背景:〇〇という状況です(例:初心者向けのnote記事を書いています)
お願い:〇〇してください(例:以下のメモをリード文にしてください)
出力形式:〇〇の形式で(例:3〜4行、体言止め、ですます調で)全部書かなくていい。でも「お願い」だけ書いているのと、「背景+お願い+出力形式」を書いているのでは、精度がかなり変わる。
実際の例
改善前
会議の議事録を作って改善後
あなたは議事録作成の専門家です。
以下の会議メモを読んで、次の形式で整理してください。
【決定事項】
【アクションアイテム(担当者・期限つき)】
【次回議題の候補】
会議メモ:
(ここにメモを貼る)同じAIに同じ素材を渡しているのに、出てくるものがまるで違う。
「具体的に頼む」ことの効果は、試してみると驚くほど大きい。
「ステップバイステップで考えて」は今も有効か
プロンプトの世界でよく知られた技術に「Chain of Thought(CoT)」がある。「ステップバイステップで考えて」「段階を追って説明して」という一言を加えると、AIの推論精度が上がるというものだ。
Googleの研究(2022年)では、この一言を加えるだけで算数問題の正答率が17%から58%に上がったという結果が出ている。
ただし2026年時点では、事情がやや変わっている。
最新のAIモデル(o3、Claude 4シリーズなど)は、
内部で推論プロセスを自動的に展開する「推論モデル」になっており、ユーザーが「ステップバイステップで」と言わなくても、
複雑な問題に対して自力で段階的に考えるようになってきた。
つまり「ステップバイステップで考えて」という呪文は、今でも通じるが、必須ではなくなりつつある。
重要なのは技法を覚えることより、「AIにどんな情報を渡すか」という文脈設計の方に比重が移っている。
古い技法が「完全に死んだ」わけではないが、「この呪文さえ使えば完璧」という時代でもなくなってきた。
💡 補足:「推論モデル」とは、回答を出す前に内部で試行錯誤するタイプのAIのこと。ChatGPTの「o」シリーズやClaudeの思考機能がこれにあたる。複雑な問題や数学・論理問題で特に強い。
プロンプトはAIに作らせてしまおう
「プロンプトを上手く書けない」という人に伝えたいのが、
プロンプトをAIに作らせるという発想だ。私はほとんどこれで作っている。
やり方はシンプルだ。
私は〇〇をしたいです。
それを達成するための、最適なプロンプトを作ってください。これだけで、AIが自分の目的に合ったプロンプトを提案してくれる。
さらに「もっと出力を短くしたい」「専門家向けに調整したい」と追加指示すれば、どんどん改善できる。
私も最初はプロンプトが苦手だったが、
「プロンプトを考えるのもAIに頼む」という発想に変えてから、ずいぶん楽になった。
テクニックを全部覚える必要はない。
「自分がやりたいこと」を日本語でAIに伝えて、そのプロンプトを作ってもらう——これだけでも十分にスタートできる。
改善し続けることが唯一の正解
最後に、プロンプトで一番重要なことを伝えておく。
最初の出力で満足しなくていい。
AIへの指示は、会話の往復で磨かれる。
最初の回答が自分のイメージと違っていたとき、
「じゃあ使えない」ではなく「もっとこうしてほしい」と追加で伝えるだけでいい。
「もっと短く」
「もっと砕けた文体で」
「3点に絞って」
「さっきの回答の2番目をもう少し詳しく」
この往復を繰り返すことで、最初の一文より何倍もいい出力になる。
人間でも「伝えたいことが一発で伝わる」ことはほとんどない。
「あ、そういうことね」が積み重なって理解が深まる。
AIとのやり取りも同じだ。
完璧なプロンプトを一発で書こうとするより、対話しながら仕上げていく方が早くて確実だ。
プロンプトは呪文ではなく、会話だ。そう思うだけで、ずいぶん使いやすくなる。
次回は「RAG」——AIに自分の情報・資料を読み込ませる仕組みについて話す。「AIが社内情報を知らない」という問題が、どう解決されるかが見えてくる。
「AIへの頼み方でこんなに変わった」という体験があれば、コメントで教えてください。うまくいったプロンプトの実例、ぜひ聞かせてほしいです。 役に立ったと思ったら、スキを押してもらえると励みになります。
