MCPとは何か、AIに「動かせる手」を渡す仕組み #8
「AIに頼んだら、Googleカレンダーに予定を入れておいてほしい」
そんなことができたら、と思ったことはないだろうか。
実はこれ、「MCP」という仕組みが整えば今日にでも実現できる
2024年以降、AIの業界で急速に広まっているこの技術をリテラシーとして整理しておきたい。
前回の記事でRAGが「AIに情報を渡す」仕組みと話したが、MCPは「AIに操作させる」仕組みだ。
MCPとは「AIのためのUSB-C」
MCPとは Model Context Protocol(モデル・コンテキスト・プロトコル) の略で、Anthropicが2024年11月に発表した、
AIと外部サービスをつなぐための共通規格だ。
💡 補足:「プロトコル」とは通信のルール・規格のこと。HTTP(ウェブ)やBluetooth(近距離無線)のように、異なるシステム同士が会話するための共通言語。
よく使われるたとえが「AIのためのUSB-C」だ。
USB-Cが登場する前、充電ケーブルはメーカーごとにバラバラだった。同じことがAIの世界でも起きていた——
AIに外部ツールを連携させるには、ツールごとに専用の接続プログラムを作る必要があり、開発コストが膨大だった。
MCPはこれを解決する統一規格だ。
一度MCP対応すれば、どのAIからでも同じツールにアクセスできる。
最初はClaudeの独自技術だったが、急速に業界標準へと変化した。
2025年3月にはOpenAIがChatGPTデスクトップやResponses APIにMCPを採用し、2025年4月にはGoogleのDemis Hassabis氏がGeminiへのMCPサポートを表明。
2025年12月には、AnthropicがMCPをLinux Foundation傘下の「Agentic AI Foundation(AAIF)」に寄贈し、Anthropic・Block・OpenAIが共同で設立、Google・Microsoft・AWSなどが支援する業界全体の共有財産となった。
もはやClaudeだけの話ではない。AIを使う上での「共通インフラ」になりつつある。
気づいたら使っていた AIとPCをつなぐローカルの仕組み
「MCPって私には関係ない話」と思う前に、少し確認してほしい。
Claude Coworkを使っている方は、設定画面の「ローカルMCPサーバー」という項目を一度見てみてほしい。
「Filesystem(running)」
「pdf-viewer」——こんな表示があるはずだ。これが何者かというと、すでに動いているMCPサーバーだ。
Filesystem:ClaudeがPCのフォルダやファイルに直接アクセスできる仕組み。「フォルダを選んでください」と言ってくるのはこれのおかげ
pdf-viewer:PDFをClaudeが開いて内容を読める仕組み
「気づかないうちにMCPを使っていた」というのが、現代のAIツールらしいところだ。
さらにオプションでNotionやSlackなどのMCPサーバーを設定から追加するだけで、
Claudeがそれらのデータをリアルタイムで読んだり書き込んだりできるようになる。
「AIにNotionのあのページを参照しといて」が、実際に使えるようになる。
私はnoteの投稿記事を管理するためにnotionに専用のページを用意して、noteのスクショをAIにおくるだけで、
記事の閲覧数やスキ数の情報をnotionに管理、内容分析まで行ってくれるようにMCPを活用している
💡 補足:ローカルMCPサーバーはデータが自分のPC上にとどまる。クラウドのMCPサーバーはデータがネット上のサービスに送られる。何が外部に出るかを意識しておくことが大切。
MCPで何ができるか 具体的なイメージ
少し想像力を膨らませてほしい。
AIがカレンダー・メモアプリ・社内データベース・ファイルシステムを操作できるとすると、こんな依頼が現実になる。
「来週の会議の資料をNotionから取ってきて、アジェンダを今のカレンダーに追加しておいて」
「先月の日報を全部読んで、お客様からの要望をリストにまとめて」
「このメールのスレッドをSlackの#projectチャンネルに要約して投稿して」
AIが「答えてくれる」だけでなく、
「動いてくれる」世界に変わっていく。
この変化を「AIエージェント」と呼ぶ。MCPは、AIエージェントが動くための「手と足」にあたる仕組みだ。
2026年5月時点で、公開MCPサーバーは9,400件以上。
対応ツールは毎月増え続けている。2026年3月にはMCP SDKの月間ダウンロード数が9,700万件に達したという報告もある。発表からわずか18ヶ月で約970倍に成長した計算だ。
補足:Playwright MCPとブラウザ自動化
MCPの実用例として、ぜひ知っておいてほしいのが「Playwright MCP」だ。
💡 補足:Playwrightとは、Microsoftが開発したブラウザ自動化ツール。本来はWebアプリのテスト目的で使われることが多く、「ブラウザを自動で操作するロボット」というイメージ。
Playwright MCPは、AIにブラウザを「目で見て・手で操作させる」仕組みだ。
AIが指示を受けると、Webページを開き、ボタンをクリックし、フォームに入力し、結果を読み取るという操作を自動で行えるようになる。
たとえばこんな使い方が考えられる。
「このURLのページから必要な情報を抽出してまとめて」
「このフォームを使って定期申請を自動化して」
「このWebアプリのテストを一通り実行して」
コードが書けなくても、
「何をしてほしいか」を日本語で伝えるだけで、AIがブラウザを操作して完了させてくれる——そんな時代になりつつある。
「AIが自分の代わりに動いてくれる」という未来感覚を、Playwright MCPは一番リアルに体感させてくれる入口の一つだと思っている。
MCPのリテラシー 使う側が知っておくべきこと
MCPを「技術者だけの話」と思ってほしくない。使う側のリテラシーとして、3つのことを整理しておく。
① セットアップ難度はまだ高い
2026年5月時点では、MCPサーバーの設定には多少の技術知識が必要だ。JSON設定ファイルを書いたり、
コマンドラインを操作したりする場面がある。「ChatGPTのようにすぐ使える」レベルにはまだない。
ただし、Claude CoworkのようにUIで簡単に追加できる環境は徐々に整ってきている。
「誰でも使えるようになる道を整備中」という段階だと理解しておくといい。
② 何を「動かせる権限を与えているか」を意識する
MCPでAIに外部ツールを操作させるとき、
どの範囲まで操作を許可するかを把握しておくことが重要だ。
NotionのMCPを設定するとき、AIはそのNotionを「読む」だけでなく「書き込む」こともできる。
削除はできるのか、どのページまでアクセスできるのか——
設定時に確認しておく習慣が大事になる。
「AIに頼んだら、消してほしくないページまで削除された」という事態を防ぐために、
権限の範囲を意識することが新しいリテラシーだ。
③ 「エージェント化」と人間のチェックはセット
AIが自律的に複数のツールを操作する「エージェント」が実現すると、
作業効率は大幅に上がる。一方で、AIが誤った判断で操作を実行したとき、人間が気づくのが遅れるリスクもある。
「AIがやったから仕方ない」では済まない場面が増える。
重要な操作には承認ステップを挟む、定期的に実行ログを確認する——
そういった人間側のチェック習慣がより重要になっていく。
「AIは賢いけど動かない」という時代が終わろうとしている。
RAGが「AIに情報を渡す」仕組みなら、MCPは「AIに操作させる」仕組みだ。
この2つを知っておくだけで、これからのAIエージェントの話がずっと分かりやすくなる。
使いこなすには仕組みを一枚めくることが必要だ。それはコードを書くことじゃなく、こうして概念を掴むことから始まる。
次回は実践編「AIに人格を与える」——同じAIでも、与える人格によって答え方がまったく変わるということを私と一緒に試してみましょう!
MCPについて知れたよという方、または「Notionが繋がった!」という体験をした方、ぜひスキで教えてください。
新しいツールの第一歩を一緒に踏み出しましょう!
